2024JFL 第20節 ソニー仙台FC戦マッチレポート
7/13の高知戦以来、サマーブレイクと延期になった栃木戦を挟んで2ヶ月ぶりのホームゲーム。誰もが楽しみに待ち望んだこの日がやってきた。18節に予定されていた花火フェスタもこの日にスライドし、2,365人もの観客が集まり夏の終わりのナイトゲームで盛り上がる準備は整っていた。
試合は立ち上がりから闘志を剥き出しに畳み掛けるヴィアティン三重ペースで始まる。序盤から相手ゴールに何度も迫り新加入の山内、田村、寺尾がチャンスを作る。しかし少しずつ相手が対応し始め徐々に五分の展開に。そのまま後半に入り10分が経過したところでソニー仙台に先制を許してしまう。その後、交代で入った新加入の上野が移籍後初ゴールを決めて追いつく。追いついたところから流れを呼び戻したヴィアティン三重だったが相手を追い詰めるところまでは至らずタイムアップ。負けはしなかったものの、じっとりと身体にまとわりつく湿度とともに、重苦しい空気漂う苦々しいドローゲームとなった。
20節・19試合を終えて(18節栃木戦は10/2に延期)勝点31・暫定4位。昇格を狙う上位グループの中では2位の栃木だけが勝利し勝点3を積み上げたが他は停滞、3位から8位までが勝点3差の中にひしめく中段グループに飲み込まれるところまで来てしまった。
第20節 スターティングメンバー
GK:1 森
DF:4 饗庭・19 児玉・30 篠原・66上田
MF:7 森主・18 大橋・24 池田・35 寺尾
FW:10 田村・75 山内
SUB:21 松本・2 谷奥・5 菅野・20 金・28 野口・22 上野・29 加倉
スコア
ヴィアティン三重 1-1 ソニー仙台FC
(前半:0-0 / 後半:1-1)
・68分 #22 上野 瑶介(V三重)
ハイライト
再試合・延期を経て臨んだ三重ダービー
8月は約1ヶ月のサマーブレイクだったが、17節・新宿戦が雷雨のために中断〜再試合となり1週間早い8/23からの再開となったヴィアティン三重。中断期間中に今季のJ3昇格を果たすため、攻撃陣を中心に6人の補強を行った。攻撃力アップ、複数得点での勝利をテーマに掲げて後半戦に臨む。新加入選手は以下の通り。(新加入が発表された順に列挙)
#75 山内寛史・FW:29歳・FC岐阜(J3)より期限付き移籍
#23 青木駿汰・MF:23歳・ラインメール青森(JFL)より移籍
#47 荒川永遠・FW:21歳・モンテディオ山形(J2)より育成型期限付き移籍
#37 桑島良汰・MF:32歳・奈良クラブ(J3)より期限付き移籍
#26 青木 竣・MF:26歳・ジョイフル本田つくばFC(関東一部)より移籍
#22 上野瑶介・FW:25歳・テゲバジャーロ宮崎(J3)より期限付き移籍
8/23に行われた17節・クリアソン新宿戦は当初行われた7/20時点のメンバーでの試合再開が義務付けられていたため、新加入メンバーの出場はなし。1点ビハインドから再開されたが前半にGK松本のロングフィードから田村が裏に抜け出し相手GKをかわして同点ゴールを奪う。そこからは拮抗した展開が続いたが後半終了間際に連続攻撃を仕掛けたヴィアティン三重。最後はアディショナルタイム90+2分にゴール前の混戦でこぼれ球に反応した加倉が押し込み、アウェーで貴重な勝点3をもぎ取った。
そして迎えた8/31、正式なサマーブレイク開けの18節、ホームでの栃木シティ戦は台風の影響で開催中止、10/2に延期が決定。不測の事態に翻弄されながら19節・アトレチコ鈴鹿との三重ダービーを迎える。
前回対戦の9節では1-3とホームで苦汁を舐める結果となったが、三重ダービーというだけでなく、上位に踏みとどまるためにも絶対に負けられない重要な一戦。新加入選手たちの活躍にも期待がかかった。しかし前半早々に失点、さらに追加点を許してしまう。後半は前掛かりになって怒涛の攻撃を畳み掛けたが、鈴鹿の身体を張った守備を崩すことはできず0-2と無得点で敗れてしまう。この結果、ヴィアティン三重は暫定4位に後退、ヴェルスパ大分が3位に浮上した。
闘志をみなぎらせて始まった前半
失意の敗戦から一週間。久しぶりのホームゲームは花火フェスタ、肉祭り、朝日町サンクスマッチと試合開始前から会場には多くの人が詰めかけた。サポーター達も気合い十分に会場入りする選手たちを出迎える。
ホーム・ラピスタで迎えた第20節、ソニー仙台FCとの一戦。前回対戦では終始五分五分の闘いが続く中、後半に大竹の先制ゴールでリードするも試合終了間際に左サイドを破られて失点、勝点3を掴みかけていたにも関わらず取りこぼしてしまった相手だ。そしてこの試合、ヴィアティン三重のスタメン平均年齢は28.0歳、一方ソニー仙台のスタメン平均年齢は23.7歳と非常に若いメンバーを揃える。サブまで含めて全員の前所属が大学でJクラブやJFLのクラブチームを経た選手はひとりもいない。順位こそ12位と下位にとどまっているが、最終ラインからパスを繋いで前に運ぶ、巧みな連携で相手ゴールに迫るチームだ。
対するヴィアティン三重はスタメンを一部入れ替えた。GKは9節以来、10試合ぶりにモリケン(森建太)が戻ってきた。そして3バックの左には3節以来、16試合ぶりに上田が入る。中盤には15節以来の森主、前線にはFC岐阜から期限付き移籍で加入した山内が入り初先発。試合後の会見で「コミュニケーションが取れる選手を入れた」と間瀬監督が言っていたように、モリケン、森主を入れたところからその狙いが読み取れる。それは前節の失点・敗戦の要因がそこにあったという意味でもある。
蒸し返る湿度の中、18時にソニー仙台ボールでキックオフ。試合開始と同時に前線から山内・田村・寺尾が強烈なプレッシャーをかける。開始早々の6分、コンパクトな陣形を作るヴィアティン三重、自陣ハーフウェーライン近くから右サイドの池田に展開、前線の3人がゴール前に上がり前のスペースに運んだ池田がクロスを放り込む。田村がボレーで合わせるがクロスバーに嫌われる、その跳ね返りを山内が頭で合わせるが枠の上を超えてしまう。ゴールは決まらなかったが良い崩しからのチャンスにスタンドが沸く。
試合の入りから闘志を剥き出しに相手に向かうヴィアティン三重の選手たち。球際の強さ、寄せの速さ、声出しと前節の鈴鹿戦と比べ格段に上回っている。なかでも日頃は物静かな印象の大橋がひときわ大きな声で味方選手に指示を飛ばす。それに森主、篠原、山内も続き勝利への欲求を感じさせる気迫がビシビシと伝わってくる。ここまではヴィアティン三重が前からの守備で高い位置でボールを奪い、やや優勢に試合を進める。
22分、前半の飲水タイムを迎える。ここからソニー仙台がボールを持つ時間がじわじわと増えていく。GKから繋いでビルドアップ、前からのプレッシャーが掛かる前に短いパスを繋ぎハーフウェーラインを超えたあたりでスイッチが入る。中央で速いパスを繋いでヴィアティン三重ゴールに迫る。しかし篠原、饗庭が挟んでつぶす。左サイドから運ばれれば、上田が持ち前の対人の強さを発揮ししつこくチェイシング、中にボールを入れさせない。
42分、自陣でボールを回すヴィアティン三重のDF陣。右に開いた池田が顔を上げた瞬間、前線の田村が抜け出す。ドンピシャのパスが通ったがファーストタッチで中に切り替えしたところにソニー仙台のDFが戻りチャンスならず。しかしCK獲得。キッカーは寺尾、アウトスイングで良いボールが入り山内がタイミング良く頭で合わせたが惜しくもクロスバーの上を越えてしまう。序盤に畳み掛けたヴィアティン三重だったが先制点を奪えないまま前半終了。ソニー仙台に決定機はほぼなかった。
早々に失点、上野の同点弾で追いつくが…
後半開始からソニー仙台がボールを保持する。後から丁寧にボールを繋ぎヴィアティン三重のプレッシャーを回避しつつボールを前に運ぶ。50分、ピッチ中央でボールの奪い合いが続く。ヴィアティン三重がボールを奪ったがすぐにソニー仙台が奪い返しショートカウンター。ヴィアティン三重のDFラインが整う前に左サイドに展開され鋭いクロスを入れられる。しかしここはDFに当たってラインを割る。ここからソニー仙台に押し込まれる時間帯。
ヴィアティン三重陣内でボールを回すソニー仙台。8本の細かなパスを繋いでゴール前に放り込むが篠原がクリア。56分、そこからまた短いパスをテンポ良く繋ぐソニー仙台。ヴィアティン三重の選手たちはしっかりと引いて守備を固めていたが右サイドと中央で10本のショートパスを繋がれて失点。人数が揃っていたにも関わらず誰も触ることができなかった。前回対戦の後半ATの失点がオーバーラップする。一瞬集中が途切れたのか、あっという間の失点にスタジアムに溜息が響く。
61分、児玉に代わっって野口、山内に代わって加倉が入る。66分には脚が攣った寺尾に代わってテゲバジャーロ宮崎から期限付き移籍で新加入の上野が入る。上野は前節・鈴鹿戦の先発出場に続き二度目の登場。そして昨シーズンはソニー仙台に在籍した上野は古巣対決に気合いが入る。
前線中央に上野、右に加倉、左に田村が並び再び前からの圧力を高める。そして上野投入から2分、相手GKからDFへのパスがズレたところを加倉がカット、そのままスピードに乗って一気にゴール前へ。中央には上野、ファーサイドには田村。3対2の状況を作り加倉が相手DFを引きつけたところで中央の上野にはたいてシュート。落ち着いてゴールへ流し込んだ上野、移籍後2試合目で初ゴール。古巣相手のゴールに拳を高く突き上げる。
同点に追いつき息を吹き返したヴィアティン三重。途中交代の3人が流れを変え勢いを取り戻す。78分には田村に代わって菅野、森主に代わって金が入る。互いに追加点が欲しい状況の中、再び球際の強さを取り戻したヴィアティン三重がプレッシャーをかけ続ける。ボールを奪ったところからは縦に速い攻撃を仕掛け相手ゴールに迫る。左サイドの野口が何度もアーリークロスを放り込む。それで得たコーナーキックを菅野が蹴る。しかしゴール前では決定的なところまでは至らない。ソニー仙台の守備陣も必死に跳ね返す。
勝点1ではなく勝点3が欲しいヴィアティン三重、焦る気持ちと裏腹に自陣でファールのジャッジにやや苛立つ。90分が過ぎ後半のアディショナルタイムは6分、相手の連続攻撃を受けるが全員で身体を張って跳ね返す。少しでも相手ゴールに近づきたいヴィアティン三重だったが再び相手ゴールに迫る場面を作ることができないまま試合終了。勝点1を積み上げるにとどまった。
栃木シティのみが勝利、上位は揃って足踏み
下位相手に先制を許し、同点に追いつきはしたものの追加点・複数得点を奪うことができずにドロー。なんとも悔いが残る内容・結果に終わった。しかし第20節は2位の栃木シティが勝点3を積み上げたが、首位の高知を含め他は4試合がドロー、昇格を狙う上位勢は揃って足踏み、ヴィアティン三重の順位は変わらず4位のまま。前を向いて次に向かうしかない我々としてはこの状況をポジティブに受け止めたい。終わった試合は戻ってこない、とにかく前を向いて力強く進むのみ。
昇格を果たすためには結果を残さなくてはならないのは誰もがわかっている。闘わなければその結果を得られないことも全員がわかっている。不甲斐ない結果に終わった三重ダービーから切り替え、スタートから全員が闘う姿勢、気持ちを前面に見せていた。ベンチもサポーターも全力で闘っていた。「勝たなければ意味がない」と言われればそれまでだが、全員で闘っても簡単に勝てないのがフットボール。それだからこそ勝つまで、勝ち続けるまで闘い抜くしかない。
ハーフタイムに東員の夜空を彩った花火は試合内容や結果に関わらず、あの瞬間、ラピスタに集まってくれた2,365人全員を笑顔にしてくれた。そして会場に集まった人たちは勝利を手にするオレンジの獅子たちの姿を想像して、後半も声援を送り続けた。応援が足らないなんてことはないはずだ。ホームゲームの盛り上がりが足らないなんてこともないはずだ。チームに何か足らないものがあるのならば、それを具体的に補うことが勝利に近づく方法の一つだろう。そして次こそは勝利の花火を打ち上げて会場に集まってくれた全員を笑顔にして欲しい。
次はアウェイでのHonda FC戦。勝利を信じてチームを後押しする人たちの想いに応えられる闘いを期待したい。残り11試合、まだ終わったわけじゃない。自分たちの力を信じて、相手より1ミリでも多くファイトして、ひとつずつ勝利を積み重ねていこう。
公式記録
試合後コメント・フォトギャラリー
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