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古傷

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私はひどい男です。懺悔のつもりで綴りました。
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古傷 (1)

古傷 (1)

会社の帰りに駅前のスーパーに寄った。
晩酌用の缶ビールでも買おうと思って、生鮮食品の前を通り過ぎたとき、見覚えのある顔に視線が釘付けになった。
女の方も、おれの顔を見て驚いた表情になった。
「真由美…」
小さくおれは呼びかけたが、彼女は踵(きびす)を返して立ち去ろうとした。
おれは、衝動的に彼女を追いかけ…といっても三歩ほど近づいてその肩に触れた。
「待ってくれ」
「やめて…」
「少し、話さないか

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