2024 第28節 ラインメール青森戦マッチレポート
「可能性がある限り。」そう言いながら何試合闘っただろう。
振り返れば8月後半にサマーブレイクが明け、雷雨で中断された新宿との再開試合に勝利し3位をキープ、勢いを持って後半戦の闘いに臨むはずだった。しかし事実上のサマーブレイク明け最初の試合で鈴鹿に敗れシーズンダブル(同じチームに2敗すること)を食らってしまう。続くホームでのソニー仙台戦はドロー、次の21節・Honda FC戦は0-3で完敗。ここで7位に転落し随分と苦しい状況になったが、残り9試合まだ諦める状況じゃない。選手もサポーターも口々にそう言い合った。
終盤戦に差し掛かり開幕から首位を独走していた高知ユナイテッドSCが失速、それを猛追する栃木シティは快進撃、何としてもそこに食らいついていく、そんな全員の魂を結集して22節・FCマルヤス岡崎に勝利する。そして台風の影響で日程変更になった第18節・栃木との直接対決。勝てば2位の栃木に対して勝点差4まで迫れるチャンスだったが、勢いに乗る栃木に強さを見せつけられ1-2で敗れてしまう。
「まだ可能性が無くなったわけじゃない。」
とにかく可能性を信じて前を向いて闘い続け、苦しみながらもそこからの5試合は3勝2分で負け無し、26節・枚方戦、27節・武蔵野戦と素晴らしい試合展開で2連勝しギリギリのところで望みを繋いだ。ひとつ負ければ終わり、そんな状況の中、今シーズンずっと目指していたフットボールを形にし、結果に繋げたことが大きな自信となった。
そして迎えた第28節、ホームでのラインメール青森戦。調子を上げてきたヴィアティン三重の勝利を誰もが想像してラピスタに集まり、配信映像に目を凝らした。しかし結果は1-2での敗戦、早い時間に2失点したことでゲームプランは崩れ、ここ数試合で見せていた見ごたえのあるフットボールを展開することはできなかった。
最後まで果敢に攻め続けたヴィアティン三重だったが試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、選手たちは天を仰ぎ、ピッチに立ち尽くした。
第28節 スターティングメンバー
GK:1 森
DF:3 伊従・19 児玉・30 篠原・66上田
MF:13 安西・20 金・24 池田・35 寺尾
FW:10 田村・47 荒川
SUB:21 松本・3 谷奥・7 森主・26 青木・22 上野・41 梁・75 山内
スコア
ヴィアティン三重 1-2 ラインメール青森
(前半:0-2 / 後半:1-0)
・90+4分 #75 山内 寛史(V三重)
ハイライト
アウェイで武蔵野に3-1で勝利
26節・枚方戦はホームで今シーズンのベストゲームと言える素晴らしい勝利を収めたヴィアティン三重。その手応えを携えて敵地・味の素フィールド西が丘に乗り込んだ。前半開始早々の5分に野口が負傷退場するアクシデントに見舞われたが、急遽入った児玉が良いプレーを見せてチームを落ち着かせる。前半はやや仕掛ける場面が少なくチャンスは生まれなかったが、後半開始から積極的な仕掛けを見せ田村がPKを獲得。ここから一気にペースを掴む。
59分、田村のPKに続き67分には左サイドで仕掛けた児玉からのクロスにDFの上田が合わせて追加点、82分にはカウンターから梁の個人技で3点目を挙げて勝利した。枚方戦で得た手応えを更に確かなものにして次なるホームゲームに臨んだのだった。残り3試合オレたちならやれる。そう信じて。
30分までに2失点、想定外の苦しい前半
2024年11月10日のホームゲームは木曽岬町サンクスマッチ&ダイハツ三重DAYとして開催された。試合前から多くのサポーターが集まり、今季のホームゲーム14試合を経て新しい顔もたくさん増えた。1年間をかけてフロントスタッフがさまざまな趣向を凝らした企画を準備し、着実に観客数を増やしていた。それにはシーズン終盤の28節まできて、昇格の可能性や勝点差などの小難しいことは抜きにして「ヴィアティン三重が3位」というわかりやすい事実は、地域の関心と期待が集まる大きな要因になることを表していた。
第28節の相手は10位・ラインメール青森。中位以下にいるものの27節を終えて失点25はリーグ2位(Honda・滋賀と並ぶ失点数)と堅守に定評がある。前回対戦ではひとり退場者を出しながらも直後に追いつかれて1-1のドローに終わった手強い相手。13時、今にも雨が降りそうな曇り空のもと、青森ボールでキックオフ。
「負けたら終わり・2位の高知が勝ったら終わり」というある意味吹っ切れた状況の中、良い表情・雰囲気で試合に入るヴィアティン三重の選手たち。序盤から動きは良く、青森ゴールに迫るプレーを見せる。しかし堅守の青森、攻撃のあとの戻りが速くゴールに近づきはするものの中央をガッチリと固められて弾き返される。DF陣のフィジカルも強くゴール前の壁は固い。12分には安西から裏を狙ったロングパスが入り田村が収めてシュートまで持ち込んだが相手GKの好セーブに阻まれる。
立ち上がりからサイド攻撃、裏抜けのロングパスと勢いを持って青森ゴールに向かうヴィアティン三重だったが19分に得たコーナーキックがゴールラインを割りそのリスタートから鋭いカウンターを受ける。自陣まで運ばれたところでファールで止めたがその一連のセットプレーから最初の失点を喫してしまう。ゴール前に人数は揃っていたが一瞬の隙が生まれフリーの選手を作ってしまいピンポイントで決められてしまった。
21分、早い時間の失点に面食らってしまったが、良い入りをしていたこともあり、切り替えてすぐに前を向かう姿勢を見せる。しかし相手の寄せの速さ、球際の強さ、フィジカルの強さに押され思うように前へボールを運べない。何度も後ろに戻してやり直すが前線の田村・寺尾・荒川にボールが入らない。
29分、最終ライン・篠原から田村への鋭い縦パスをカットされ青森のカウンター発動。高いラインを敷いていたヴィアティン三重のスリーバックが急いで戻る。カウンター発動と同時に青森は4人が走り出しあっという間に数的優位を作り出しヴィアティン三重ゴールに迫る。ヴィアティン三重、中盤の選手らの戻りが遅く高速カウンターに追いつけない。左サイドの上田がボールホルダーに寄せたところでゴール前にパスが入り2対3の不利な状況を作られあっという間に追加点を奪われてしまう。前半30分で2点のビハインド。
2点先行されまずは1点を返したいヴィアティン三重、左右のサイドからゴールに迫る展開を作り出すがとにかく青森の戻りが速く、右サイドの池田、左サイドの児玉を徹底してケアしチャンスを作らせない。前半終了間際には青森陣内でフリーキックを獲得、寺尾が良い軌道のボールをファーサイドの上田めがけて蹴り込み上手く頭で合わせたが、これまでに3ゴールを決めている上田もしっかりと対策され、相手DFが身体をぶつけることでわずかに体勢を崩し枠を捉えることは出来なかった。
崩せない青森の守備、ATに1点返すも届かず
2点リードで後半に入った青森は前半に引き続き固い守備を敷いて中盤・ゴール前を固める。ボールを奪えばひとたび素速いカウンター攻撃を仕掛ける。後半に入っても攻撃を活性化できないヴィアティン三重、中盤の安西や下がり目に場所を取るシャドーの寺尾にボールは入るもののそこから前に運べない。61分、早い段階でベンチが動く。荒川に代えて梁、児玉に代えて山内が入る。児玉が抜けた左ワイドには寺尾が移り、寺尾の位置に梁、荒川の位置に山内が入る。
交代で入った梁を起点に左サイドから果敢に相手ゴールに迫る。中央の田村、山内を狙ったボールを供給しゴールを狙うがフィジカルが強い青森のCB陣に跳ね返される。相手ボックス付近にまでボールを運んでもそこから先が固い。前半の序盤以降はチャンスらしいチャンスを作れないまま時間だけが経過していく。そして73分、再び二枚替え。田村に代えて上野、伊従に代えて谷奥を投入。残り時間が20分を切り、徐々に焦りが見え始める。とにかく1点が欲しい。
この時間になっても青森は前線からのプレスを徹底し簡単にはロングボールを出させない。短く繋ごうにも素速いプレッシャーをかけ良いボールを入れさせない。2点リードがある中、残り時間が少なくなるにつれて11人が引いて守り、青森の守備はさらに固くなる。どうやって崩すのか。
80分、左サイドから上田のロングスロー。ニアで谷奥がすらして中央に篠原が飛び込む。しかし相手DFが先に触ってクリア。82分、金に代えて森主を入れて最後の闘魂注入。83分、相手陣内でのフリーキック。梁がゴール前に良いボールを入れるが青森の選手が先に触り掻き出される。89分、自陣からのカウンター、しかし焦りからパスがずれて簡単にカットされてしまう。
執拗なプレスを続けたことで脚が攣って倒れる青森の選手たち、最後まで諦めずにゴールを目指すヴィアティン三重の選手たち。時計は90分を経過しアディショナルタイム4分がアナウンスされる。このまま終わるのか。
最後は最終ラインに篠原と上田を残して谷奥が攻撃参加。前へ前へとロングボールを放り込むヴィアティン三重。跳ね返す青森。90+4分、前に上る谷奥、それを狙って左脚でロングボールを入れる上田。谷奥が頭で落としたところへ梁が走り込み右脚を強く振る。強烈なシュートはGK正面だったがその威力は強くGKがファンブル、こぼれ球に山内が詰めて1点を返す。
もう1点、もう1点…!
1点では足らないことなど誰もがわかっていた。だが全員でその1点を目指そうとしていた。ここで諦められるはずがない。しかし青森の選手が大きく蹴り出したところで無常にも試合終了のホイッスル。
2024シーズンにヴィアティン三重が掲げた「J3昇格」という目標がこの瞬間に終わりを告げた。
ホームゲームの合計観客数、過去最高を突破
「JFL優勝・J3昇格」今シーズンはじめに掲げたこの目標は全30試合の2試合を残し、28節で終わった。ヴィアティン三重にとって8年目となるJFL。悲願達成は来年へ持ち越し。我々の闘いは来シーズンへと続く。
試合後に間瀬監督は言った
昇格を果たせなかったいま、ヴィアティン三重に関わる全ての人が落胆していることは間違いがない。しかしまだ2024シーズンは終わっていない。そしてJ3昇格という目標は来季も続く。今季の残り2試合をどう闘い、どんな結果を手にするのか。今シーズン積み上げたもの、結果を来シーズンに誰がどうやって繋いでいくのか。とはいえ来季のことなどわかるはずもない。今できることは引き続き目の前の一戦に全力で向かうこと。
また、今シーズンのクラブにとって大切な目標は続いている。そう、ホームゲーム観客数30,000人達成という大きな目標だ。14試合を終えて合計28,798人となり、クラブ史上最多入場者数を更新した。30,000人達成まであと1,202人。次節のホームゲームで必ず達成しよう。そしてアウェイ滋賀での最終節も全員で闘い、クラブ史上最高順位で今シーズンを締めくくろう。残り2試合、2024年ヴィアティン三重ファミリーの力をみせてやろうじゃないか。
いざ、協闘。