アメリカで出会った100の光景 No.37(大自然の絶景)秋のグレートベースン国立公園、視線を感じる黄葉のトレイル
ネバダ州にあまり知られていないグレートベースンという国立公園がある。
ここに見応えのある鍾乳洞があるというので、行ってみることにした。
鍾乳洞目当てで行ったのだが、まず、目を奪われたのは、黄葉した山々の美しさ。青い空の下、最高に気持ちいいドライブ道が続く。
鍾乳洞のツアーまで時間があったので、トレイルを歩いてみることにする。
見事に黄葉したアスペンに囲まれた山の中のトレイルは、ほとんど人とすれ違わないので、気持ちいい空気を独占できる。
このアスペン、木の大きさに比べて葉っぱがすごく小さい。
風が吹くと、この葉がシャラシャラと音をたてて揺れて、キラキラ輝く。
真下から見上げると本当にきれいなのだ。
ちなみに、この木の日本名は「ヨーロッパヤマナラシ」。日本の類似種のヤマナラシという木から取られたそう。ヤマナラシの名前の由来は「山鳴らし」。風が吹いたときの葉の音からついた名前ということで、やはりこの音は特徴的なのだ。
アメリカではポピュラーな木なので、山で見かけたらぜひ耳をすませてみて欲しい。普段はしないそういう時間が持てることが、非日常である旅先での贅沢であり喜びでもある。
でもまあ、わざわざこちらから耳をすまさなくても、勝手に耳に入ってくるくらいの音ではある。
さて、特に何があるのかも確認しないで、2,3時間くらい歩こうと入り込んだ名も知らないトレイル。正直、特に抑揚もないままの山歩き。
そろそろ飽きてきた・・・と思ったら、急に視界が開けた。
黄葉に彩られた山が近くに現れた。真っ青な空、丸っこい山、黄葉した木々。ちょっと日本っぽい風景だな、と思う。
トレイルはまだまだ続いているけれど、そろそろタイムリミット。自分たちのゴールを決めて引き返すことにする。
遠くの山の上の方に一筋の白い部分が目に入った。その白い部分が、氷河か、山の地肌か、コンクリかを見極められるところまで歩いて、そこを引き返し地点にすることに決めた。
正面から白い筋が見える地点まで歩いて行ったが、結果・・・よくわからなかった。
でも、経験上、こういう山の削られ方の、こういう場所にある、こういう形のものは氷河だ、氷河に決まってる。
さて、氷河を見れたということで、来た道を戻る。
再び、アスペンの森の中へ。
一度歩いた道を戻るときには、見える風景が変わる。距離やアップダウンがわかっているので、気持ちに余裕ができるからか、木の葉の音以外にも、鳥の声やリスの走り回る姿が行きよりも目に入ってくる。
キョロキョロしながら歩いていると、なんとなく何かと目が合った気がした。周りにはアスペンしかないのに。
・・・アスペンがこっちを見ている。
幹にいっぱい目がついている。
そう思い始めたら最後。幹のこぶは、白い包帯でぐるぐる巻きにされた中から覗いている目にしか見えなくなってきた。笑ったり、怒ったりして、こっちを見ている無数の目。
あの木も、この木も、みんなだ・・・。キャー。
爽やかなトレイルが一瞬にして不気味なものに変わり、思わず早足になったわたしである。
ちなみに、トレイルから無事に脱出した後は、辺りは元の清々しい景色に戻った。
車で移動すると、トレイルから見えた白い部分は、本当に氷河の一部だったと確認もできてめでたしめでたしだったのでした。
グレートベースン国立公園(ネバダ州)
Great Basin National Park
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