見出し画像

2024JFL 第9節 アトレチコ鈴鹿戦マッチレポート

どんな試合でも1勝は1勝、リーグにおいてはどんな試合でも1勝すれば勝点3が加算される。しかし我々ヴィアティン三重には同じ1勝でもただの1勝ではない、同じ勝点3でもただの勝点3ではない闘いがある。それが宿敵アトレチコ鈴鹿との三重ダービーである。さらに敢えて言うならば、同じ負けでもただの負けの何倍、何十倍も悔しい負けがある。それが三重ダービーでの負けである。

今節の1週間前に行われた三重県選手権決勝・天皇杯三重県代表決定戦。2024年最初の三重ダービーは最高の展開、最高の試合内容でアトレチコ鈴鹿(以下・鈴鹿)に勝利した。早い時間に先制されたものの、そこからの3ゴールはどれも素晴らしい形での得点だった。失点したあとは完全に試合を支配し圧倒した。そして掴んだクラブ初、2年連続天皇杯本戦への切符。今年のヴィアティン三重は強い、誰もがそう確信した。

そしてホーム・ラピスタに鈴鹿を迎え、史上初・2週連続の三重ダービー。完璧な勝利、完璧なゴールのイメージを残し、勢いをそのままに鈴鹿を圧倒したい試合だった。しかし終わってみれば先週とは逆のスコアでの完敗。明らかにヴィアティン三重の強みを消され、一週前の内容をもとに完全に対策された上での敗戦。ヴィアティン三重の勝利を期待してスタジアムに足を運んだ2,818人のファン・サポーターたちは悔しい敗戦を目の当たりにし、期待が大きかっただけに落胆を隠せない様子だった。


第9節 スターティングメンバー

GK:①森
DF:③伊従・④饗庭・㉚篠原・㉟寺尾
MF:⑱大橋・⑳金・㉔池田・㊶梁
FW:⑨大竹・⑩田村
SUB:㉑松本・⑰野垣内・㉕藤澤・⑦森主・⑬安西・⑯稲福・㉙加倉

スコア・得点者

ヴィアティン三重 1-3 アトレチコ鈴鹿
前半:1-2 後半:0-1

《得点者》
15分:人見拓哉(鈴鹿)
24分:人見拓哉(鈴鹿)
35分:大竹将吾(V三重)
49分:福元友哉(鈴鹿)

ハイライト動画


前半・2点先制されるが大竹が1点返す

風はないが小雨が降るラピスタ、他カテゴリーの試合が続いたこともありピッチはやや荒れた様子。鈴鹿ボールでキックオフ。ヴィアティン三重は1週間前の天皇杯とスタメンはほぼ同じ、GKのみ松本からモリケン(森)に入れ替える。サブは菅野に代わって藤澤、野口に代わって稲福がメンバー入り。対する鈴鹿はスタメンは3人入れ替え、サブには1人入れ替えたメンバー構成。

前の試合では左WBで良い働きを見せた寺尾憲祐

試合の入りは悪くないヴィアティン三重、ピッチコンディションと天候を考えてロングボールで前を目指し右サイドから繰り返し相手ゴールを目指す。セカンドボールへの反応が良い鈴鹿はボールを回収したあと同様に長いボールを入れてヴィアティン三重陣内に攻め込む。12分、相手陣内でボールを奪われるが即座に梁がプレッシャーをかけて奪い返す。梁が後の大橋に戻して左に展開、寺尾が外に開くが相手に囲まれ再び一列後の大橋に戻す。顔を上げた大橋、右サイドを走る池田の姿を確認し正確なパスを送る。エンドラインギリギリで残した池田、ジャンプしたまま中へ折り返す。中にいた梁がボレーで合わせたが相手のブロックに阻まれる。

ライン際ギリギリのところで残した池田

14分、ヴィアティン三重陣内・相手左サイドからのスローイン。ボールを受けた鈴鹿⑭鈴木と対峙する金と池田。しかし簡単に剥がされ深いところまで侵入される。伊従が追うも振り切られてクロスが入る。クリアを狙った篠原に当たったボールはゴール前中央でフリーになっていた⑲人見のところへ。浮いたボールをダイレクトで合わされて失点。早い時間に右サイドから崩されて先制点を許してしまう。一週前の三重県選手権決勝では開始7分で失点したがそこから見事に挽回し勢いに乗ったヴィアティン三重、まだまだここから。

14分に先制を許す

先制点を許したあと、ギアをひとつ上げたかのように相手ゴールに迫るヴィアティン三重。ゴール前に何度もボールを入れるが鈴鹿の堅い守備を崩せない。19分には左サイドから寺尾→梁と繋いで中にクロスを上げ金が落としたところを田村がシュート。オーバーヘッドで狙ったが枠は捉えられない。失点からのおよそ10分、高い位置でボールを奪い続け相手陣地でプレーする時間が続いていたが20分過ぎ、ファールでプレーが止まり一旦流れが途切れる。そして相手ボールでプレー再開。

アクロバティックなシュートを放つ田村



相手が右サイドからボールを運んだところで大きくサイドチェンジ。ボールを受けた⑭鈴木と対峙するのは再び池田。今度は一対一、じわりじわりとドリブルで持ち込まれたところで池田顔負けのキレのある切り返しで簡単に剥がされて中に折り返す。ゴール前にはヴィアティン三重の選手が7人、相手は2人、その密集を避けるように入ってきたグラウンダーのクロスに後から走り込んだ⑲人見が完全にフリーで合わせてシュート、開始から24分で2失点。

完全に崩されて2失点、苦しいスタートに

鈴鹿の⑭鈴木・⑲人見に同じような形で崩されたヴィアティン三重、ツートップの田村を二列目の右側に下げて5−4−1の布陣に変更、ワントップの大竹が前からプレッシャーをかける。2点リードの鈴鹿はしっかりとブロックを作り、コンパクトな守備でがっちりと固める。ブロックを崩したいヴィアティン三重は両サイドからクロスを入れてゴール前に迫るが中央の守備は固くシュートまでは持ち込めない。

35分、相手のゴールキック。饗庭が頭で戻したボールを高めに位置をとった鈴鹿の最終ラインが頭で前に戻す。それを田村がフリーで拾うのを見計らって相手の最終ライン裏にできたスペースを狙った大竹が走り出す。田村が大きく前方に入れたボールは相手GKと走り込んだ大竹のちょうど真ん中に落ちる。かと思った瞬間、相手GKよりほんのわずか先にボールに触った大竹、見事に頭ですらしゴール。ゴール前で抜群の勝負強さを発揮した大竹、らしさを見せて今季初ゴール、追撃体制に入る。

大竹が”らしさ”を見せて1点を返す



大竹のゴールでやや勢いを取り戻したヴィアティン三重、積極的な守備で人数をかけて囲い込み、ボールを奪う。しかし鈴鹿の動きも衰えず一進一退の攻防が続く。前半終了間際、1トップの大竹に長いボールを入れて相手ゴールに迫ろうとするが高さを活かして競り勝ったかに思われたが惜しくもファール。ここで前半終了。

闘志あふれるプレーが持ち味の梁賢柱

後半・早々に追加点を許し追いかけるも届かず

ハーフタイム、梁に代えて安西を投入、配置は5−4−1で変わらず。開始早々、ヴィアティン三重陣内でファール、フリーキックを与えてしまう。グラウンダーのボールで直接ゴールを狙われるが弾き返す。セカンドボールを拾った鈴鹿、浮かせたボールを入れて来るがヴィアティン三重のディフェンス陣が跳ね返す。再びセカンドボールを拾った鈴鹿、今度は⑭鈴木がドリブルで中央突破、大橋と田村が寄せるが僅かなコースを狙って縦パスを入れられる。5人が横並びで揃っていたヴィアティン三重の最終ラインだったが縦パスを受けた鈴鹿⑨福元に前を向かせてしまいシュート。弱いシュートだったが逆を突かれた形になったモリケン、左手を伸ばすも届かず3失点目を許してしまう。数的優位を作って固めていたはずが3人の選手に簡単に突破されてしまい天を仰いで立ち尽くすヴィアティン三重の選手たち。⑭鈴木のドリブルを三度止められず苦しい展開。

3失点目に繋がってしまったフリーキック

取り返したいヴィアティン三重に対し追加点を奪って優位に立つ鈴鹿、前からプレッシャーをかけつつコンパクトな守備でパスコースを消し簡単にはボールを前に運ばせない。60分、流れを変えたいヴィアティン三重が二枚替え。大竹に代わって加倉、金に代わって稲福が入る。71分には寺尾に代えて25藤澤を投入。藤澤は第3節・浦安戦以来の出場。

流れを変えるべく交代で入る加倉と稲福

鈴鹿も二人の選手を代え前からの厳しいプレスを継続する。パスコースがないヴィアティン三重、なかなか前にボールを運べない。先週のようにサイドからドリブルで前に運ぶこともできず、DFライン裏のスペースも狙えず徹底的に相手に研究されている印象。しかし75分、左サイドからドリブルで持ち込んだ加倉、上がってきた饗庭に戻す。2列目から動き出した稲福を見た饗庭、ゴール前に高くボールを放り込む。相手選手二人に挟まれた稲福だったが脚を伸ばしてボールに触るも相手GKが正面でキャッチ。惜しい場面。

交代で入った稲福がチャンスを作る

少しずつ残り時間が少なくなり焦りが見え始めるヴィアティン三重の選手たち。一方、落ち着いて(見えてしまう)ボールを保持しチャンスを狙う鈴鹿の選手たち。81分には裏のスペースを狙って走る田村に饗庭からのロングフィード。相手選手2人に囲まれながら、もつれつつ相手ゴールに向かう。しぶとく粘ってこの試合初めてのコーナーキックを獲得。右コーナーから安西が良いボールを入れたが相手DFが頭でクリア。そこからカウンターで一気にヴィアティン三重ゴールに迫る。これ以上の失点は許されない、気持ちを見せつつも落ち着いて対応しチャンスを潰す。

無尽蔵のスタミナで走り続けるエース田村

残り時間は10分あまり、勢いをもって相手陣内に攻め込む。右サイドから運び中央の安西に戻す。相手の最終ラインは6枚、前線には田村、加倉、稲福、そして池田も高い位置を取る。オフサイドラインを見ながら駆け引きをする田村と加倉、安西が顔を上げると同時に裏を狙って走り出した加倉、そこへふわっと高いボールが入る。完全にフリーになった加倉にドンピシャのボールが入りダイレクトでシュート。しかし相手GKが間合いを詰め身体に当たる。こぼれ球を相手選手がクリア。決定的な場面を迎えたがナイスセーブに阻まれてしまう。

フリーで抜け出した加倉、惜しくもチャンス実らず

終盤に入ってもセカンドボールやルーズボールへの出足が速い鈴鹿、キワのところでヴィアティン三重を上回る。ボールを奪ってからは速さがあるヴィアティン三重、サイドから一気に運んで相手ゴールを目指す。しかし中をしっかりと固める鈴鹿の守備、簡単にはシュートを打たせてもらえない。88分には相手陣内でフリーキックを獲得、セットプレーからゴールを狙いたいところだが相手の身体を張った守備に阻まれる。時計は90分を過ぎアディショナルタイムは5分。ゴール裏のサポーターも最後の声を振り絞る。

アカデミーの選手たちも声を枯らして応援

90+2分、相手陣内左サイドの深いところからスローイン。大橋が戻したボールを藤澤がダイレクトでクロスを入れる。相手DFが跳ね返したボールをフリーで拾った加倉、トラップして前に出たところに相手2人が寄せる。そして前にこぼれたボールを稲福がシュート。しかし枠を捉えられない。頭を抱えて悔しがる加倉と稲福。

後半最大のチャンスも枠を捉えられない



1点でも返そうと最後まで闘う選手たち。スタジアムに駆けつけた2,818人の観客も最後まで熱い声援を送ったがチャンスを作ることはできないまま試合終了のホイッスル。奇しくも先週の三重県選手権決勝と反対のスコアで敗れ、開幕の高知戦以来の黒星を喫することとなった。首位の高知が連敗して足踏みする中、勝点を伸ばせなかったヴィアティン三重は4位から6位に順位を下げた。

死力を尽くすも3失点を喫し課題を残したDF陣

1月の始動から4ヶ月が経過し、リーグ戦8試合を終えて迎えた三重県選手権決勝での勝利、「今年のヴィアティン三重は強い」誰もがそう確信していた。一週間前の三度の得点シーンは全てが完璧だった。そして同じ相手との対戦。勝ったヴィアティン三重が勢いをそのままに鈴鹿を上回るのか、負けた悔しさをチカラに変えて鈴鹿が上回るのか。結果は後者だった。

試合を通して振り返ると、ヴィアティン三重に良い場面は多くなかった。チームには好調・不調は当然ある。そして相手に対策され思うようにプレーできないことも当然ある。それを乗り越え、90分の試合の中で修正し、相手を上回ることができてこそ、その先に勝利がある。それができなかった。逆に相手は完璧な対策・準備をして一週間を過ごし、この試合に勝利した事を認めざるを得ない。

下を向いている時間はない、顔を上げて次に向かうのみ

この試合は同じ選手を止めることができず三度もチャンスを作られ、決められてしまった。間瀬監督が試合後に語ったように「対人」の勝負に敗れ、個の突破を個でもチームでも止めることができなかった。そこはしっかりと修正して次に向かいたい。「切り替えて次へ」と言葉にするのは簡単だ。単に切り替えるだけでなく、この大きな敗戦を次に活かすには同じような失敗を繰り返さないことしかない。そこはダービー云々は関係なく、全ての相手に対して個で負けないこと、対人で勝ち続けること。それを積み重ねることこそが強いヴィアティン三重になる方法だろう。

どんな時も共に協闘するサポーターたち

勝利への逆算、リーグ優勝への逆算、Jリーグ昇格への逆算を突き詰めれば、個々の選手が目の前の闘い、対人の勝負に負けないこと。その気持ち・熱さを次の闘いで見せて欲しい。個の闘いとは言え、その背中には常にJFL最強サポーターがついていることを忘れないでいて欲しい。協闘し、勝利を掴もう。

次の勝利を信じてエールを贈るサポーターたち

公式記録


試合後コメント・フォトギャラリー


いいなと思ったら応援しよう!