寒中の新芽
マンションの植え込みの脇を通り過ぎかけた時、
ひとつの樹木に目を奪われた。
すっかり葉を落とした沢山の枝が、
腰の高さくらいまで、わさっと広がっている。
その枝のいくつかの先端に、
やわらかな緑色の葉っぱが、ぴょこっとついていた。
薄茶色のそっけなく細い枝に、
ふたつに折り畳まった瑞々しい緑色の葉っぱ。
何の木だろう?
少し後ずさりする。
地面に立てられたプレートに「アジサイ」とあった。
アジサイ。
こんな寒さの中、すでに葉っぱの準備を始めているのか。
溢れんばかりの葉が茂り、赤や青や紫の可愛い花が咲くのは
まだ5、6か月も先だろうか。
再び歩き出しながら、あの寒そうな沢山の枝が、
葉と花でいっぱいになった姿が想像された。