リフレット主観的レビュー――ステンレス・ナロートール
以下の記事で、私がどのような判断をして、ナロートールのステンレスフレットをチョイスしたのかを記事にいたしました。
できる限り主観を排除し、信頼できるソースの情報を頼りにリフレットの参考になりそうな情報を整理いたしましたので、ぜひこちらもよろしくお願いします。
そして先日、リフレットに出したギターが帰ってまいりましたので、
①プレイアビリティについて
②サウンドについて
の2点、あくまで主観的なレビューをしたいと思います。
メイプル指板のリフレットについて書かれた記事は多くありません。
理由はおそらく、指板面の塗装を剥がす必要があり、料金も日数も必要になるため。
ローズ指板などに比べてリフレットに出す人が少ないんでしょう。
もちろん、メイプル指板のリフレットにかんする記事もないではないのですが、その多くはビンテージギターについて書かれたもの。
「いかに元の塗装面を生かしリフレットするか」
がテーマになっている記事です。
そのため、スペックの変化や、かかった料金や日数など基本的な事項の紹介から始めたいと思います。
ともあれ結論からいえば、ナロートールのステンレスにしてよかったと思っています。
まず、基本事項――スペック、料金、日数
前提としてのスペックの変化をまずご紹介したいと思います。
今回かわったのは、フレットサイズと指板面の塗装です。
幅:中×高さ:中のニッケルシルバーから幅:中×高さ:高のステンレスに、ポリ(エステル、おそらく)からラッカーに。
塗装をラッカーにした点については特にこだわりがあったわけではなく、むしろこだわりがなかったので、頼んだ工房の標準であるラッカーになりました。
ちなみに、モデルはNeo Classic NTL11MMHT、マホガニーボディのシンラインですね。
フロントピックアップをGIBSON Burst Bucker#1に、そのほか配線材も交換してあります(失念しましたので、写真を載せときます)。
(たぶんJupiter Vintage Toneの.02uf 600VDC)
ちなみに、修理にかかった日数は5/26~6/27(配送の時間を含めて)なので、ちょうど1カ月ですね。やはり塗装の分、長くかかっています。
料金は62,658円(送料込み)。
メイプル指板のリフレットにしては良心的な価格だと思いますが、やはりローズ指板などに比べると割高です。
①プレイアビリティについて
それでは本題です。
まず、プレイアビリティについては、ナロートール(幅:中×高さ:高)にしたことが最も影響していると思われます。
ただし前提として、交換しないとダメなほどフレットが低くなっていたということに比べると、フレットがずいぶん高くなっているということ。
感覚的には2倍ほどになっています。
メリットとしては、
少ない力で正確に弦を押さえられるようになった。
ハンマリング・プリング・タッピングの音量UP。
ステンレスにしたので、ビブラートやチョーキングが滑らか。
デメリットとしては、
スライドするとき引っかかる感じがする。
個人的な意見としては、スライドで引っかかるというのは慣れで何とかなると思われるので、メリットの方が大きいかと思います。
※2020/10/15追記
スライドで引っかかるというのは、割と早い段階で慣れました。
やはりメリットの方が大きいかと思います。
②サウンドについて
こちらに関しては、ナロートールというフレットのサイズの問題よりも、ステンレスにしたことの影響が大きいと思われます。
ただし、「①プレイアビリティについて」で書いたのと同様、ずいぶんフレットが高くなっているということを念頭に置いてください。
端的にいえば、音が明るく・伸びるようになりました。
これは非常に明確な変化で、間違いないと思います。
この要因は、Jescarのステンレスフレットにしたことだと思います。
「ギターのリフレットを出すにあたって、参考にしたもの」で書いたように、Jescarのステンレスは"バリカタ"です。
もとのニッケルシルバー("ふつう")から比べれば、非常に硬くなっているので、やはり変化も大きく感じるのは間違いありません。
率直にいって、ギターが新品に生まれ変わったくらいの変化です。
それに加えて、前に比べると若干、ローも出るようになったと感じています。
フレットの質量が増えたからかなー、と考えていますが、真偽は不明です。
※2020/7/2追記
ニッケルシルバーの比重が約8.70g/cm^3、ステンレスの比重が約8.00/cm^3でステンレスの方が軽いため、質量が増えたからローが出るようになったは間違いです。
(参考:ニッケルシルバー、ステンレス)
いずれにしても、私の感覚をまとめれば、
レンジが広くなり、サステインが向上した
というところでしょうか。
結局、おすすめなの?
もちろん、目指す方向性によると思います(身もふたもないですが)。
ニッケルシルバーに比べて高音が出て明るくなるのは間違いありません。
個人的には、高音(倍音)を削って暗いトーンにすることが出来ても、出ていない高音(倍音)を付け足すのは不可能だと考えています。
これは特にクリーントーンでは間違いないと思います。
いずれにしても、そういう意見を持っている私としては、高音が出るのはメリットでしかありません。
暗い柔らかなトーンが欲しい時はピッキングを柔らかくしたり、トーンを絞って削ればよいことなので。
ただし、高音を削るひと工夫が必要なのは間違いないので、暗い柔らかなトーンが求められるジャンル(伝統的なジャズ、ブルース、ロックンロールあたりでしょうか)しか弾かない人にはおすすめしません。
サステインの向上は好みが分かれるかと思います。
サステインの短くてレンジの狭い、イナたい音がいいんだよ!
って人には絶対おすすめしません。
もし仮に、暗い柔らかなトーンが求められるジャンルを演奏する方やサステインの短いのが好きな方が耐久性を求めてステンレスにするなら、
硬すぎないフリーダムのステンレスフレット、特にSpeedyの方をチョイスし、他の電装系、ピックアップ・コンデンサ・ポット・配線材の交換を含めてトータルで考えることをおすすめいたします。
モダンvsビンテージ
最終的に、ステンレスフレット=モダンなトーン、ニッケルシルバー=ビンテージトーン、ということでひとつ、どうでしょうか。
いずれにしても、約65,000円という価格に見合うリペアだったと思います。
もし私が出した工房が気になる方がいらっしゃいましたら、個人的にお伝えいたしますのでコメント欄・Twitter・Instagramにでも連絡をお願いします。