PCT出願
社長からPCTとパリ条約ルートの相談を受けた。
たった一人の知財部担当(それもパートタイム扱い)の私だから、そういう相談もたまにある。
「だいたいPCTがようわからんのや、なおぼんは知ってるやろと思って」
「はあ、外国出願をお考えなんですか?」
「S産業との共願でな、ほら、自動施錠・開錠機能付きトイレ等個室ドアの」
「ええ、知ってますよ。先月、いっしょに書きましたね。明細書」
「で、PCT出願かパリルートかって先方が聞いてきたんや」
「PCTもパリルート(パリ条約ルート)も外国に日本の特許出願を主張するもんです。PCTは条約の名前でね、この条約を批准している各国の間で、日本もそうなんやけど、日本の特許庁に特許を出願したら、その優先日を他の締約国にも及ぼすことができるというもんです」
「日本語でええのか?それ」
「かまいません。日本語か英語かのいずれかで出願されておればいいんですよ」
「で、PCTにするにはどうしたらええねん?」
「特許庁に、優先日から12か月以内に優先権を主張するPCT出願をすればいいのです」
「パリルートとはどう違うねん?」
「実は、昔はパリ条約ルートで優先権を主張するしかなかったんですが、パリ条約ルートの場合、これも条約締約国間で有効な方法なんやけど、日本国内の優先日から数えて12か月以内に、パリ条約締約国のうちの優先権を主張したい国々に、それぞれその国の特許庁に当たる官庁に特許出願をしないといけなかったんよ」
「PCTもそやろ?」
「ううん。PCTは日本の特許庁に日本語でPCT出願するだけで、締約国すべてに対して優先権の主張ができてしまうのよ」
「そらええわ。PCTにするわ」
「PCTにするとね、優先権主張国がまだ定まっていなくても、優先日から30か月以内に定めて国内移行手続きすればよく、じっくり腰を据えて費用対効果を考えつつ対処することができます。国際調査を自動的受けられ、国際公開後に国際予備審査を受ける請求もできて、自分の発明が国際的に意味のあるものかどうか予め知ることができます」
「パリルートのメリットもあるんやろ?」
「順調にいけば短期間で締約国各国で特許成立が見込め、経費も少なくて済みます。ただ各国に合わせた出願をする労力が大変ですよ」
「PCTでも優先権主張する国に出願せなあかんやろ」
「それはそうです。あくまでも日本の国内での出願日を優先しようという手続きに過ぎないわけで、最終的にはその主張をしたい国の制度に合わせて願書を提出するんですよ。それを国内移行手続きっていうの」
「国内?日本にまた移行するん?」
「違いますよ。そういう誤解をする人が多いけど、これは国際出願であり、それを相手国の官庁に移す必要があるのね、だからその国の内側を国内というのよ。あくまでも外国ですよ」
「ようわかった。PCTでやるわ。また手伝うてな」
「ええよ。そんでも弁理士先生に最終的には持って行くから一緒に来てや」
「うん、頼むわ」
私の説明でよかったのかどうか不安だ、細かいところが間違っているかもしれない。
締約国だったか批准国だったか、私には区別がつかないのだけれど。
パリ条約ルートについて私は携わったことがないのでよく知らないのだ。
パリ条約ルートとEPCは同じだったかな?
ま、いいや。
あたしの仲良しの弁理士先生に相談しよう。
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