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IbanezがBASS VI出したぞ!SRC6MSレビュー
BASS VI大好き民なので、SRC6MSは日本で発売となったその日に試奏し、次の日に購入しましたよ。
そう、SRC6MSはIbanezが出したBASS VIです!
恐らくスポット生産モデルでそれほど数も出回らないでしょうから、ここにレビューを残しておきたいと思います。
結論から言えば、BASS VIをモダンに作るとこうなる、って感じのシロモノ。
SquierのBASS VIの上位互換といってよいと思います……。
もちろんSquier製のものの良い点もあるので、その辺も含めてレビューしていきますね。
というわけでSRC6MSを使ったライブルーピングも演奏しましたので、もしよかったらこれ聴きながら読んでいただけると幸いです。
基礎情報
まずは基礎的な情報ですね。
公式HPからコメント入れつつ紹介します。
下に書いてない詳細はリンク先でみてください。
neck type:SRC65pc Jatoba/Walnut neck
ジャトバ、ウォルナット、ジャトバ、ウォルナット、ジャトバ
の順の5ピースネックですね。
どちらも非常に頑丈な木なので、反り・ねじれには強そうです。
fretboard:Rosewood fretboardAbalone Step off-set dot inlay
ローズウッド指板ですが、詳細は不明です。
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分かる方がいらっしゃれば教えてください……。
body:Okoume body
オクメですね。
マホガニーの代替材として扱われたりするものです。
カリンバとかでも見たことありますね。
結構柔い木材っぽいですね。
塗装も木肌を活かすようなものなのですが、軽くぶつけたら簡単に凹みました……。
fret:Medium frets
24フレットです!
ここ結構ポイントで、Squier製より3つほど多いですね。
それだけでソロ弾くときに便利だったり。
Scale:762 mm- 724mm
そうなんですよ。
マルチスケールです。
最大のポイントなんで、後述します。
Radius:400mmR
Squier製が9.5" (241 mm)なのでこれに比べるとかなり平たいですね。
neck pickup:Bartolini® BH2 neck pickupPassive
bridge pickup:Bartolini® BH2 bridge pickupPassive
バルトリーニがアイバニーズ向けにおろしてるやつですね。
単品で売ってるということもなく情報が少ないのでアレなんですが、たぶんハムバッカーです。
ソースはフリマサイトの記述なんでアテにしないでください。
公式いわく、
「タイトなボトム・エンドと豊かなミッド・レンジとともに、バランスの良いウォームなレスポンスが特徴のサウンド・キャラクター」
だそうで。
equaliser:Ibanez Custom Electronics 3-band EQ w/EQ bypass switch (passive tone control on treble pot), 3-way Mid frequency switch
アイバニーズ製のプリアンプがついています。
この辺もサウンドの面で改めて書きますね。
ちなみに、ナットの素性は分かりませんでした。
きっとブラックのTUSQとかだと思います。黒いんで。
素人判断なので、真に受けないでください。
あと、Squier製のやつはフローティングトレモロなので表通しですが、SRC6MSはハードテイル+裏通しです。
基本情報の最後として、作りはSquier製のヤツとは比べ物にならないくらい良いです。
例えば、Squier製のヤツはペグに弦を通す穴が中心になっていなかったり、ブリッジを入れる穴がズレてたり、ナットがけば立ってたり……。
SRC6MSについて、そういうことはみられません。
以上を把握していただいた上で、演奏性、サウンド、と話を進めていきましょう。
演奏性について
まぁ、やっぱりマルチスケールというのが最大のポイントですよね。
762 mm- 724mm、つまりは低音弦側30インチから高音弦側28.5インチのマルチスケールになっています。
サウンドの面でも触れるので、覚えておいていただけると幸いです。
で、私のように低音でギターのようにコードを出したい、という人からすると
「マルチスケール=フレットが斜めになってる、でコードは押さえられるのか?」
が気になると思います。
そんな人いるかどうか知りませんが。
正直、38mmしか違わないので、気になりません。
まったく問題なくセーハ(F的な押さえ方)も可能です。
もちろん、若干の違和感はありますが……。
1フレットでFM7とか抑えると結構ナナメ感が。
それも5分もせずに慣れます。
そして、マルチスケールという点で触れておくべき点がもうひとつ。
Squier製のやつは6弦だけ張力がかなり弱いので、演奏面でも6弦だけ異質になっています。
しかし、SRC6MSは高音弦側のスケールが短い分、ある弦だけ異質な感触、とかはありません。
Squier製のヤツのレビューをお読みになった方はここで、
「え、じゃあ、SRC6MSはすべての音がビロンビロンってこと?」
となるかもしれませんが、それは次項のサウンドについてで触れます。
結論だけ書いておけば、上のライブルーピングの通りそんなことはありません。
で、演奏性の違いでもう一つポイントになるのが、ハードテイル+裏通しというところ。
フローティングトレモロ+表通しのSquier製に比べると、かなりテンションを強く感じます。
ただし、SRC6MSはハードテイルなぶん弦の振動が安定しているのか、あるいはIbanez製なぶん精度が高いのか、弦高を下げられるのでそこまで大きな問題にはならないかもしれません。
が、固い印象というのは間違いないと思います。
そして、Squier製はフローティングトレモロがあるぶんボディエンドから離れてブリッジがあるので1フレットが非常に遠いのです。
しかし、SRC6MSはボディエンド近くにブリッジがあるので、Squier製に比べると1フレットはかなり近い印象です。
こちらがそれを図示したもの。
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青がSquier製、赤がSRC6MSで、参考までにテレキャスも並べてみました。
Squier製がテレキャスと同じような位置にブリッジがあって、そこから30インチなのに対して、SRC6MSはそれよりもずいぶんボディエンド側から30インチが始まっているのがお分かりかと思います。
身長の小さい方でも安心ですね。
一方で、ギターと同じ感じで構えて弾くと、SRC6MSはかなりネックよりで弦をはじくことになります。
SRC6MSについて、左手はギターとそれほど感覚は変わりませんが、右手は相当ネックよりで演奏することになる、と言い換えられますね。
以上をまとめると、多少の違和感はあるかもしれないが、かなり良好な演奏性だといえそうです。
サウンドについて
さて、サウンドについてですが、結論からいえばBASS VIらしからぬ(というかSquier製のヤツに比べると)タイトでモダンなサウンドです。
その辺については、以下を読んでいただければ納得いただけるかと。
先にSquier製のヤツの難点をセルフ引用しておきます。
6弦だけ張力が低くなってしまっております。
そのため、6弦だけ音もビロンビロンです。
どのくらいビロンビロンかというと、クリップチューナーBOSS TU-10が6弦だけ反応しないくらい……。
差し込むタイプ(YAMAHA TDM-700)だと大丈夫なのですが、それでも音程はフラフラします。
一方アイバニーズ製のSRC6MSはマルチスケールなので、高音弦側がいわゆるバリトンギター的なスケール(28.5インチ)になっており、全体のサウンドがそろってくるんですよね。
そうなってくると、全体がビロンビロンの変な音になってんじゃないの?と思われるかもしれませんが、それはそうではありません。
むしろ全体がしっかりとしたタイトなサウンドとなっています。
ただし、それでもクリップチューナーだと6弦の反応がかなりあやしいのですが……。
クリップタイプではチューニングできないレベルのSquier製に比べれば、チューニング可能な範囲ですね。
なぜか。
その理由として挙げられるのが、ハードテイル+裏通し仕様に固いネック材。
Squier製のヤツは、伝統的なBASS VIのリイシューモデルなので、ジャズマスター・ジャガーと同じフローティングトレモロ付きです。
もちろん、音を揺らしたりできますし、フローティングトレモロ特有の倍音感もあるので、デメリットだけではない味があります。
しかし、こと6弦のビロンビロン・サウンドを助長してしまっている感が否めません。
それに対してSRC6MSはハードテイル+裏通しなので、しっかりとしたテンション感となっています(※1)。
そして、SRC6MSはジャトバとウォルナットという固い木材を用いた5ピースネックです。
つまり、しっかりとしたテンションを固い木材が受け止め、暴れるような倍音を抑え込んでいる、そんな感じでしょうか。
その結果、かなり低いポジションでコードを弾いても破綻したサウンドになりにくいなー、と感じました。
さらにバルトリーニ製のハムバッカー(たぶん)が搭載されているため、不要な倍音がカットされていて、モダンで端正なサウンドという印象もありますね。
まぁ、もちろんきちんとしたロングスケールのジャズベとかに比べるとモワッとした音なんですが……。
さらにこれをアイバニーズ製のプリアンプでがっつり加工して出力できるのも、SRC6MSの魅力のひとつ。
EQの素性については、公式の画像が最も手っ取り早いと思うので、そちらを貼っておきます。
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おおむね±15dbですかね。
あと、MIDが250Hz、450Hz、700Hzの3つに切り替えられます。
このMIDの周波数をみてると、BASS VI用に作ったというよりは、普通のベース用を流用してる感じですね。
まぁ、価格とかこれを求める人口を考えれば当然ですけど……。
それでも、「低音楽器」として扱うのであれば、問題ありません。
もし、ちょっと音が低めのリード楽器だと思って使うのなら、不満が出てくるかもですが……。
ピックアップも2つあるので、音作りの幅はかなり広いといえますね。
この点については、Squier製のヤツもピックアップ3つのon/offにローカットスイッチ、トーン回路、とあるのでパッシブながら多彩なのですが。
以上をまとめると、モダンで端正なBASS VIのサウンドを3バンドEQで使いやすく出力する、そんな感じでよいと思います。
Squier製との違いまとめ
さて、ちょっとまとめてみました。
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まぁ、大体こんな感じですかね。
こうやって比較してみると、やっぱりモダンなSRC6MS、ビンテージなSquier製でよいと思いますよ。
ちなみに、2023年5月頭現在の価格差はこんな感じ。
SRC6MS:99,000円
Squier BASS VI:64,300円
だいたい3万円差ですね。
個人的に、Squier製のヤツの作りを何とかしようとすると3万円はかかるだろうと思うので、妥当っちゃぁ妥当、プリアンプの分SRC6MSの方がコスパは良いかしら?
ってところでしょうか。
最後に――結局おすすめできるの?
SRC6MSを買った動機って、実は
「作りがあまりよくなくて不安定なSquier製のBASS VIのサブがとして安定したものが欲しい、でもどうせ買うならSquier製とすみ分けられる、もっと違うタイプのBASS VIがいいなー」
みたいなところだったんですよね。
もちろんBASS VI大好き民だからっていうのもあるんですが。
そういう動機なので、難点という難点が思いつかない、作りが良くてモダンなSRC6MSは大満足です。
そのため、
ギターと同じ感覚で弾けるベースが欲しい
みたいな人にはSRC6MSをおすすめします。
ただしもちろん、
ビートルズのコピーバンドで使う
とかって人にはおすすめしません。
あとはBASS VIでシューゲイザーやってやんよ的な人なら、フローティングトレモロがあった方がいいと思うので、Squier製をおすすめします。
ただ、チューニングを安定させるのにかなりシビアな調整が必要ですが……。
トレモロ封印したとしても、この独特の倍音感を歪ませると飽和する感じでナイスです。
とかって思うと、やはりビートルズなどを志向するのでない限り、SRC6MSの方が良いと思いますね……。
それでもなおSquier製にしかない独特のサウンドがあるので、私は使い分けていこうと思います。
それでは。
※1 ベースについて、裏通しでタイトなサウンドというのに懐疑的な記事なども目にしたことがあります。
この記事が最も丁寧に論じられているのですが、まとめると弦が太すぎて曲げに無理が出るからというお話で、じゅうぶん納得いくお話です。
が、上の記事にあるようなベースの4弦は.100(=0.1")に対して、BASS VI用の弦は.084(=0.084")でかなり細くなっています。
そのため、そこまで無理に曲がっているというわけではなさそうなので、"SRC6MSにおいては"裏通しでテンション感が得られているということでよいと思います。