真空管サウンドのオルタナティブ ――①ダイレクト・イン
改めて、もちろん私も真空管サウンドは大好きで、真空管の音で弾きたくて、ORANGEのMICRO TERRORを所持しています。
しかし前回、「よい音」に真空管は必要なのか?というタイトルで、デジタルモデリングや真空管アタッチメントで"みんなが真空管サウンドを求めている"状況に対して問題提起をしてみました。
そこでしばらく、真空管サウンドに対するオルタナティブを考えていきたいと思います。
歴史的に存在したオルタナティブ=ダイレクト・イン
実は、真空管ではない、独自の音で録音された名曲がいくつもあります。
最初に紹介したいのが、1970年代前後にみられる"ダイレクト・イン"です。
ダイレクト・インのサウンドは、エフェクターブランドのJHS Pedalsによれば、ルパートニーヴデザイン(Rupert Neve Designs)のミキシングコンソールに直接ギターをつなぐことで録音されているようです(https://jhspedals.jp/guitar-pedals/2682)。
以下、2曲ほど例を挙げてみます。
BeatlesのRevolution
明らかに、真空管からくる歪みとは異なります。
(ミックス違いが多く困ったのですが、青盤のやつが一番わかりやすいと思ったので、これにしときました。)
ただし、ビートルズのこの曲にかんしては、ダイレクト・インで録音したという説と、オーバードライブを用いたという説があります。
どちらが正しいかについて、私には確かめようがないのですが、この音を真空管アンプで出すのは難しいのでは?と考えています。
他にも、1970年代前後に一斉を風靡した、Marvin GayeやJackson5などのいわゆる"モータウン・サウンド"の中にも、ダイレクト・インで録音されたものがあるようです。
具体的にどれかを知らないので、サンプルを貼るのはやめておきます。
RADIOHEADのBodysnatchers
次に、ダイレクト・インが1970年代前後に一時的に流行ってすたれたものではなく、現代にも通じるものであることを示すために、2007年リリースのRADIOHEAD - IN RAINBOWSから1曲、紹介したいと思います。
こちらも、明らかに真空管の歪みではありません。
ダイレクト・イン=サイケデリックな歪み
上に挙げたBeatlesとRADIOHEADのサウンドはどちらも、割れたような音を逆に利用したサイケデリックな歪みといえそうです。
これは、ルパートニーヴデザインのミキシングコンソールに"ダイレクト"にギターをつないで、ゲインを上げて音を"割る"ことでえられるものです。
この歪みは真空管とは明らかに異なり、もしかすると、一般的に「よい音」として受け入れ難いものかもしれません。
しかし、上に挙げた2曲はどちらも誰もが認める名曲なのもまた事実。
このサウンドを用いて曲を作ることを考えると、新たな世界が広がりそうです。
再現できるのか問題
ここに使用されているようなヴィンテージのニーヴコンソールなんて、ビンテージアンプよりもレアですし、個人で買えるものではないでしょう。それでも中にはJHS PedalsのColour Boxなど、ほぼ同じ回路を使って再現しようとしているエフェクターもあります。
加えて、もしオーディオインターフェイスを持っているのであれば、インプットのゲインを思いっきり上げて、音を割ることで再現できるかもしれません(あくまでも"過負荷"を与えているので、お勧めはいたしませんが)。
もしかすると、ダイレクト・インによる歪みも、簡単に個人で所有できる時代になったのかもしれませんね。