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同じ穴のむじな(6)マスカレード

小西由紀とのその後の進展はなかった。
わかったのは、彼女が「気分屋」だということだった。
天文部の例会で顔を合わせて「あのこと」に触れてもそっけなかった。
「あたしね、ちょっとおかしくなってたんよ」
「おかしく?」
「もういいでしょ」
こんな具合で、取り付く島もなかった。

今年の天文部の合宿は花背(はなせ)の大悲山(だいひざん)付近のポイントでキャンプすることになった。
本田さんが前に行ったことがあるそうで、プランは本田さんが作ることになった。
小西由紀は女性のため、もとより参加しないことになっている。
「一回のときにな、バイクで見つけたんや」
「へぇ、峰定寺(ぶじょうじ)っていう寺があるんか」と西先輩がガイドブックを見ながら訊いた。
「なかなかええとこやで。桑谷から登って、鉄塔広場っていう関電の鉄塔が建ってる開けた場所があるんや。ここにキャンプを張る」と、本田さん。
「てっとうひろば?」林さんが怪訝そうに訊いた。
「山登りの連中はそう言うてる。地図にはない。そっから尾根伝いに大悲山に登って、また戻る」
「戻るんかいな」
西さんが拍子抜けた感じで言う。
「いや、行けるんやで、このまま行っても」
国土地理院の地図を指しながら本田さんが付け足した。
「ただ、めっちゃ急な坂を下ることになるから、望遠鏡持って降りるのは至難や」
「ほうか。そらかなんな。おいら山岳部とちゃうからね」
「やろ?湯本君は山登りの経験は?」
本田さんが訊く。
「小学校のころで六甲山に行ったくらいで」
「舞鶴からやったら遠かったやろ?」
「そうですねぇ。林間学校やったから二泊三日でね」
「へぇ、そうかぁ。やっぱりバンガローかテント?」
「バンガローでした」
「小西さんにも来て欲しかったなぁ」
本田さんが残念そうにいう。
「ええ、あたしも行きたいんですけど、親がねぇ」
「わかってるって。そら当たり前や。星空の写真、いっぱい撮ってきたげるさかいに楽しみにしとって」
「はい」

「本当は、そんな子やないのに…」おれは、内心でそうつぶやいた。
先輩たちは、小西由紀の本性を知らないのだ…仮面舞踏会(マスカレード)の女。

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