貴子伯母
その年は台風も少なく、秋が深まりつつあった。
ぼくは、府立大学の三回生で農芸化学を専攻している。
授業を終えて校門を出ようとしたときスマホが震えた。母からのメールだった。
「帰りに貴子おばさんのところに寄ってあげて」とあった。
貴子(たかこ)伯母は、母の三つ違いの姉で独身だった。
中学校の音楽の先生をしているが、数年前に交通事故に遭い、左足が不自由で杖(つえ)が離せない。
だから、ぼくが今日のように買い物や、家の仕事を手伝ってあげているのだった。
伯母の家は、大学の近所にあった。
徒歩で十分もかからない。
「おばちゃん、来たよ」
ぼくは、伯母の玄関を勝手に開けて、入った。
「ああ、しんちゃん、来てくれたんやね」
日没寸前の日差しが廊下に差し込んでいる。その奥から、小柄な伯母が障子伝いによちよちとやってきた。
夕陽がカーテン越しに居間に差し込んでいる。
部屋の中では、伯母は杖を使わない。
「あんなぁ、生協が来てくれて、そこに置いていってくれたんやけど、冷蔵庫とかに入れてくれへんかな」
「わかった」
ぼくは、たいてい水曜日に、伯母宅へ生協が配達に来ると知らされていたので、こうして手伝うことになっていた。
一週間分の食材や日用品が発泡スチロール箱と折りたたみコンテナに詰められて「たたき」に積まれている。
これは出すだけでも、伯母には大儀なのだった。
ぼくが冷蔵庫に野菜などを分類して入れていると伯母が、
「どうや、学校は」「どうって、いつもと変わらへんよ」
「美子(よしこ、母のこと)は元気か?」
「ああ。おかんは病気ひとつしよらん」
「そりゃ、なによりや。ははは」
「おばちゃんこそ、足のリハはどう?」
「あかんな、ここんとこちょっと朝晩冷えるやろ、てきめん、硬くなってな、痛うてたまらんわ」
「そっかぁ…」
「ほんで、いつもやったらそれくらい、あたしでもできるんやけど、今日は痛いから、美子に言うたんや」
「いつでも言うてや。帰りに寄ったるさかい」
「ありがとなぁ」
伯母は、心底、ありがたいという表情で手を合わせる。
「やめてぇな。拝まんといて」
「お茶でも淹れるわ」と、ちょこちょことキッチンに入ってきた。
一通り仕事を終えて、キッチンのテーブルにつき、伯母の淹れてくれたコーヒーを口にする。
「こんなんしかないけど」と、生協で買ったらしいヤマザキの「マーラーカオ」を皿にのせて出してくれる。
ぼくが「マーラーカオ」が好きだと言ったから、生協のチラシにあると必ず買ってくれるのだ。
「おばちゃんは、学校にはずっと行ってんの?」
「行ってるよ。あたしは音楽だけで担任も持ってないし、授業のある午後だけな」
「今日は休み?」
「言うてへんかったかな、月・水は授業がないねんわ」
「そっか、聞いたかもしれへん」
ぼくは、正直、覚えてなかった。
「しんちゃん、ちょっと足、もんでくれへんかな」
「え?」
そうとう、足が痛むらしい。さっきからしきりに左のすねをさすっている。
「ええよ、どこでしよか。おばちゃんの部屋にいこか?」「そやな、ここではなぁ」
ぼくは、伯母を支えて、奥の和室に向かった。
六畳の和室には、介護ベッドが置かれ、伯母は、そこで寝起きしているのだった。
要支援とかでこのベッドを借りることができたらしい。
五十八になるまで一人で伯母は、ここで生活してきたのだろう。
この家は、ぼくの母にとっても「実家」だったが、祖父母が亡くなり、他に身寄りのない長女の伯母が相続して住んでいるのだった。
伯母をベッドサイドに座らせる。
やわらかな女の体を感じて、ぼくは勃起してしまっていた。
伯母の豊かな胸が、ブラウスを押し上げている。
「あ、ありがと。ちょっと横になるわな」
「お、おばちゃん…横にならしたるわ」「そうか、ほな」
そういうと、ぼくの腕に体を任せる伯母。
それなりに歳を経ているとはいえ、結婚もしていない伯母は生娘のようだった。
顔を近づけて、両手を彼女の背中に差し入れて、寝かせるとき、男が女に口づけするような形になる。
ぼくは、たまらず唇をかさねてしまった。
「あ…む」
目をみひらいて、ぼくを見る伯母は、複雑な表情だった。
「な、なにをすんの…しんちゃん」
「ごめん、おばちゃんが、あんまり可愛くて」「あほ…」
気まずい沈黙が二人の間に生じた。
「あんた、彼女とか、いいひんの(いないの)?」伯母が尋ねる。
「い、いいひん…」
「しゃあないなぁ。こんな婆さんをつかまえて、かわいいやなんて…」
「おばちゃん、きれいや」
「うれしいけど、なんも出ぇへんで、べんちゃら言うても。はよ、足、もんで」
そういうと、伯母はベッドに体を投げ出した。
スカートから生足が伸びている。
ぼくはその左足に手を伸ばし、ふくらはぎからさすり始めた。
「こんで、ええのかな」「ああ、気持ちええわぁ」
ぼくの腕は、だんだん伯母の左腿に上がっていく。
その内腿に掌がじわりと近づく。
その奥には、白いショーツに隠された女の部分がふくらんでいた。
スカートの中を覗き込むようにしていると、伯母が脚を上げて、よく見えるように開くように動いたではないか。
ぼくは大胆になり、スカートの中へ腕を差し込んだ。
「はぁ…」伯母の声が漏れる。
ぼくはベッドに乗りあがり、伯母の両脚の間に入ってしまう。
伯母は腕を顔にかぶせて目を隠しているが、おそらくじっとぼくを見ているだろう。
ぼくは、指先をクロッチに這わせ、そのわきから侵入を企てた。
「あかんて、しんちゃん、そんなとこ」
「おばちゃん、ぼく…好きや」
「はずかしいから、やめて」
「おばちゃんは、経験ないの?」
しばらくあって、
「ない…ないから、やめて」と言うものの、脚を閉じることはなかった。
「ぼ、ぼくもないねん。そやから、やってみぃひん?」
「やるって?」「うん」
ぼくは、伯母のパンティを脱がそうとした。
「汚いから…そんなとこ」
伯母はしかし、脱がされることに抵抗しなかった。
左足をパンティから抜くときに痛がった。
「痛いっ」「ごめん」
黒々とした下萌えに飾られた処女がぼくの目の前にあった。
蒸れて、匂い立つその肉の花びらに、ぼくはしばし見とれていた。
「ちょっと待って」と伯母が枕もとのウェットティッシュに手を伸ばす。
陰部を拭きたいというのだろう。
半身を起こして、伯母がそこを拭っている。
「見んといて」
ぼくは、その時間を利用してズボンとパンツを脱いだ。
シャツの裾から勃起をさらし、伯母に向き直る。
伯母が、おそらく初めて見るのだろう、男の勃起をじっとみつめた。
「そんなになるんやね。入るかなぁ」
「もう、しんぼたまらんねん。おばちゃん」
「あたしな、ほんまに経験ないねん。そんなおっきなもん、痛いんちゃうかな」
と、ぼそぼそと言う。
「ゆっくりするから」
「こんなこと、美子に知られでもしたら」
「大丈夫やて、だれが言うかいな」
と、ぼくはきっぱりと言って安心させた。
ぼくは、伯母のブラウスのボタンをはずし、脱がせ、ブラジャーだけにした。
そして正面からキスをする。
なぜか、こういう時にはキスをするものだとぼくは思っていた。
伯母も舌をからめてきた。
もう二人は「やる気モード」になっていたのである。
ぼくは伯母の手を勃起に誘(いざな)い握らせた。
「ああ、硬いんやねぇ」
伯母のアルトの声で賛辞が述べられた。
ぼくたちがむつみ合う姿が、伯母のアップライトピアノの艶やかな黒い面に映し出されている。
伯母が中学の音楽教師であることが、ぼくの欲情をますますかき立てる。
ブラジャーをむしり取り、豊満な乳房を露わにし、ぼくはむしゃぶりつく。
「ひゃっ」
「おばちゃん、胸、でかいなぁ」
「そんなん、言わんといてぇ」
ぼくも上のシャツを脱いで、互いに素っ裸になって抱き合った。
伯母も積極的に背中に腕を回してきた。
二人の間で乳房が押しつぶされる。
伯母の股間にペニスが滑り込む。挿入はしていないが、伯母の潤滑で胎内に入ったような錯覚を覚えた。
抱き合って、体をこすり合わせる感覚だけでも、ぼくは昇りつめそうだった。
伯母の体から立ち上る、乳製品を想起させる体臭がぼくをうっとりさせる。
「あはん、しんいちっ」「おばちゃん!」
呼び合うことで、感情を高め合った。
伯母のほうからぼくに手を伸ばして握ってきた。
「ああ、これを…入れてみて…」
とうとう、そうねだる伯母だった。
この歳まで男を近づけなかった女の、切なる欲望だった。
ぼくは、伯母の左足をかばいながら、膣に亀頭をあてがう。
その濡れそぼった秘穴は、誘うようにひくひくとうごめいている。
ぼくの尿道からも涙のようにしずくが盛り上がっている。
ぬち…
最初の接合が始まる。
カーテンのひだのような膜を引き延ばすように膨らんだぼくの先端がくぐる。
「痛いわ…ちょっと」
腰を引く伯母。しかしぼくはやめなかった。
亀頭が隠れてしまうまで押し込むと、きゅっと伯母の内部が締まる。
「す、すごい。狭いよ、おばちゃん」
「怖いわ。もう、だいぶ入ってるん?」「まだ先だけや」
中が緩んできたので、ぼくはもう少し侵入を続けた。
腰を微妙に浮かせて、一気に入らないように調節する。
ぼくも初めてなので、この状況に理性が消し飛んでしまった。
亀頭に感じる、強烈な圧迫と、伯母の姿態がないまぜになって、ぼくは取り乱していた。
心臓は早く打ち、耳の奥でがんがん響いた。
息が苦しい…
「おばちゃん、おれ、もう、あかん」
言うが早いか、ぼくは伯母の中にほとばしらせてしまった。
腰砕けになって、ぼくは射精し続けた。
かなりの量が伯母に吸い込まれていった。
「ああ、しんちゃん…あったかいわぁ」
伯母の脚も緩んで、左右に倒れ、ほぼ大の字に開脚された。
ぼくは、萎えつつある分身を伯母から引き抜き、伯母にかぶさった。
「おばちゃん…出てもたぁ」
伯母は優しく、ぼくの背中に腕を回して引き寄せキスを求めてきた。
ちゅっ…
「しんちゃん、ありがと。おばちゃん、うれしい」
たどたどしく、伯母が甥に礼を述べた。
伯母の目に涙が浮かんでいた。
その日ぼくは、伯母の家に泊まると母に電話を入れ、母は怪しむ様子もなく許可してくれた。
だからぼくたちが、心ゆくまで男女の交わりを楽しんだのは言うまでもない。
貴子伯母とは一緒に風呂に入り、無理やり口内に浴びせ、再び介護ベッドの上で、伯母にまたがらせて騎乗位で突き上げた。伯母は曲がりにくい方の脚を伸ばしたまま耐え、最後は伯母を寝かせて曲がる方の脚を上に松葉崩しで最後の一滴まで注ぎ込んだのだった。
こうしてぼくたちは、蕾のまま枯れようとしていた互いの性を開花させ、秘密のおこないに耽溺していったのである。だれもこの歳の差のあるカップルに淫靡な関係のあることなど疑わなかった。
(おしまい)
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