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【2021年最後のThursday Gathering】Venture Café Tokyo Executive Directorの山川が明かすパンデミック渦のスタートアップ最前線

はじめに

コロナ渦、経済の停滞や失業者の増加が世界中で問題となる中、その裏側で起業の数が爆発的に増えていることをご存知だろうか。今回は、そんなパンデミックの中で巻き起こるスタートアップの変化について、Venture Café Tokyoの代表理事であり、「起業教育の名門校」と呼ばれるバブソン大学で起業学や失敗学を教える山川恭弘(以下、Yasu)へのインタビューから、そのリアルな様相を読み解く。さらに本記事では、年内最後の開催となるThursday Gatheringにも登壇する山川自身の2021年についても、赤裸々にお届けする。さあ、イノベーションの最前線を覗きにいこう。

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山川 恭弘 氏
バブソン大学 アントレプレナーシップ准教授
慶応義塾大学法学部卒。カリフォルニア州クレアモントのピーター・ドラッカー経営大学院にて経営学修士課程(MBA)修了。テキサス州立大学ダラス校にて国際経営学博士号(PhD)取得。2009年度より現職。専門領域はアントレプレナーシップ。バブソン大学では、学部生、MBA、エクゼキュティブ向けに起業道を教える。数々の起業コンサルに従事するとともに、自らもベンチャーのアドバイザリー・ボードを務める。2018年からCIC Japan President・一般社団法人ベンチャーカフェ東京の代表理事に就任し、日本での起業家的マインドセット普及に尽力。WEIN社外取締役、横浜GRITS社外取締役、東京大学特任教授、経産相J-Startup選定委員、文科省起業教育有識者委員他。

今必要とされる創造的破壊性

まず、バブソン大学で教鞭をとりながらCIC Japan President・Venture Café Tokyoの代表理事としても活動するYasuさんにとって2021年はどんな1年でしたか?

Yasu:もう、ワクワクしかないですね。自分自身、いつもワクワクしていると思いますが、今年は特に不確実性が高かったり、予測不能な状況が続いたことで、より一層ワクワクした年になったと思います。バブソン大学では起業道の出発地点として、自己理解を深めるという目的で、自分や他者を一言で表現するという講義があり、よく 「YasuはDisrupter(破壊神)やChaos(混沌)だ」と言われる事があります(笑)。凄く否定的にも取れますが、混沌とした状況をコントロールするということであったり、起業の世界で俗に言われるヨーゼフ・シュンペーターの「創造的破壊」なのだとポジティブに解釈しています。今まで、ビジネスの立ち上げに多く携わったことで、既存の前提条件をひっくり返し、さらに新たなものを創造するということを積み重ねてきたことで得られたイメージだと思いますが、コロナによって本格的にVUCA時代と呼ばれる世界が到来し、私としては自分の強みを活かせる主戦場に入ったような感覚でした。

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創造的破壊: 利潤獲得のために古いものを破壊し新しいものを創造していく資本主義の不断の活動。 ※J.A.シュンペーター『資本主義・社会主義・民主主義』参照
VUCA:Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)時代の特性を表す言葉。

なるほど。Yasuさんが2021年に創造的破壊をされたものは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

Yasu:今まで自分が体感してきて体系化できていなかった知識を、形式知にして多くの人に伝える必要性を強く感じ、そこに注力する1年でもありました。CICVenture Café Tokyoをはじめ、スタートアップのボードメンバーや、企業の社外取締役など様々な顔を持っていますが、コロナの影響で混沌とした環境の中で、いかにすれば、起業における創造的破壊を実現するのかという教えを依頼されることが増え、ますますこの役割としての貢献度が高まってきています。自分に対する需要が今まで以上に質高く、深く求められるようになったことで、自分自身も既存のやり方を破壊し、今年から新たな創造を探究しています。

パンデミック渦中の「起業」トレンド

コロナ禍での起業という文脈で、Google では「仕事の見つけ方」などの検索よりも「起業」という検索が2021年では世界的に増加したとの報告がありましたが、多くの人が保守的になると考えられるコロナの状況下で、この実態についてどう思われますか?

Yasu:それは、ものすごいパラダイムシフトかもしれません。おっしゃる通り、今までは、危機を目の前にすると日本人は誰かが救ってくれるのを待ち、困難を耐え忍ぶ性質があったと思います。しかし、コロナが起こったことで、自分が動かなければこの状況が変わらないという現実に直面し、Reactiveではなく、Proactiveに変わったのだと思います。

その代表例が大学生・大学院生です。大学に合格しても上京できなかったり、大きな圧力がかかったことで反発力が増し、その力が起業に向かったのではないかと思います。さらに、大手企業に入ってもどうなるかわからないという気持ちや、自分自身を表現して趣味の中で生計を立てていける、あるいは自分の父親の年収を1ヶ月で越えてしまう自分や周囲の若いインフルエンサーを見て、貨幣や時間に対する価値、憧れ等がパラダイムシフトしたのでしょう。

バブソンにくる学生も同様です。今までは、「君は何がしたいの?」と聞けば、社会問題を解決したいという思いや世界を変えたいという志を持った学生が多かった。しかし、今や仮想通貨やNFTなど一発で多額のお金を得るようなビジネスをアントレプレナーシップと捉える学生も増えてきました。彼らの意識や行動がこれからどうなっていくのか全く予想ができないですし、想像がつかないからこそワクワクしています。

Google Year in Search「2021 年に最も注目を集めた 検索トレンドをチェックする。」:世界中の人々が起業の機会を模索した結果、起業する方法 の検索数が、仕事の見つけ方 の検索数を上回りました。

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ぜひ、Yasuさんが見てきた中で2021年、特に興味深いと思ったスタートアップを教えて下さい。

Yasu:たくさんありますが、「溶融塩炉」と呼ばれる第4世代の原子炉を推進しているベンチャー企業です。彼らは、ニュークリア(原子力)を扱っていますが、日本ではニュークリア=核爆弾のイメージが強く、理解が得られにくい側面があります。しかし、一概にニュークリアと言っても安心安全な原子炉もあり、様々な活用の仕方があります。再生可能エネルギーが注目される中で立ち上がった彼らは、核廃棄物を再利用して原子力を生成するという技術を推進しています。そういったベンチャーが被爆国である日本から広がることに意味があるのではないかと思っています。

加えて、個人事業主のための環境が益々と整備され、フリーランサーが増えたことで自分の能力をいきなり大手企業に活用してもらえたり、大活躍する人材が続々と出ていますが、フリーランサーのためのプラットフォームを作ったバブソン大学の卒業生もいます。また、たった2人で仮想通貨ビジネスを立ち上げ、数十億円の資金調達を成し遂げるような事例も出てきています。

世界を変えるゲームチェンジャーとの関わり

彼らには「どんなビジネスであれ、必ず世界を変える」と思わせるような光るものがあります。在学中、積極的に大学の教授に協力を乞うています。卒業しても助けを求めてきて、共にビジネスをしたいという熱い思いをぶつけてきてくれますし、彼らの世界を見る感覚はとても刺激的で何にも変えられないと思いますね。今までの私は、事業立ち上げをしては次のキャリアに移ることが多かったのですが、このバブソン大学での職は13年とこれまでのキャリアの中で最も長く続けています。世界を変える彼らのような若いゲームチェンジャーと日々関われている事は、素晴らしいことだと思っていますね。

CICやVenture Café Tokyoも今までの自分であれば、立ち上げを成功させたら次の立ち上げに移るということも想像できましたが、自分が今携わっているビジネスやコミュニティの多くが自分をハブとしてつながり、お互いにシナジーを生み、結果としてエコシステム全体の向上に貢献できるのでは、と考えています。

これから必ず世界を変えていくであろう人たちを自分自身の目で見て、体感できる。それだけでなく、自分が持っている知識を生かして彼らをサポートしてあげられたり、それを東京だけでなく、つくばや名古屋、岐阜で繋げてあげられることも誇りに思います。それは、今までやってきたことをずっと貫いてきて、共に歩んできてくれた優秀な仲間がいるからこそ実現していることであり、時代が自分たちを迎え入れてくれている感覚があります。

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失敗を歓迎するVenture Café Tokyo

全ての挑戦している人へ、もしくはこれから挑戦する人へのメッセージをお願いします。

Yasu:ありきたりですが、やはり「一歩踏み出せ、一歩踏み外せ、一歩はみ出せ」です。やってみなければわからないからこそ、誰かに背中を押してもらって、まずは一歩踏み出せ。時には一歩踏み外すことで、もうその時には背水の陣となり、とにかく前を向くしかなくなる。そして最後に、一歩はみ出した時には世界観が全く変わっている。世界を変えるには、まずは自分の見方を変えることだと思うんです。自分の中の世界の見え方によって全てが変わると思っているので、まずやってみて、失敗してみる。「Action trumps everything」の精神で是非とも多くの挑戦をして欲しいです。

行動を起こして失敗した人にとっても安心ができるコミュニティ"Thursday gathering“

Yasu:CIC・Venture Caféの立ち上げ当時、Opening NightでVIPの皆さんには「Failure is good(失敗最高)」という言葉が刻まれたTシャツをお配りしました。経営者やVIPの方々が率先して失敗のすゝめを実践しなければ、いくら「Failure is good」と言われても組織の人間は失敗できない。社会的に寛容度を上げるためにも、リーダーの皆さまには、ぜひ進んでして失敗して欲しいと思っています。

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最後に、Yasuさんの考えるThursday gatheringの価値を教えてください。

Yasu:価値は、やっぱりSerendipitous Collision(偶発的衝突)じゃないですかね。人と出会い、対話をし、刺激を受けることが「一歩踏み出し、一歩踏み外し、一歩はみ出す」ことにつながると思っています。多様な価値観を持った人々が集まってきて、衝突を起こす、そんな場面にこれからも演出していきたいです。決して、礼儀正しく「◯◯大学の◯◯です。」「◯◯企業の◯◯です。」といって名刺交換するような堅いものではなく、ドーン!とぶつかるところから偶然出会いが始まり「おお!」と。そんなカジュアルなコミュニケーションから何かが始まる偶発的な出会いが、Thursday gatheringの価値だと思います。

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終わりに

今回インタビューを行わせて頂いたYasuさんを含め、豪華登壇者が一同に集結する年内最後のThursday Gatheringは12 月23日(木)に開催されます。会場では直接Yasuさんにも会えます。CICやVenture Café Tokyo、そして社会が来年はどのように変化していくのか、Yasuさんは2022年にどのような創造的破壊をしていくのかを聞けるThursday Gathering。この機会を、2021年を締め括りとするもよし、2022年新たな挑戦をするきっかけとするもよし。皆さんのご参加、是非お待ちしております。

お申し込みはこちらから。

お知らせ

Venture Café Tokyoは毎週木曜日16時-21時に「Thursday Gathering(サーズデー・ギャザリング)」をCIC Tokyo(虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー15F )で開催しています。多様なイノベーター達によるセッションやイノベーションを加速させるワークショップ等を通じて、参加者は学びを得ながら、そこで得た共体験を梃子にネットワークを拡げることが出来ます。良きイノベーションの輪を拡げることを通じて、共に世界を変えましょう。


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