本演奏会のコンセプトとプログラム概説 #いにちうむ
vocalconsort initiumによる第6回目となる自主公演
vocalconsort initium ; 6th concert - Le vrai visage de la paix(平和のほんとうの顔) - まであと1週間をきりました。
このnoteでは、今回のサブタイトルでもあるLe vrai visage de la paix(平和のほんとうの顔)と、そしてプログラムについてお話しします。
平和のほんとうの顔、というサブタイトル
このLe vrai visage de la paixというサブタイトルは、今回のメインプログラムのひとつでもある、ルドルフ・エッシャーによる合唱曲のタイトルから取っています。この作品のテクストはポール・エリュアールによるもので、本来はピカソとの共作で詩画集として発表されたものです。
この曲には留学中に出会っていて、そのときは自分が演奏することなど夢のまた夢と思っていましたが楽譜だけは迷わず購入していました。(帰国以後当時夢のまた夢と思っていたような曲が立て続けに演奏できている気もしており、ありがたみが非常に深いです。)
実はこの作品と、こちらも今回演奏するシェーンベルクの地上の平和を中心としたプログラムは、2020年6月にコロナ禍で中止となってしまった私たちの自主公演で「平和と知恵」というタイトルを掲げながらすでに企画していたものでした。当時はここへヴィラ=ロボスやプーランクを抱き合わせるアイデアでした。実現しなかったことが惜しまれます。
いずれにせよ2020年当時からすればその2年後に「平和」ということばがここまでヒリつくようなリアリティを持ってしまうということは想像することができませんでした。そしてそれが音楽家として能動的にパフォーマティヴに選択できるたぐいのテーマなんかでなく、音を感じ奏でるまえに、そもそもシャットアウトできない、すべきでないあらゆる現実を踏まえて今そこにあるのだということを再認識せざるを得ませんでした。
プログラム全体・概説
そうした経緯の上で、改めて熟考の上構成したのが今回の6th concertのプログラムです。
前半部
前半部は主宰でもある柳嶋耕太、谷郁によるプログラミングです。
エッシャー: 平和のほんとうの顔とシェーンベルク: 地上の平和を軸に、6作品をつなげて演奏します。ウクライナ作曲家のシルヴェストロフ: 歓喜の歌は本邦初演。
Interlude
休憩明け、まずゲスト奏者である澤田守秀さんのスネアドラムソロで、今回のために律動と和の瞑想と題した内容で即興演奏をしていただきます。
後半部
そして今回の目玉でもある、モルテン・シュルト=イェンセンの客演指揮ステージです。
今回彼が振るプログラムは全て自身で選曲したものです。
実はもともとシュルト=イェンセンの来日公演が話に上がっていた当初は、ブラームスやメンデルスゾーンのライトな世俗作品を中心にしたプログラムをご提案いただいたのですが、「平和のほんとうの顔」というコンセプトと前半部の私たち(柳嶋、谷)の選曲をひと目みて、それに強く共感してくださり今回のような選曲に一気にシフトしました。
ホヴランド、ニュステッド、サンドストレームなど彼の得意とするスカンディナヴィアの現代作品にブラームス、ヴォルフ、メンデルスゾーンというドイツロマン派のアカペラ作品を併せた、丁寧にまとめられたプログラムでありながら、「平和を希む」ということのリアリティを6曲すべてつなげたひとつの息の流れを伴って強烈に訴えかけるような、引き込む力のあるプログラムです。6曲それぞれ、合唱曲としては決して無名ではありませんが、これをこのように組み合わせるということは僕には決して思いつくことはできませんでしたし、この並びをはじめにみたときは度肝を抜かれました。
最後に演奏される予定の、「エリヤ」の一節でもあるメンデルスゾーン: 主は天使たちに命じた は、女声合唱と男声合唱の柔和な掛け合いが愛される有名な1曲ですが、このプログラムを経て最後に鳴り響くそれは、きっとまったく新しい体験となるでしょう。
ぜひ、会場で、配信でご体験ください。
(ところで今回の配信は(株)NHKアート様のご協力により、臨場感あるアングルでお楽しみいただける予定です。こちらもぜひご検討ください!
(文:柳嶋耕太)