未来の予知・予言 ~死海文書(2)~
ファリサイ派の話から少し離れて、今回は、死海文書のイエスに関する記述についての話です。
死海文書の「共同体の規則」に、次のようなことが書かれています。
共同体の人々は、預言者、アロンのメシア(祭司系メシア)、イスラエルのメシア(王的メシア)たちが来るまでは、最初の共同体の規則で裁かれる。
逆に言うと、預言者、アロンとイスラエルのメシアたちが現れた後は、エッセネ派の人々は、彼らによって裁かれる、あるいは、彼らによって、誰が裁くかが示されると、読み取れます。
「共同体の規則(1QS)」は、エッセネ派にとって、非常に重要な文書であり、この書写を行った人は、非常に重要なポジションにある方と思われます。
このテキストを書写した人は、証言集(4Q175)と同じ人物であるとされています。さらに、サムエル記写本とも同じという研究者もあり、異なる死海文書が同一の写字生に帰されるのは、稀のようです。
サムエル記がどの写本なのかは、わからなかったのですが、サムエル記は、列王記と一緒に書かれている場合があり、列王記には、エリヤのことが書かれています。新約聖書では、エリヤの生まれ変わりが、バプテスマのヨハネとされています。
証言集(4Q175)は、メシア的人物についての言及で関連していると思われる聖書からの引用集とされています。
最初の3段落は、サマリア五書からの引用です。死海文書が引用している部分を、旧約聖書(日本聖書協会)から引用します。
預言者
モーセは、旧約聖書ではメシアとはみなされていませんが、死海文書の五書アポクリフォン(4Q377)では、「かれの油注がれた者たるモーセの口による」という表現があり、モーセもメシアとみなされているようです。
新約聖書では、ヨハネの黙示録によって、イエスが預言者であることが示されています。
ヨハネの黙示録を、キリスト教を知らない人は、ヨハネの黙示と思っているようなのですが、イエス・キリストの黙示であり、預言者はイエス(=メシア)です。
イスラエルのメシア
バラムの四度目の託宣で、この預言は、「モアブを打ち、アラムを征服し、エドムをも支配下に置いたダビデ王によって実現した」ものと、一般的には考えられています。
一方、「証言集」が書かれたハスモン朝時代の領土は、以下のようになります。
この地図のアレクサンドロス・ヤンナイオが征服した時の最大領土は、ダビデ王の時の領土に匹敵する状況です。
エッセネ派の人々が、アレクサンドロス・ヤンナイオスをイスラエルのメシアと考えたとしても、おかしくない状況です。
ただ、もともと、大祭司を追われた義の教師が設立したのが、エッセネ派のクムラン共同体の人々であったので、正統な大祭司でもない人々が、大祭司を偽っているハスモン朝の王たちを、イスラエルのメシア(王的メシア)とみなすことは、ありえないことと思われます。
アロンのメシア
エッセネ派は、燔祭も神殿祭司もやめていたはずです。イスラエルのメシアより、アロンのメシアのほうが上位の者としています。
以上、証言集(4Q175)の最初の3段落の「預言者」「イスラエルのメシア」「アロンのメシア」について記載しました。
そして、最後の4段落めが、すごい予言(預言)になっています。
「モーセのような預言者」と「イスラエルのメシア」、「アロンのメシア」を兼ね備えた人物が現れ、悪魔ベリアルの1人とその息子たちを呪う預言と、読み取れるのです。
つづく。