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2024 第26節 FCティアモ枚方戦マッチレポート

26試合目にして今シーズンのベストゲーム、複数得点+無失点での勝利。ずっと間瀬監督が掲げてきたものを選手たちがここにきて体現してみせた。

流れの中からの素晴らしい2ゴール、そして何度かあったピンチを身体を張った守備で跳ね返した。三連勝で波に乗っていたFCティアモ枚方を相手に、今シーズン最高のパフォーマンスを見せて全員で掴み取った勝点3。リーグ終盤戦、目の前の一戦に集中してこの日の闘いに臨んだ選手たち、そしてサポーターたちは勝点3だけではなく「オレたちはまだまだやれるんだ。」という強い自信を手にしたのだった。

内容はともかく、何としても勝利が必要な状況が続いていた。そんなプレッシャーが続く中、内容にも結果にも満足できるサッカーを見せてくれた。集まった約2,300人のファン・サポーターはもちろん、ピッチに立っていた選手たちがとにかく満足げな表情を見せていた。24節で浦安に勝ったあとのレポートでも同様のことを書いたが、同じ勝点3ではあるものの、こういうフットボールを、こういう勝利を全員が待っていた。

最後まで諦めない強い気持ちが、ひたむきに闘う選手たちのアツいプレーが、僕達の希望を次の一戦に繋いでくれた。


第26節 スターティングメンバー

GK:1 森
DF:3 伊従・28 野口・30 篠原・66上田
MF:13 安西・20 金・24 池田・47 荒川
FW:10 田村・75 山内
SUB:21 松本・3 谷奥・5 菅野・7 森主・35 寺尾・29 加倉・41 梁

スコア

ヴィアティン三重 2-0 ティアモ枚方
(前半:1-0 / 後半:1-0)

・42分 #10 田村 翔太(V三重)
・68分 #24 池田 直樹(V三重)

ハイライト


アウェー宮崎で痛恨ドロー

第25節はアウェー宮崎でのミネベアミツミ戦。相手は最下位に甘んじているとはいえ、前節では栃木シティを相手に3得点を上げる攻撃力を持っている。最終的には3-5で敗れはしたが一時は逆転、勝ち越して83分まではリードしていた力のあるチームだ。我々としては前節・浦安戦での勝利から波に乗って確実に勝点3を積み上げたいゲームだった。

試合は拮抗した展開になったが、互いに決定的な場面が少なく相手ゴールに近づきはするもののゴールが遠いまま時間が過ぎた。ヴィアティン三重は守備の意識を高く持ちすぎたのか間延びした陣形になる場面が多く、無失点に抑えたものの淡白な攻撃に終始してしまう。終盤に交代で入った菅野・荒川が若干流れを変えるプレーを見せたが実らず、苦々しいドローで終わった。無失点で抑えれば負けはしないが、得点を奪えなければ勝利はない。改めて課題を露呈した内容になってしまった。残り5試合、いよいよ後がなくなってしまった。

8本のシュート浴びるも田村のゴラッソで先制

ホーム・ラピスタで迎えた第26節は「ヴィアティンオータムフェスティバル」と題され、いなべ市サンクスマッチ&イオンモール東員DAYとして開催された。当初は雨模様が心配されたが曇り空でちょうど心地よい気温。恒例の人気企画「パン祭り」やスペシャルゲストの「クールポコ。」が登場するとあって、試合開始前から大いに賑わう。

13時、ヴィアティン三重ボールでキックオフ。スタメンには前節で良い動きを見せた荒川永遠が初めて名を連ね、サブには7試合ぶりに谷奥が入った。試合が始まると前線から強烈なプレッシャーをかける前線の3枚、山内・田村・荒川。そのプレッシャーを回避しながら丁寧にボールを繋ぎヴィアティン三重ゴールに迫るティアモ枚方。

素速くカウンターを狙うモリケン

立ち上がりから続けて攻め込まれる場面を迎えるが、GKモリケンがおさえるとすかさずカウンターに移り一気に相手ゴールに迫る。攻め込まれてカウンターという流れを繰り返す。20分を過ぎ少しボールが落ち着き、互いに攻めどころを探る展開。枚方は選手同士の距離感が良く中を固めているため、ヴィアティン三重は右に左にサイドにボールを散らしてチャンスを伺う。

30分を過ぎて立て続けに枚方がシュートを打つ場面を迎えるがそのたびに篠原・伊従が身体を張って弾き返しボールを前に飛ばさせない。渋い展開のまま時間が経過し40分を過ぎる。

ピンチを防いだ篠原を金が讃える

そして迎えた41分、高めに位置を取った最終ラインの篠原からビルドアップ。右の伊従に出しドリブルで少し運んだところで前にいる池田にパス。足元で抑え、前を向いて顔を上げた池田、迷わずゴール前に高速アーリークロスを放り込む。ややカーブがかかりすぎたボールに対し走り込んでいた山内がゴールに背中を向けた体勢で収めて落とす。ふわっと浮いたボールに対して後ろから走り込んだ田村がダイレクトボレー、ドライブがかかった弾道で枚方ゴールに突き刺さった。山内のポストプレーから生まれた田村の今季8ゴール目は目が覚めるようなスーパーゴール。待望の先制点を奪って前半を終える。

ゴラッソを決めた田村、喜びは控えめ

流れを掴み池田の追加点で試合を決める

前半を1点リードで終えたが決して楽な展開ではなかった。しかしいつも通りゴール前の堅い守備、プラス積極的な守備と仕掛けで各選手の矢印はいつも以上に前方向に向いている印象。パスミスからピンチを招く場面はあったが、ミスを恐れず何度も縦にボールを付けたり、裏を狙ったロングボールを繰り返し入れる場面が見られ、前節より可能性を感じるプレーが多く見られた。積極的な守備、そこからの攻撃、それがあるだけでサッカーは面白くなる。

無尽蔵のスタミナでどこにでも顔を出す金

ハーフタイム、山内に代わって梁が入る。前半にポストプレーで「らしさ」を発揮した山内とは全く異なるキャラクターの梁が入ることでまた期待が高まる。そして51分、自陣でボールを奪い荒川が受けたところから攻撃開始。一度はボールを失いかけるが田村が奪い返しアタッカーの3人と左サイドの野口の4人がスピードに乗って枚方ゴールを目指す。相手の守備も4枚、田村から右に開いた梁へパス、受けた梁は左にカットインして左脚を振ったがシュートはGKが正面でキャッチ。

梁のシュートは惜しくもGKの正面

荒川を起点に始まったカウンターのスピードは素晴らしく、4人がトップスピードで相手に迫った迫力はなかなかのものだった。さらにはこの一連の攻撃のあと、GKからのスローイングを梁がすぐに奪い返しマイボールにする。積極的な守備がここでも光る。続いて55分にも自陣で奪ったところから金が起点になり、前に7人が関わる位置を取り、篠原から裏を狙ったボールが入り、最後は金のミドルシュートで終わるというこれまでには見られなかった複数人が連携した攻撃が見られた。こういう攻撃の形が見たかった。あとはフィニッシュだけ。

独走ではなく複数人で仕掛けたカウンター

そして66分、この試合の最大のハイライトと呼べる場面を迎える。GKモリケンからのロングフィード、プレッシャーを受けて一旦最終ラインに戻す。受けた左サイドの上田が前方のスペースへボールを出し荒川を走らせる。これは相手に回収されてしまうがここから一連の攻撃がスタート。

最初にバックパスを受けた相手GKに対し荒川が厳しいプレスをかける、出しどころがなくなったGKが近くにいたDFの選手にふわっと浮いたパスを出す。浮いている時間に金がスルスルっとボールホルダーに寄せてプレスをかける。パスコースがない相手DFは若干中途半端な長めのパスを出す。そこを狙っていた上田が持ち前のスピードを活かして奪い取る。そのまま前に運び左前にいた金に当ててワンツー、前にはオフサイドボジション気味の位置にいた荒川がボールに関与せずスルー、最前線まで駆け抜けた上田にボールが渡る。

攻撃的な守備でボールを奪った上田

一旦左ワイドの野口に戻し受けた野口は中を見て低い弾道の高速クロス。DFの背後から走り込んだ田村がボールに触ったが相手DFがブロック、そのこぼれ球を荒川が頭で中へ入れ、ややルーズになったボールを田村が相手DF、185cmの③鷹啄と交錯しながらも勝ち切って絡め取る。ゴールに向かって運ぶ田村、グラウンダーのクロスを中に入れるが相手DFがブロック、そのこぼれ球はフリーになっていた荒川の足元へ転がった。

枚方③鷹啄と闘う田村、勝ち切る。

ゴール前には左手前から田村・金・梁・池田の4人がポジションを取っている、田村以外の3人は完全にフリーだ。中を見た荒川はファーサイドの池田を選択、中央の密集を越えるやわらかいボールを池田めがけて放り込んだ。池田の前にいた相手DFは一瞬ポジションを中に変えた田村に引っ張られたのか池田は完全にフリーな状態になっていた。

荒川のやわらかいクロスが池田へ

一瞬スローモーションになったかのように全員が荒川のクロスを見送る。それを待ち受ける池田、前方に身体を預けながらゴール左隅に頭で突き刺した。「よっしゃー!!!」その場面を見ていた全員が(実況の藤牧CCと同様に)そう叫んだに違いない。これがいわゆる「得点の匂いがする」流れから生まれたゴールだ。上田のスピード、野口の高速クロス、闘った田村、ゴール前で牽制した金と梁、そして21歳、チーム最年少ながら誰よりも落ち着いてゴール前の状況を掌握した荒川、最後は鉄人池田が魂を込めたヘッダー。

池田の魂を込もったボールがゴールネットを揺らした瞬間、一連の流れを見ていた左サイドの野口は尻もちをついて両手を突き上げた。「よっしゃー!!!」以外のなにものでもない。ゴールを決めた池田はアシストした荒川のもとへ走る。それを迎えるベンチメンバーたち。全員の想いを乗せた追加点にスタンドは最高潮の盛り上がりを見せた。

ゴールを決めた池田を讃える間瀬監督

残り時間は20分余り、まだまだ油断はできない。2点目の直後に上田のナイスパスから裏に抜け出した野口が幻のゴールを決めたがこれはオフサイドの判定。そして72分に二枚替え、田村に代えて加倉、金に代えて森主が入る。2点リードしたゲームを締めくくるために二人のファイターが送り込まれた。

終盤に差し掛かり疲労の色が見え始める両チーム。しかし何よりも2つのゴールがカンフル剤になりヴィアティン三重の選手たちは生き生きとプレーを続ける。球際は強く、対人は厳しく、そして前向きの矢印を弱めることもなく攻め続ける。80分にも連続攻撃を繰り返し野口からゴール前の加倉に絶好のクロスが入り、こぼれ球に池田が反応した場面を作ったがここは惜しくも決められなかった。

貪欲にゴールを目指す加倉

85分を過ぎてボールキープに入るヴィアティン三重。86分には荒川に代えて寺尾、ATには安西に代えて谷奥を投入、無失点での勝利を掴むために全員が集中を切らさない。最後は若干相手に押し込まれコーナーキックを繰り返し受けることになったが、しっかりと守り切って試合終了のホイッスル。

闘いを終えて称え合う篠原と森主

試合後に腑に落ちたチームの一体感

試合を終え、いつも通り間瀬監督のインタビューを行う。その冒頭で監督はこう語った。

自分たちが目指す無失点、複数得点での勝利。これがやりたいことですし、これがずっとやりたかったことですね。この1週間の試合に向けての準備で、この1週間の取り組みがものすごく質も量も伴った素晴らしい1週間でした。本当にスタッフの気持ちとか、ミーティング、トレーニング、そして選手たちのトレーニングに対する意識。あと何度も行ったミーティングも含めて、全てがはまった、本当にベストウィークと言える1週間だったなと思っています。

第26節試合後コメントより

今シーズンのベストゲームはこの一週間の過ごし方、ベストウィークを経た結果だった。試合に勝ったから言えることかもしれないが、やはり勝つためにはそれ相応の準備と手応えを携えて臨むものなのだろう。

また、監督インタビューの中で選手だけでの話し合いを行ったことを聞いた。それを聞いて私は試合中のいろんな場面で感じていたことが腑に落ちた。

まず立ち上がりの15分を過ぎたあたり。やや相手がペースを握る中、DFラインからモリケンへのバックパスがズレてコーナーキックを与えてしまう。そのコーナーキックは落ち着いて凌いだ。そこから攻撃に向かう時、たまたまヴィアティン三重ベンチの近くでカメラを構えていたらベンチから立ち上がってピッチに大きな声を飛ばす梁の言葉が聞こえてきた。

「伊従、大丈夫だ!!!」
「モリケン、ナイスだナイス!!!」
「スン!!!」
(両手を下に向け「落ち着いて行こう」というジェスチャーで呼びかける)

続けてプレーに関わった伊従とモリケンに順番に声をかけ、チームを落ち着かせる役割のスンにもメッセージを送った梁。血の気あふれるアツいプレーを持ち味とする梁の(意外と言ったら怒られそうだが)冷静で的確、且つ気持ちのこもった声掛けを間近で聞いてグッときてしまった。もちろん梁だけではなく、ベンチに座る選手たちからさまざまな声掛けは行われているのだが、たまたま間近に居合わせたタイミングで、ピッチに立つ選手たちと一緒に闘う梁を肌で感じることが出来た。

闘争心の塊、梁賢柱

その後、伊従は積極的な守備を見せた。田村のゴールが生まれた場面では池田にパスを出したあとゴール前までオーバーラップして、ボールに絡みはしなかったが攻撃参加を見せた。他にも、後半の立ち上がりに左サイドからチャンスを作った野口のクロスに対してマイナスのポジションでフリーになっていた上田と梁。求めていた場所にボールが出てこなかったことで野口に対して二人がそれぞれ強烈に「マイナスのボールを出してくれよ!」と要求していた。野口はそんな場面にもめげるはずなく、そこからナイスプレーを再三繰り返した。

そんな選手たちのぶつかり合い、コミュニケーションを見ていて、何かしらこれまでとは違う距離感というか温度・熱量の違い、更には選手同士の信頼関係を感じながらカメラのファインダーを覗き続けていた。そしてここに挙げた場面だけでなく、特に後半に入ってからはピッチに立つ選手たちの、前に向かう共通意識がビリビリと伝わっていた。

それが間瀬監督の話を聞いて腑に落ちたのだった。

選手同士でのミーティングがどんな内容になったのかは聞いていないが、想像するにそれぞれの選手が抱えている納得できないこと、満足できていないことをぶつけ合い、その解決策を具体的に話し合ったのだろう。25試合という多くの試合数を消化したこのタイミングを惜しいと捉えるか否かはわからないが、彼らには今がその時だったのだ。

今年のチームが大切にしている言葉がいくつかある。協闘・対人・呼応、そして「称賛と要求」(←これは先日のファンマガジンインタビューで梁と上田から聞いた言葉)。26試合の苦しい闘いを経て、それらを体現できるチームになってきたのだ。

それを確固たるものにするべく、次の闘いに臨んでほしい。それを証明するには勝利しかない、一戦必勝。

公式記録

試合後コメント・フォトギャラリー


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