『綺麗なところだけを見ていたい』
なるべく、人の裏側は見ないようにしている。
そりゃ私だって大人だから、取り繕った表面とは別に、人それぞれ裏の顔があることは理解はしているけど。
でも、なるべく考えたくないし見たくない。
だってめんどくさいじゃん。
「この人、裏では私のこと悪く言ってるんだろうなぁ」とか考え出したら止まらないじゃん。
裏ばかり見れば人間不信になる。
表ばかり見ても人間不信になる。
じゃあどうしたらいいのかって。
最近ずっと考えている。
別の部署に手伝いとして借り出されるようになって、もうすぐ3ヶ月が経つ。
手伝いに行くようになったキッカケは、上長が「社員になりたいなら、別の仕事を学んでこい」と私を送り出してくれたからだけど、未だに大した戦力にもなれないまま、時だけが無情に過ぎていく。
そりゃぁ、そうだよな。
だって手伝いも大事だけれど、私の仕事と所属はあくまで営業部で、無事採用した新人を育てる仕事もあるから、手伝いばかりにかかりきりにはなっていられない。
ぶっちゃけ営業部も今現在繁忙期なのもあって、別の部署に手伝いに行けるのなんて、1ヶ月に数回あるかどうか。
最近は休日をほとんど返上して学びに行っているけど、それだってたかが数時間だ。
学びきるには圧倒的に足りない。
時間も体力も精神力も。
勉強したって追いつかない。
努力したって敵わない。
それでもやらなきゃいけない。
そうして、がむしゃらに前を向き続けるうちに。
ふと、別の部署の人たちは、私をどう思ってるのだろうか、と気になった。
いきなり営業部からやってきて、何もわからないから一から教えてください、なんて。
社歴だけはそれなりにあるから、後輩としても新人としても扱いにくくて、教える言葉ひとつとってもきっと気を遣ってくれているだろう。
正直めんどくせえ。
私だったらめんどくさすぎて嫌だ、そんなヤツ。
ウチの会社は男も女もそれなりにいるけど、基本的には良いひとばかりで、みんな嫌な顔をしたりはしないけど。
私が戸惑っていても「大丈夫、ゆっくり覚えていこう」って言ってくれる人ばかりだけど。
同じミスをして、自分だけが怒られなかったり、変に優しくされていることを感じると。
裏ではみんな、私に対して、なにを思ってるかわからないよな、と思う。
それでもいいんだ、別に。
私に聞こえないところなら、なにを言われても。
これまでもそうだったし、これからもそう。
聞こえなければないものと同じで、知らなければ幸せでいられる。
直接ぶつかってくるヤツにはそれなりの対応をするけれど、そうじゃなければわざわざ波風なんか立てたくない。
実生活もネットも。
汚いものから目を逸らすのが人間だろう。
だから私は目を逸らす。
人の裏側なんて見たくない。
優しい言葉をかけられているうちは、その言葉をただ享受していればいい。
戦うことも時には必要だけど、いらない戦いなんかしたくない。めんどくせえ。
そう思うのに。
本音はどう思ってるんだろう、って。
つい考えてしまう自分がいる。
ああ、営業部に帰りたい。
なーんにも考えずに、お客さまだけ相手して、成績取ってりゃよかった時代に戻りたい。
けれど現実はそれを許してはくれなくて、強制的に成長することを求められている。
へりくだればいいのか。
気を遣えばいいのか。
とっとと仕事を覚えりゃいいのか。
たぶんどれも不正解な気はしてる。
でもどうしたらいいのかわからない。
しんどい。しんどい。
すげえしんどい。
だけど逃げたら負けだから。
私に期待してくれた上長に対する裏切りだから。
逃げられない。逃げ場はない。
だから今日も私は願う。
ああ、今日も綺麗なものだけ見られますように。
ごめん。ただの愚痴でした。
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