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去り際にふりかえって

バチくそ高速でテスト終わった。1時間のテストのために1時間かけて電車に乗り1時間ヘアアイロンやらメイクやら服のセットアップを考えたりやらしている。ばかばかしすぎる、と思うからもっとたくさん授業やろーよ。

前期が終わっちゃって、私はまた夏休みに立ち向かわなきゃなんない。好きな人はもういないし、でも確実に大学は居場所になっていて知り合いも増えて距離も縮まって生き方がわかってきた。この夏はまた知らん世界にダイブしないといけない。私の一部を切り離して1人で戦ってみないといけない。スマホを握りインスタグラムの中の友人を見て安心するんじゃなく、新しい友人を作りに声を上げる。知らない土地で知らない言語を操る。遠い街であなたのことを思えればいい。距離のある遠い島国にいる、はるか昔に恋したひとのこと。


髪を切り、ネイルをして、全部夏仕様だ。夏が来て私をドロドロに溶かしむちゃくちゃにしてしまおうとしても、今年はなんかいける気がする。あらゆる全部が私の味方で一部で断片で、私はそれらに血を通わせていた。だから何かが壊れたらそれに異常なくらい影響を受けて落ち込んだ、心臓が鳴っているのかわからなかった、死が尊かった、嘘じゃなくこの世界からいなくなってしまおうと、うつろな目をした私が言う。繊細になってギザギザした心臓がいろんなところに刺さってささくれて破れて壊れて、それで泣いてた。泣いておしまいにしたかった。


そんなことはもうない。私、言葉にできなくても何か掴んでいる。呪いが解けた、と思う。あのころから10年間続いていた呪いだ。大学に入ってから、縛られていた縄はちょんぎってズタズタにした。自分を大事にするって、わかった。好きなひとを好きって言った。あなた以外にも好きになれる。あなたじゃないから、彼を好きになった。あなたじゃなくても、よかったんだ。


これからバイト。それから夜帰ってレポートやろうかな、寝ようかな、気になる映画見ようかな、友達と通話してもいいな。好きなひとは彼女がいて夏幸せこよししてくれれば充分。私は私で、一人で、ここに健やかに立っている。

それで本当に、はじめから充分だった。何か期待していたからつらかった。私は私だった、あなたがあなたであるように、誰もがそうだった。


2024/7/23

追記:
いまはその異国の地にいます。冬から春になっていくなかに身を浸して、めずらしく健康的に過ごしている。ちいさな世界で泣いていたのはばからしかったよ、なにも苦しむ意味なんてなかったよ、夏を怖がる必要なんてなかったよ。
あなたがもしひとりで、孤独で、しぼられるように胸が痛くても、遠い街ではやわらかに陽が街を照らしている。いつだってあなたを待っている、あなたの希望になりうる。ちっぽけな世界のなかで勝手に死んでは、いけない。


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