2024JFL 第2節 クリアソン新宿戦マッチレポート
「間違いなく、この拮抗した試合を勝利に持っていってくれたのはサポーターの声だったと思います。」
試合を終えた間瀬新監督は記者の質問にこう答えた。
アウェイ高知での開幕戦、0-3というショッキングな結果で幕を開けた2024シーズン。絶対に負けられないホーム開幕戦は難敵クリアソン新宿を相手に4-0の快勝、1週前にガツンと頭を打ちつけられたような敗戦とは一転、素晴らしいゴールで4度もスタンドを沸かせ、攻守にわたって多くの見どころを作っての勝利だった。
結果こそ4-0と大差に終わった試合だったが、終始気の抜けない拮抗した内容。しかし開幕戦とは真逆で、勝負どころでことごとく勝ち切り、守り切り、最後まで集中を切らさず闘い抜いた選手たちの気持ち、そしてオレたちのチームを絶対に勝たせるんだ!というアツいサポーターたちの想いが実を結んだ結果だった。
冒頭の間瀬監督の言葉は、最後まで選手たちと共に闘い、文字通り「協闘」したサポーターに贈られた感謝の気持ちに違いない。
第2節・スターティングメンバー
GK:①森
DF:㉔池田・②谷奥・㉚篠原・③伊従・⑲児玉
MF:⑯稲福・⑦森主
FW:㊶梁・⑩田村・㉟寺尾
SUB:⑫折口・⑰野垣内・㉕藤澤・⑬安西・⑨大竹・⑪木戸・㉙加倉
クリアソン新宿戦 試合結果
ヴィアティン三重 4-0 クリアソン新宿
前半:2-0 後半:2-0
《得点者》※ヴィアティン三重のみ
21分:⑲児玉慎太郎
41分:㉟寺尾憲祐
59分:㊶梁賢柱
72分:㉙加倉広海
衝撃の敗戦から一週間、スタメン3人を入替えて臨む
新監督の就任、若手とベテランの実力ある新加入選手たちを多数迎え、プレシーズンのトレーニングマッチでは名古屋グランパス、FC岐阜などJクラブを相手に勝利を重ねた新生ヴィアティン三重。過去にないほどに期待が高まる中で迎えたアウェイ高知での開幕戦。結果は0-3の惨敗。「選手たちのパフォーマンスはそこまで悪くなかった…」と間瀬監督は振り返ったが、決定機は少なく、逆に相手には狙い通りの試合運びをされての完敗だった。それはある意味「JFLの難しさ」が凝縮された試合内容だったと言える。
そして迎えたホーム開幕戦、相手はこれまでの2シーズンで4回対戦して一度も勝利できていない(0勝2敗2分)難敵・クリアソン新宿。フィジカルの強さとロングボールを上手く使うスタイルは高知にも似た部分を感じる相手だ。その点では前節の反省を踏まえてどう攻略するのか、間瀬監督の手腕に期待がかかる。スタメンは前節から3人を入替えて臨む(㉘野口→⑲児玉・⑬安西→⑦森主・④饗庭→②谷奥)。
21分:拮抗した展開の中、児玉の先制点
試合開始直前に小雨が振り始めたLA・PITA東員スタジアム、ヴィアティン三重ボールでキックオフ。開始早々左サイドから相手ゴールに迫る。梁と田村のコンビネーションから再びゴール前でボールを受けた梁がシュート。相手のブロックに阻まれたがそこからコーナーキック、フリーキックと相手ゴール前でのプレーが続き良い入りで試合が始まる。
ロングボールで相手の裏を狙うヴィアティン三重、ロングボールと短いパスを使い分けてヴィアティン三重ゴールに迫る新宿、目まぐるしく攻守が入れ替わる。そして7分、相手右サイドから新宿の攻撃、伊従が入れ替わられてそのまま相手が運びグラウンダーのアーリークロス。最終ラインの篠原・谷奥を超えたボールは大外の選手がドンピシャで合わせたが幸運にもポストに救われる。そこから相手の二次攻撃、必死の守備で跳ね返し最後はFWの梁が戻って阻止。危ない場面を凌いだ。
続いて11分、相手陣内にボールを運ぶヴィアティン三重。しかし相手の強烈なプレッシャーを受け自陣に戻したところでボールを失う。相手左サイドに展開されクロスを上げられる。ゴール前中央で篠原が跳ね返すがクリアが小さくなり相手のシュート。身体を投げ出してブロック、全員が戻って最後は田村がヘディングでクリア、新宿のパワフルな攻撃を受けるが全員の高い守備意識でピンチを凌ぐ。
ここから互いに厳しいプレッシャーを掛け合い簡単にはゴール前に運ばせない。ヴィアティン三重は相手の裏を狙ったロングボールを入れつつ、中盤で奪えば短いパスを繋いで相手陣内を攻め上がる。守備では前線からプレッシャーを掛けながら、MFの森主・稲福が中盤からグッと前に出て二重にプレッシャーを掛け相手を惑わせる。相手の守備も固く拮抗した時間帯を迎える。
20分、相手陣内で前から田村がプレッシャーを掛けセカンドボールを左サイドで寺尾が回収、そのまま前を向く。外側から児玉が追い越してボールを受け、見事なターンで相手選手を一人を置き去りにし中に切り込んで3人に囲まれたところで田村にはたく。相手二人を引き付けた田村、前にいる梁へパス、それをワンタッチで落とした梁、そこへ走り込む児玉、鮮やかなパスワークで守備を崩してフリーに。GKと1対1、倒れ込みながらシュート、先制ゴール。待望の今季初ゴールに駆け寄るチームメイト。拮抗した展開の中で生まれた素晴らしい先制点にスタンドが沸く。
34分:GKモリケン、気合いのPK阻止!
先制点のあと、右SB池田が自陣でボールを奪い一気にカウンター。前を走る田村、中央を駆け上がる寺尾、後ろから全速力で追いかける森主、左サイド大外からは児玉が駆け上がり相手DF3枚に対し4人で数的優位を作る。池田が田村に預け、大外から追い越す児玉にパス。しかしスリップ、田村が寄せるが惜しくもファール。シュートまでは至らなかったが鋭いカウンターを展開し追加点の可能性が高まる。
32分、新宿の攻撃に対して自陣で森主が厳しいプレッシャーを掛け奪いに行くがファール、FKを与える。ゴール前にふわりと入れたボールを篠原が頭で弾き返したがセカンドボールを拾われシュートを打たれる。このボールが稲福の腕に当たりPKの判定。厳しい判定に主審に問いかけるヴィアティン三重のDF陣とGKモリケン。判定は変わらずPKを献上。
新宿のキッカーは③小池、ゴールマウス中央で両手を大きく広げる守護神モリケン。その後ろではオレンジ色のサポーターが壁を作って見守る。相手が蹴るタイミングで右に跳ぶモリケン、シュートは真ん中へ。決まるかと思われたそのボールを脚を残したモリケンが大きく弾き返す。強く跳ね返ったこぼれ球はゴールラインを割り守護神のスーパーセーブがチームを救う。スタンドからはゴール以上の大歓声。
このPKストップが試合の流れを引き寄せるビッグプレーになった。
41分:寺尾が持ち込んで鮮やかな追加点
PKを止めて相手に流れが傾くのを阻止、その後も厳しいプレッシャーと落ち着いたボール運びを見せるヴィアティン三重。新宿もPKのチャンスを逃したものの変わらず丁寧にボールを繋ぐ。
40分、相手が自陣で最終ラインからビルドアップ、そこへ梁・田村・寺尾が役割分担をしながらプレッシャーを掛けに行く。それをかわしたい相手DF陣、相手右サイドへボールを展開する。そこを狙っていた左SBの児玉が引っ掛けてボールを奪う。対人で負けない児玉、しっかりと奪い切って前のスペースへ走る寺尾へ出す。中央では田村、右サイドには梁がトップギアに入れて走り出す。電光石火のショートカウンター発動。
相手DFは2枚、数的優位を作り中央の田村と梁が相手DFの意識を引き付ける。それを見逃さなかった寺尾、ドリブルで少し中に入り相手選手が戻る前にミドルシュート。コースを狙ったボールは相手のブラインドになりゴール左隅に突き刺さった。チームプレーと見事な個人技で生まれた追加点。寺尾のもとに駆け寄る梁、寺尾はカメラに左胸のエンブレムをアピールする。アカデミー出身の寺尾憲祐が持ち味を発揮して観客を沸かせた。
59分:セットプレーから梁の追加点
2点リードで迎える後半、児玉に代えて藤澤を投入、新宿も一枚交代。2点を追いかける新宿、開始早々から前への圧力を高めてヴィアティン三重ゴールに迫る。自陣での守備時には最終ラインを5枚揃え、ボランチ2枚も中央をガッチリと固める。相手がボールを下げるとFW3枚が行くところ・行かないところを明確にしてプレッシング、後半も運動量は衰えない。
52分、ヴィアティン三重がコーナーキック獲得。相手に跳ね返されるがセカンドボールからの二次攻撃でボランチの森主が遠目からのミドルシュート。惜しくも枠を外れたが昨シーズンには見られなかった積極的なプレーにゴール裏が盛り上がる。その直後、中央から運ばれてゴール前で相手右サイドに展開。中央への折り返しに二列目から上がった選手がダイレクトで強烈なミドルシュート。ゴール右隅に飛んだ強烈なボールにGKモリケンが反応、左手一本で阻止、弾いたボールに飛び込んでガッチリ押さえる。後半早々のピンチにまたも守護神のビッグセーブ。
56分、モリケンのロングフィード、セカンドボールを寺尾と田村で回収、田村→梁→森主とワンタッチで繋いで裏のスペースに田村が抜け出す。深いところから中へ折り返す田村、相手GKがわずかに触れてコーナーキック。
後半2本目のCK、1本目は大きく中へ蹴り入れた寺尾、2本目はコーナーポストに寄った森主に出し、少し後ろに構える稲福へパス。稲福からのクロスはやや低くなったが中央で待つ谷奥の足元にうまく入り、それをワンタッチで谷奥がはたく。そのボールは左側最前列オフサイドラインギリギリの位置に構えた梁の足元へピタリ。すかさず反転した梁、左足を強く振りシュートをゴールネットに突き刺す。
ゴールを決めてまた反転した梁、線審の旗を確認しつつゴール裏のサポーター席に向かって走り出す。サポーターにも大人気、梁のゴールパフォーマンス!まるで空手家のような飛び蹴りを披露してサポーター席は大盛りあがり(空手家写真は自粛)。常にゴールを狙い続けるゴールハンター梁、喜び爆発。
72分:持ってる男・加倉のただいまゴール!
69分、ヴィアティン三重、㊶梁→㉙加倉・㉟寺尾→⑨大竹の二枚替え。3点リードでも攻撃の選手を入れ替えるのは前からの守備がいかにタフな作業なのかがわかる。また、前からの守備がうまく行かないとチーム全体の守備が機能しなくなるため、前線にフレッシュな選手を投入することで再び強固な守備を構築する狙いか。背番号29・加倉広海は2019シーズン以来、5年ぶりにオレンジのユニフォームを纏ってピッチに立つ。
71分、ピッチ中央付近・右サイドからヴィアティン三重のスローイン。森主が受けて左サイドの藤澤へサイドチェンジ。そのボールを藤澤がワンタッチで華麗にはたき相手を一枚剥がす。フリーで受けた田村、前のスペースに走る大竹へ浮かせたパス。相手DFと競りながらボールを受けた大竹、トラップが少し流れて右にボールがこぼれる。そこへ右サイドから駆け上がった加倉が拾い、相手DF二枚をかわして左足を振る。持ち味であるゴール前での嗅覚を更に研ぎ澄ませて戻ってきた男がゴールを決めた。
交代投入からわずか3分、5年ぶりに戻ってきた31歳・加倉広海。こんな漫画のようなゴールを決めてしまうところが「加倉らしさ」なのだ。2018年3月18日、FC今治戦で決めたゴールから6年と1日ぶりの復帰ゴール。「加倉は持ってる」と言わざるを得ない
試合終盤、怒涛の攻撃を凌いでクリーンシート
4点リードのヴィアティン三重、残り20分とまだまだ時間は長い。新宿は前節も0-4で沖縄SVに敗れ、1点でも返そうと闘争心を絶やすことなく攻撃の手を強める。ボールを握ってヴィアティン三重ゴールに迫るクリアソン新宿、集中を切らすことなく気持ちのこもったプレーで攻撃を跳ね返すヴィアティン三重。熱い攻防が続く。
80分、⑦森主に代えて⑰野垣内が入る。80分フルパワーで闘い切った森主、目立ったプレーは多くないが闘争心と声と持ち前のハードワークを続け、新加入の若手・稲福と二人で新宿の攻撃を分断、この試合の影のMVPだろう。
86分、⑩田村に代えて⑪木戸が入る。ヴィアティン三重のエースストライカー田村。この試合では1点目、2点目、4点目に絡み存在感を十二分に発揮した。昨シーズンは前線で孤軍奮闘し悔しさを噛み殺すシーンを何度も目にした。得点こそ生まれなかったが、攻撃の核として相手守備陣を翻弄し、この試合の役目を終えた。
相手が前掛かりになる中で隙を狙って大竹が何度かチャンスを作る。まだまだ追加点を奪える雰囲気。最後までゴールを狙い続けるクリアソン新宿、その攻撃をチーム全員で身体を張って跳ね返すヴィアティン三重。何度も好セーブでゴールを許さないGKモリケン。そしてアディショナルタイム4分が過ぎ、試合終了のホイッスルが鳴った。
−3+4=+1、喜びと感動は数字では表せない。
試合が終わった瞬間、喜びを爆発させるゴール裏のサポーター達。小雨が降るスタンドからはあたたかい拍手。そして試合を終えた選手たちは喜びというよりも安堵の表情を見せていた。ホーム開幕戦に勝利した安堵、前節の悪いイメージを払拭できた安堵、いろいろなプレッシャーがあったことだろう。しかし同時に選手たちの表情からは自分たちがやるべきことをしっかりとやりきった手応えと充実感を読み取ることもできた。
得失点差マイナス3からスタートした2024シーズン、一気に4得点で+1に戻した。今シーズンのホーム開幕戦は4得点、得失点差+1以上に多くの喜び・感動・ドラマが詰まっていた。しかしどんな感動的な勝利でも勝点3は同じ。感動ボーナスポイントが付くわけではない。今季も掲げた目的に向かって一試合ずつ大切に前へ進んでいこう。
最後に、冒頭の間瀬監督の言葉に僕らはこう返したい。
応援する僕たちを最後まで奮い立たせてくれたのは、ピッチで、ピッチサイドで勇敢に闘う選手たちがいてくれたから。そしてアウェイ高知での敗戦があったから。
間瀬監督の言葉を借りるなら、この2試合から《優勝・昇格への逆算》がスタート。協闘の二文字を胸に刻み、次のブリオベッカ浦安戦に臨もう。
第2節・公式記録
試合後コメント・フォトギャラリーはこちら
試合後コメント
・間瀬 秀一監督
・森 建太選手
・森主 麗司選手
・田村 翔太選手
・篠原 弘次郎選手