『哀愁しんでれら』
気持ち悪い映画だった。褒めてる。感想、書いてくよ。
まず、役者の方々について。撮影当時8歳？のcocoちゃんが怖すぎる。だってこれがお芝居デビューなんじゃろ？人生何周目？子供の嫌なところ、可愛いところ、うざいところ、でも自分が子供の心を思い出すとぐわっと湧いてくる同情心とか…子供ってこうよね、あーこういう子供の心理ってこうやって出来上がるのね。って全部全身で表現してる。
やっぱりインスタで普段から表現をしてるからなのかな？監督が、その芝居を引き出すのもめちゃくちゃ上手い。
たおちゃん、たおちゃんはね、美しい。やっぱり身体の使い方が素敵。少しだけダンスのシーンあるんだけど、やっぱり経験は隠せない。一瞬の動き、表情も素敵。
正直、『土屋太鳳』ちゃんが流行り出した時、あまり興味なかった。可愛いけど、へぇ、ダンスすごいんだってそんくらい。でも、歌手のSiaとコラボした時の動画見て震えた。もっと、もっとこういう顔見たいって思った。
今回、当時その動画を見た時の感動が蘇った。彼女の芝居は好き。
田中圭、気持ち悪い。もともと全然男性俳優って興味なくて、ほとんど顔と名前が一致しないんだけど、それでもまだ分かる人のうちの1人。田中圭についてうっすい知識しかない。だからすごく嫌いになりそうになった。そんだけ芝居が凄いってことでもあるよね。
↓以下ネタバレ↓
↓
↓
↓
このおとぎ話は、終始信じられないことばかり。それがファンタジーってことなのかな。ずっと怖いし気持ち悪い。人間の脆さと危険さを、美しい色合い、美しい人々、美しい背景、美しい洋服、美しい音楽、そういったもので塗り固めて、誰もがどこかのシーンで、『美しい』と感じてしまうようにできている。
前半は、めっちゃコメディタッチで、主人公の小春(土屋太鳳)にギャグ？ってくらいの不幸が降りかかる。テンポもすごく良い。楽しい。
けど中盤以降、どこかテンポの乱れ、不穏さが滲み出てくる。最後は狂いに狂った小春の提案で大悟(田中圭)の連れ子、ヒカリ(coco)の学校の児童を皆殺しにするんだけど全然現実味がない。
まず今時、学校での集団予防接種なんかしてない。しかもいくら大悟がヒカリの学校の校医だからといって、以前からちょこちょこ問題行動が目立っていたこの夫婦に集団接種の担当を任せるだろうか？てか他の教員は？ラストシーンでは、校内の至る所でバタバタと死んでいる児童が映るが、これは完全に映像美でしかない。
それも含めての裏シンデレラストーリー、裏おとぎ話ということなんだろうな。
全児童を殺した後、ある事実が発覚するんだけど、それを信じる者は我々の中にどれだけいるんだろうか。
監督は多分、この真実を多くの人が受け入れないだろうと確信して仕込んだんだと思う。本当に恐ろしい監督だ。
人は都合のいいように物事を解釈したがる。大人から子供へ、観客から演者へ、世の中の真実を受け入れなくなくて、信じたくなくて、、、。
この映画って、モンスターペアレンツについて、また、人間の怖い部分を映し出す映画ってことは誰が見てもわかる。
けど、もっと深読みすると色々なメッセージが込められているし、受け取ることができる。
物事の一面しか見ようとしないと、ただの狂ってる家族の話。だけどなぜこの家族に恐怖を感じるのか。それはこの狂気は日頃の私たちの中にも眠っているものだからではないだろうか？自分はまともだ。そう思い込むからこそ、こうやって人が壊れていく様子を気持ち悪いと思うのでは？
むしろこっちが人間なんじゃない？狂ってる方が。
あと、映画の最初と最後で、小春とヒカリが同じセリフを言うんだけど『〜私は幸せになれるのだろうか？』の部分。ヒカリの言葉に私は酷く慈しみを感じた。あの親2人にこれからも育てられていくヒカリ、ラストは幸せそうだったけど。このまま成長していく彼女、親を選択できない子供、囚われた子供、刷り込まれていく思想、、、なんとも恐ろしい映画だった。
個人的に自分も順風満帆な家庭には育っていないのでヒカリや小春、大悟の言葉にはそれぞれ同感する部分がある。きっと世の中に順風満帆でなんの問題もない幸せな家庭など存在しなくて、親は子供と同時に育っていくただの人間にすぎない。だから沢山の問題にぶつかる。それを無理に理想の家庭像にはめ込むことの方が気味が悪い。もっと人間はぐちゃぐちゃしていていいのに。
汚い部分は誰しも持っているだろう。人間である以上、聖人君子は存在しない。
私は、まだこのクソみたいで不安定、でも少しだけ美しい人間界に子供を産み落とす気はさらさらないのだけれど、それでもいつか子供が生まれたら教えたい。
世の中の人はどこかみんな狂ってて、非常識で、クソだ。理想の形なんてイメージしない方がいい。だから自分の中の罪悪感や恥ずかしさ、異端さを認めて生きろ。その脆さや危うさが人間の美しさでもあるからだと。