映画ドラえもん2023 所感(ネタバレ含む)


※ネタバレ注意



最初から不気味な雰囲気が漂っていたのは、BGMの影響が大きいと思う。「ユートピア」の様子が最初から不穏だった。「パーフェクト」や「悪者」という言葉が(明確な敵を設定して胡散臭いパーフェクトを目指すという思想とともに)、ちょっと変だなと私は最初から感じていたので、「まさか、本当にパーフェクトを目指すような話ではないだろうな」と思いながらハラハラドキドキ?していた序盤だった。

カルト宗教や洗脳をテーマにしていたドラえもんが新しいといえば新しかったが、込められていたメッセージ(色々な人間がいるから面白い、ダメなところも含めて自分を愛してほしい、など)は共感できるもので大変よかった。

前半部分を見ているときは、のび太がユートピアを見ることができて中に入るまでの展開に正当性がなく、ご都合主義でよくないなあと思っていたが、特殊なサンプルを探していたとの後の説明によって、それが納得できるものとなったので、唯一ケチを付けようと画策していたところが解消されて満足した。

ドラえもんを「役に立たないダメロボット」と評されたのに対して放たれる、のび太の「役に立たない?隣にいてくれる、友達でいてくれる、それだけで十分だ」という趣旨の台詞は、奇しくもかねてから私が主張していたドラえもん観(好きなひみつ道具トークにやや懐疑的であることなど)でもあり、そこについて正面から触れてくれたエピソードは(私の記憶の限り)あまりないように思われるので、ついにきたかと高揚感を覚えた。

最後のドラえもんの、レイ博士について「可哀想な人なのかもしれないね」という言葉が印象に残った。たしかに人間が人間らしい感情を一切持たなければ、ある意味では平穏なのかもしれない。そのような思想は、程度が弱ければごく一般になされるものである。実際に「上から言われたことを忠実にやっていればいい。自分の主張ばかりするな」と発言する人は身近にいる。この根底にある考えは、切って捨てるほど酷いものとは言えないかもしれない。しかし、洗脳という手段は明らかに間違っていると言わなければならないし、そのようなやり方ではどこかで破綻する。他の社会との隔絶が大きくなってしまい、極端なものがさらに極端に、「悪者」への憎悪はさらに凄まじいものになってしまう。そして、何のために生きているのか今よりももっとわからない、つまらない世界になってしまうのではないだろうか。


まとめ

斬新なので賛否分かれるかもしれないが、メッセージ性は感じたし、そこには強く共感できるものであった。その斬新さやメッセージ性があるからこそ大人でも楽しめる作品になっていると思う。


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