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【Prison Break】
公認会計士論文式試験に合格された皆さま、
本当におめでとうございます!
合格発表から1か月経ち、もう生活面やお祝いも落ち着いてきた頃でしょうか。私が試験に合格したのは2007年11月、17年前になります。合格した直後に私は監査法人などへの就活をせずに、山奥に籠ってしまいました。結局、監査法人で会計士キャリアをスタートしたのですが、それは1年後でした。補習所も同時期に入りました。
さて、そんなユルく会計士キャリアをスタートした私が皆さんのキャリアの参考になるようなメッセージを送るのは畏れ多い気もしますので、自分自身がこれをやっておいてよかった、と感じたこと、そしてそこから学んだことをメッセージにしたいと思います。
なお、このメッセージはてりたまさんが企画下さった【祝・合格🎊】X会計士界隈から論文式試験合格者の皆さんへのリレーメッセージ|てりたま|元大手監査法人パートナー|会計士の新しい生き方を見つける によるものです。私以外にも素晴らしいメッセージが数多く寄稿されていますので、是非ご覧ください。
会計士試験受験している時は全くと言っていいほど映画を観たことが無かったのですが、監査法人に入って、週末に課していたのが、映画(洋画)を観ることでした。当時は英語の勉強も兼ねて、字幕なしで1回観て、次に字幕(英語)付きでもう1回観る、ということをしていました。そうやって英語の勉強を兼ねて洋画を観ていたのですが、未だにこの方法は英語力の向上という観点からはあまり意味がなかったと思っています(笑)。恐らくこの方法では英語は向上していないです。なら、なぜ映画を観てよかったのかというと、これがまさに仕事の世界で生きていく、上手くやっていくコツであったり、マインド、気持ちの後押しをしてくれたと強く思っているからです。
監査法人に入り、週末に時間を作って最初に観始めたのが、「プリズン・ブレイク」(Prison Break)。ご存じの方も多いかもしれません。当時住んでいた武蔵小山には有名な商店街があり、そこにブックオフがありました。プリズン・ブレイクは物凄い長い連載で、且つそれぞれのストーリーを2回も観るため、結局観終わるのに数か月ぐらいかかったと思うのですが、そのブックオフで次の数週間で観る分を借りて、観終わったら返却し、また次の分を借りる、という生活をしていました。
「プリズン・ブレイク」は、まだ監査の実務に触れたばかり、いや、そもそも仕事を始めたばかりの私にとってピンチを切り抜けるコツ、困難な状況でも工夫して何とか乗り越えるガッツ、多様な人種・人材の中でもやりくりしていく力、リスクとそれに対応する方法や洞察力など、仕事や人生の幅を広げてくれたものでした。
プリズン・ブレイクをご存じない方もいらっしゃると思いますので、どういった映画かというと、2005年から2009年にアメリカのFOXテレビで放送されたクライムアクションドラマで、今までに4シーズンが放送され日本を含め世界中で人気を博しました。有能な設計技師である主人公マイケル・スコフィールドが、兄リンカーンの無実を信じ、刑執行から救い出すためにあらゆる計画をたて、脱獄計画をしていくものです。ハラハラ、でも人情味を感じる壮大なドラマです。
監査法人で監査を始めた私、ミスを連発する日々でした。これは今、化け物クラスで活躍をされている会計士の諸先輩方も、話を聞くと信じられないような(いや、かわいらしい(笑))ミスを経験されている方もいらっしゃいます。ミスをした、でもそこから挽回をする、ミスをした、先輩に見つかる前に早急に挽回する、また、ミスをしないようにあらゆるアンテナを張って先回りをしてコミュニケーションをする・行動する、こういった時にプリズン・ブレイクが実務や現場での教科書として役立ちました(え、今流行の“現場の教科書”!?)。
・なりきる
ある時、自分がアメリカの大統領だとしたら怖いものはないな、と思い始めました。世界中から常に注目され、世に存在する人間の中でも一番の脅威とプレッシャーを感じているでしょう。プリズン・ブレイクの世界では、それぞれの人物がプリズンブレイクをするために、あらゆる人になりきります。なりきって脱獄を企てるのですが、状況に応じて“なりきる”力は仕事で年数を経るたびに、色んな場を経験することで実感してきました。社長になりきる、パートナーになりきる、現場責任者になりきる、会計士になりきる、それぞれの立場になりきって、プロの仕事をする。これこそプロの神髄と考えています。1年目の最初の現場で確認状を発送する仕事を頂き、確認状を作成し、郵便局へ確認状を持参して発送をしたことがありました。郵便局で発送処理をし、郵便局を出て監査部屋に戻った後にそういえば、返信用封筒を発送封筒に入れ忘れた!と気づき、血の気が引いたことがありましたが、その時はプリズン・ブレイクの主人公であるマイケルになりきり、郵便局へ戻って交渉をして郵便物を戻してもらい、事なきを得たというしょうもないお話もありました。なりきって自分に酔ってしまいましょう。
・ビジネスマナーを学ぶ
“You need a jacket!” こんなシーンがプリズン・ブレイクの中で、ある人がレストランに入る時にありました。その人物は近くにいた人のジャケットを借りてレストラン内部にはいるのですが、如何に海外ではジャケットが重視されるかを知った瞬間でした。監査法人でもその他の職場でもこれから海外に出られて仕事をする方がいると思います。ドレスコード、これは相手の信頼を得る意味で物凄く大事です。海外だけでなく、日本でもドレスコードに従うだけで良いサービスを受けられたり、その出身母体(日本、会社)、そして自分自身への小さな信頼を積み重ねていくことができます。監査法人、公認会計士という職場・職種からビジネスマナーを煩く言われないことは多々あるように思いますが、こういったドラマ・映画を通じて国内外でのビジネスマナーを学んでいくことは非常に大切だと考えています。この後私自身アメリカとイギリスのオフィスで勤務することになるのですが、オフィスではかなりカジュアルな服装である一方、ディナー会やクリスマスパーティーなど、そういった場では一転フォーマルに着こなすということを理解していたため、すんなりと現地に溶け込めることができました。
・状況を読む
プリズン・ブレイクの中では、先の先を読んで脱獄を目指すわけですが、その時の雰囲気、あらゆる状況を考慮した中でも思いがけないトラブルやトラップもあります。そんな中でもベストを尽くし、今手元にあるものを利用して解決し、脱獄を目指すわけです。監査の現場、それ以外の仕事場でも目指すゴールがあり、そこに向かって日々の業務を地道にこなしていきます。ゴールを達成するために今手元にある手段を出来る限り探し、取捨選択し、ベストを尽くすことが非常に大切です。時にゴールを忘れ、小手先のテクニックを使ったり、他責志向にして、その場を逃れようとする時がありますが、それでは成長に繋がりません。仕事だけでなく、映画やドラマ、洋画と邦画、国内旅行と海外旅行、いつもと違った角度から様々な体験をしていくことで、より思考の多様性が生まれ、引き出しが多くなり、いかなる状況でも対応できる人間力がついていくように思います。
監査の現場では監査意見が付された監査報告書の発行が最終目的となりますが、そこに至るまで膨大な時間と期間を経ていきます。ゴールから逆算して状況を読み、その場その場でベストな自責思考による判断と行動を起こしていくことが肝要です。
・思い切る
プリズン・ブレイクの中では生死をかけた脱獄が行われます。失敗したら自分の命が、大切な人の命が。。。というシーンが何回も登場します。その時その時で思い切った、大胆な行動をし、解決していきます。このシーンを見ていくと、世の中の殆どのことは些細な出来事に思えてきます。監査の現場でも思い切ることが必要な場面が出てきます。膨大な量の監査手続、さて限られた予算の中でどうリスクアプローチをして監査手続を行うか、チームメンバーの構成をどうするか、監査意見間近に不正が見つかったけどどうするか、等々。判断や指示をグダグダと遅らせていくと益々状況は悪化します。これは立場が上になればなるほど。
思い切りの良さは背中を押されて実施できることも多いです。プリズン・ブレイクを見て、自らを勇気づけることもできますし、勿論他のことを体験して自らを奮い立たせることもできます。色々と体験・体感することが大切です。
・グローバル社会を体験する
プリズン・ブレイクの中で登場する牢屋の中、そして牢屋外でも様々な人種や国が出てきます。英語だけでなく、他の言語が飛び交う状況が度々登場するのですが、どの様な状況でもプリズンブレイクというゴールを達成しないといけません。
監査法人に入って監査をする、公認会計士として様々なプロジェクトに関わる、様々な場面で何かしら海外との接点があると思います。中には海外からのExpat(海外オフィスから日本へ駐在できている方)やクライアント先に外国人と仕事をする機会がある方も出てくるかもしれません。私は会計士試験に合格するまでは海外とは全くの無縁の生活でしたので、プリズン・ブレイクのような海外ドラマを観ることで、多様な考えや人を受け入れること、違った角度からの思考を持つこと、ゴール達成のための仕事のやり方には様々な方法があることを学んだように思います。
・出会い
プリズン・ブレイクでは時に人との別れや出会い、そして人の温もりや優しさを感じるシーンが度々登場します。そして、プリズンブレイクするために多くの取り巻く人々と連携をし、信頼し合い、問題解決をしていきます。仕事をしていくと、時に信頼していた人から裏切られた、途中で逃げられた、見た目と違って物凄く助けて貰った、人生で一番悩んだ、色々なことを経験すると思います。良くも悪くも人間の世界で生きている以上、人との”出会い”ばかりです。監査法人でキャリアをスタートされる方も多いと思いますが、監査法人でも多くの出会い・別れがあると思います。監査法人を仮に出ても、出向したり、海外オフィスに行ったりしてもそこでも出会いがあります。私自身、監査法人には約14年在籍していましたが、監査法人を出てからその出会いの素晴らしさに気付きました。補習所でも大切な出会いがありました。こういった出会いが後の人生を豊かにしてくれていると感じています。
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最後に
今回のメッセージ企画、私も17年前を振り返るきっかけになりました。当時と今では試験制度も異なっていたり、取り巻く環境も変わっています。今の状況は当事者ではない私には分かりませんが、それでも合格された皆さんは期待と希望が膨れ上がっているものと思います。私の場合、合格した同期や補習所のメンバーと話したりしていると、優秀そうな方ばかりでこんなところでやっていけるのかと不安がありつつも、試験合格後に訪れたシドニーにあった高層ビルにあるBig4のようなオフィスで将来働けるチャンスが1%はあるかもしれない、というワクワク感も抱いていました。
これから5年先、10年先、20年先がどうなるか分かりませんが、それでも公認会計士という職業から見える世界はグローバル社会では無限の可能性と活躍フィールドがあると断言できます。
まずはプリズン・ブレイクを観て、ワクワク感を!そして、改めて公認会計士論文式試験の合格、本当におめでとうございます!あと、ゴルフ一緒に行きましょう。お誘いお待ちしております⛳
#公認会計士論文式試験合格おめでとう
さて、明日は「連結会計の求道者。」國見 琢さんです!連結に関するあらゆる専門的な内容を投稿( https://x.com/yuyukaikei )されており、國見さんの投稿を見るだけで連結の論点をほぼ網羅できてしまうのでは!という雲の上の方です。
自己紹介
2007年公認会計士論文式試験合格後、放浪生活を経て、2008年に監査法人入所。米国と英国への赴任を経験し、2022年に独立開業(森大輔公認会計士事務所(港区高輪) | 東京都・愛知県の公認会計士・税理士)。2024年に監査法人(SMASH国際監査法人・アドバイザリー合同会社)を設立。財務諸表監査、内部監査、英文開示支援や財務DDなどの業務に携わっています。また、税理士法人を主体としたSMASHグループ(スマッシュグループ | 税務・財務・会計・経営のトータルサービスのスマッシュグループ)の代表を務めています。今年9月に書籍出版いたしました↓ 年末年始に是非どうぞ!!
※元中日ドランゴンズ・メジャーリーガー川上憲伸さんとの対談