ペルト・シェーンベルク・シルヴェストロフひとくち解説note #いにちうむ
本日は、1st Stageの後半、谷が指揮をする3曲について書いていきます。
ペルト: 主よ、平和を与えたまえ
独特な響きを持つArvo Pärt(アルヴォ・ペルト)の合唱作品は、ヨーロッパの特に教会で行われる演奏会で好んで演奏されますが、Da pacem Domine(主よ平和を与えたまえ)は、その中でも演奏される機会の多い作品のひとつです。
楽曲の構成はシンプルで、リズムの動きも少なく、非常に遅いテンポ(♩=40)でゆっくりと和音が移り変わっていきます。同名のグレゴリオ聖歌に基づいた作品で、そのメロディーが冒頭アルトによって歌われていますが、長く引き延ばされているためにメロディーとしては聴こえて来ないかもしれません。ぜひ耳を傾けてみてください。
今回はコンサートホールでの演奏となりますが、ぜひ石造りの残響の長い教会でお聴きいただきたい作品です。
シェーンベルク: 地上の平和
今回の演奏プログラムの中では、エッシャー作曲の「平和のほんとうの顔」と並ぶ大作 、そして言わずと知れたシェーンベルクの代表作です。
シェーンベルクが無調音楽そして12音技法の作曲家として知られていることから、この「地上の平和」も無調音楽かのように語られることがありますが、「地上の平和」はシェーンベルクが本格的に無調、12音音楽に取り組むより前に書かれた調性音楽です。(中間部が特に難しく、なかなか正しい音程で演奏されないために無調に聴こえるのかもしれません…)
楽曲の冒頭は優しく穏やかに始まり、激しい叫びや、戸惑い悲しみの中で「Friede, Friede auf der Erde!(平和、平和が地の上にありますように!)」という言葉が少しづつ違う意味合いを変えながら何度も繰り返されます。
この作品が生まれてから100年以上経っても平和が訪れない今の世界に、あらためて平和を求める心の叫びが届きますように。
シルヴェストロフ: 歓喜の歌
昨今の情勢の中で、ウクライナ出身の作曲家として日本で演奏される機会が増えてきたシルヴェストロフ。そしてこの状況が終わっても、ずっと大事に演奏していきたいと思う作曲家です。彼の音楽は決して複雑ではなく、非常に繊細で、美しく、大切に扱わないと壊れてしまうガラス細工のような印象があります。
テキストはベートーヴェンの第九の歌詞として有名なシラーの「an die Freude 歓喜の歌」をロシア語に訳したものですが、おそらく第九とはまったく違った印象でこのテキストが聞こえてくるのではないでしょうか。
initiumにとって初めてのロシア語への挑戦となりますが、もうひとつ挑戦となるのがバスの音域です。ウクライナやロシアの歌い手を想定しているためと思われますが、とにかく低く、最低音はヘ音記号の五線よりもさらに下のBの音です。
オクタビストと呼ばれるような超低音を得意とする歌い手を擁さないinitiumは、メンバーが吸気発声やサブハーモニクスによる特殊唱法で挑んでいることも注目ポイントです。
(文: 谷郁)
参考: 先日のリハーサルにおけるシェーンベルク、ペルトの演奏抜粋
vocalconsort initium ; 6th concert
- Le vrai visage de la paix -
11/22 Tue. 19:15〜
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