2024 第24節 ブリオベッカ浦安戦マッチレポート
セットプレーから見事な2ゴール、サポーターは新たなヒーローの誕生と、3試合ぶりの勝利に湧いた。前半に1点、後半に1点、ゴールを上げたのはどちらもDFの上田駿斗。昨シーズン加入し2年目を迎え、今季は怪我で離脱していたがリーグ終盤戦に入ってスタメンに定着、6試合連続フル出場を果たした。そして今節、ついにヴィアティン三重での初ゴールを記録、試合終了間際の90分に追加点を挙げ、見事チームを勝利に導いた。
三重県民応援DAYと称して三重県に在住・在勤・在学の方々を無料招待した第24節。最高の秋晴れに2,539名の観客が詰めかけた。試合の前半は相手にボールを握られ受けにまわる形でスタート。しかし11分、右サイドで池田が得たフリーキックに上田がピンポイントで合わせて先制する。先制したもののその後も相手ペースで試合が進み36分に同点ゴールを許す。後半に入って少しずつ流れを呼び戻し相手ゴールに迫る場面が増える。しかし互いに追加点を奪えないまま試合終盤に。そして迎えた90分、右からのコーナーキックにまたしても上田が頭で合わせて追加点。これが決勝点となりホームで勝点3を手にした。
試合終了間際の劇的勝利に、スタジアムは大きな歓声と拍手に包まれた。雲ひとつない秋晴れのもとで行われた「わが町・わが県のサッカークラブ、ヴィアティン三重」のホームゲームは、選手・スタッフ、ファン・サポーターたち、そして多くの三重県民の笑顔で締めくくられた。
第24節 スターティングメンバー
GK:1 森
DF:3 伊従・28 野口・30 篠原・66上田
MF:13 安西・20 金・24 池田・37 桑島
FW:10 田村・22 上野
SUB:21 松本・4 饗庭・5 菅野・18 大橋・35 寺尾・29 加倉・47 荒川
スコア
ヴィアティン三重 2-1 ブリオベッカ浦安
(前半:1-1 / 後半:1-0)
・11分 #66 上田 駿斗(V三重)
・90分 #66 上田 駿斗(V三重)
ハイライト
灼熱の沖縄、チャンスは少なく耐えてドロー
10/2の栃木シティ戦から中3日で迎えた第23節、アウェイでの沖縄SV戦。9日間で3試合というタフな日程もあり、栃木戦からスタメン8人を入れ替えて臨んだ。気温は30度を超え湿度は70%を超えてじっとりと暑さがまとわりつく。沖縄は2連勝中、直近の4試合で10得点と攻撃力を武器に調子も順位を上げてきている。
試合は予想通り沖縄ペースで始まる。相手の攻撃力を前に守備に回る時間が多くなり奪ったところから攻撃に移りはするものの相手ゴールが遠い。前半は後ろからボールを丁寧に繋いで前に運ぶ場面を何度か作ることが出来たが後半は更に勢いを増す相手の攻撃に押されてチャンスが作れない。前後半あわせて相手に13本のシュートを打たれる結果になったが、守備の意識は高くゴール付近では全員が身体を張って跳ね返した。
しかしながら攻撃で少ないチャンスから相手ゴールを脅かすことは出来ず、好調な沖縄の攻撃をなんとか凌いでドローに持ち込み、勝点1を手にするに留まった。昇格争いを語る上ではどんな内容であったとしても絶対に勝点3が欲しい試合だったが、厳しい現実を突きつけられた。23節を終えて順位は6位、2位栃木との勝点差は12に開いた。
上田の先制点、しかし追いつかれる
10/13 日曜日、三連休の真ん中にホーム・ラピスタは雲ひとつない秋晴れに恵まれた。気温は30度を超える陽気だったが湿度は20%で乾いた風が心地良い。この日のホームゲームは「三重県民応援DAY」と称して三重県民3,000名を無料招待することがアナウンスされていて、試合前からスタジアムには多くの人が集まりスタグルやステージイベントを楽しんでいた。
残り7試合となりヴィアティン三重の順位は6位、昇格圏にいる栃木とは勝点12の差があり簡単に詰められる差ではない。サポーターの誰もがそのことを知りながらもいつも以上に盛り上がるホーム会場の雰囲気にある意味、複雑な空気が漂っていた。(筆者自身がそう感じていただけかもしれないが)
今節対戦するブリオベッカ浦安は開幕当初に出遅れて下位に沈んでいたが10節を過ぎたあたりから調子を上げ、みるみるうちに上位に迫ってきていた。これは昨シーズンも同様で11節までは最下位だったが、夏を過ぎて順位を上げて最終的には2位でフィニッシュするという驚異的な追い上げを見せたチームである。侮れない。
13時、ヴィアティン三重ボールでキックオフ。試合の入りから浦安がテンポ良くボールを繋ぎあっという間にヴィアティン三重ゴールに迫ってくる。前節は累積警告でゲームキャプテン篠原が出場停止だったが、今節は戻りスタメンに名を連ねる。序盤から守備にまわる時間が続き篠原が伊従・上田と連携しながらゴール前を固める。
9分、自陣から右サイドに展開し池田がボールを前に運ぶ。ペナルティエリアに近づこうとしたところで倒され良い位置でフリーキック獲得。ボールを置いた位置には右利きの桑島と左利きの野口が立つ。ゴール前には田村、上野、篠原、伊従、そしてファーサイドに上田が構える。蹴ったのは多彩なキックを武器にする桑島良汰。大きく弧を描いて曲がりながら落ちてくるボールを蹴り込む。ファーサイド、大外に落ちていくボールの落下点には身長180cmの上田駿斗、強烈に曲がって落ちてきたボールにドンピシャのタイミングで合わせた。
ゴールシーンの写真を見てみると、ゆうに1m以上は跳んでいる上田。桑島が蹴った複雑な軌道のボールも相まって相手選手は誰もジャンプすらできていない。ゴール前に詰めていた選手全員の頭上を越えてきたクロス、それにピンポイントであわせ、相手GKを含めてゴール前に詰めていた選手全員の頭上を越える軌道でゴール反対サイドの深いところに突き刺した上田。二人のスーパープレーで先制点を奪った。
相手ペースで試合が始まった中での先制で流れを呼び寄せたいヴィアティン三重。前からのプレスは上手く連携が取れていて良い守備はできている。攻撃では26分に最終ラインの篠原から右サイドの池田へ裏を狙った良いロングパスが入る。池田が中に折り返し田村が受けてシュート。しかし相手守備陣の戻りが早くブロックに阻まれる。二次攻撃から最後は安西がミドルシュート、これは枠を捉えられなかったが積極的な狙いが見て取れる。
浦安も時間が経つにつれてプレッシャーを上手くかいくぐって短いパスを繋ぎながらボールを前に運ぶ。コンパクトな陣形を保ちながら固い守備を見せ、奪ってからの切り替えが速く一気にヴィアティン三重陣内に攻め入る。そしてサイドと中央を上手く使い分け、最後はシュートで終わる理想的な攻撃でヴィアティン三重ゴールを脅かす。30分を過ぎてから立て続けに決定機を作られてしまう。
そして36分、相手コーナーキックからの二次攻撃で一瞬の隙を突かれて失点、マークがズレてフリーの選手を作ってしまい、見事に決められてしまった。同点。その後も浦安の攻勢が続いたが落ち着いた守備で守って前半終了。
90分、勝点3を手繰り寄せた上田のゴール
後半に入り前半よりも球際や競り合いの強さが増し、拮抗した展開で目まぐるしくボールが動く。やや浦安が優勢で試合が進んでいた56分、ピッチ中央で上野がインターセプト、右サイドのスペースを走る田村へパスを出す。中央には安西、左サイドには野口が走り相手DFは2枚で3対2の状況。スピードに乗った田村が右から抜けようとしたところ相手DFが足を引っ掛けて倒しイエローカード。わずかにボックスの外。良い位置でフリーキックを得たが桑島のキックは枠を捉えられない。このプレーをきっかけにヴィアティン三重の攻撃が続く。
63分、桑島に代えて荒川、金に代えて大橋が入る。この時間帯もヴィアティン三重が良い流れを作り浦安ゴールに迫る。田村、野口、池田が積極的にシュートを打つ。69分にはコーナーキックからの二次攻撃でボールを拾った安西が強烈なミドルシュート。しかしこれは相手GKがわずかに指先を触れてコースが変わりポストに嫌われてしまう。悔しがる安西。
80分、上野に代えて菅野、伊従に代えて饗庭が入る。終盤に入っても球際の強さは衰えないヴィアティン三重の選手たち、相手陣内でプレーする時間が増える。ボールを奪うとボランチの安西、大橋、右サイドの池田から積極的にアーリークロスが供給される。決定的な場面までは至らないが相手守備陣にジリジリと圧力をかけて体力を削りに行く。カウンターから攻め込まれる場面もあったがゴール前でしっかりと跳ね返す。
87分、池田に代わって寺尾が入る。残り時間はわずか、なんとしても追加点が欲しい。89分、寺尾が左に入ったことで右サイドにポジションを変えた野口がライン際で粘ってコーナーキック獲得。自らコーナーポストにボールを置きゴール前の準備を待つ。ゴール前中央に集まる篠原・饗庭・大橋・上田。そして野口が左脚でゴールに向かって曲がるボールを入れる。ニアへ大橋が走り、中央では篠原・饗庭が身体をぶつけ寺尾もそこに混ざって高く跳ぶ。しかし高い位置から曲がって落ちてくるボールは中央の密集を越えてファーサイドでフリーになっている上田のところへ吸い寄せられるように飛んでいく。低いボールに腰をかがめて頭を合わせた上田、見事に捉えてゴール。試合終了間際の90分に試合を決定づける追加点を奪った。
青空に向かって人差し指を突き上げる上田、本日2点目。ゴール裏のサポーター席に向かって走る。奇声と歓声で興奮を爆発させるサポーターたち。誰もがこんなシーンを待っていた、誰もがこんな勝利を待っていた。大歓声に包まれるスタジアム。ホームチーム、我らのヴィアティン三重が苦しみながらも勝利を飾った。
平均観客数はふたたび2,000人を突破
10月に入ってからの大切な2試合で勝点1しか得ることが出来ず、昇格争いからやや後退したヴィアティン三重。ファン・サポーターにはやや沈滞ムードが漂いかけていたが、最後まで諦めない選手たちの全力プレーとニューヒーローの鮮やかな連続ゴールで完全に活気を取り戻した。また、初めてヴィアティン三重の試合を生で観たであろう人たちには、最高の雰囲気での劇的勝利を届けることができて、わが町・わが県のサッカートップカテゴリーの盛り上がりを肌で感じてもらうことができたはずだ。
今季の絶対的な目標として掲げたJ3昇格。リーグ終盤に入って自力での達成はなくなったものの、まだ可能性を残したまま次の試合を迎えることができる。勝点差をみると極めて難しい状況にあることは変わらない。しかしこの日のゴールの瞬間、勝利の瞬間は誰もが興奮し、感動し、フットボールの醍醐味を肌で感じたことだろう。J3昇格という言葉から目を逸らすわけではないが、その瞬間は昇格うんぬんを抜きにして、我がチームの勝利が、その存在が、本当にかけがえのないものであることを再認識した。
三重県民応援DAYがきっかけで初めてラピスタに来てくれた人たちも、きっと同様の興奮と感動を体感してくれたはずだ。それを最高の状態で体感できるのはやはりチームが試合に勝ってくれた時だということもあらためてわかった。
ヴィアティン三重が長い時間をかけて積み上げてきたものは、少しずつ確実に実を結び始めている。残り6試合、ヴィアティン三重に関わるすべての人が、より大きな価値と感動を得るために、次なる闘いに勝利して欲しい。