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『響け!ユーフォニアム』第8回定演 【感想とレポート】単なるコンサートではなく、ドラマ要素などサービス満点


『響け!ユーフォニアム』公式吹奏楽コンサート ~北宇治高校吹奏楽部 第8回定期演奏会~ 夜の部
に行ってきました。(241110 神奈川県民ホール 大ホール)

神奈川県民ホール

コンサート内容のネタバレです。ご注意ください。まだ 11/30 に京都公演があります。


◆アニメ劇伴コンサートと思ったら音声ドラマまで?

こういったアニメイベントは初体験。ブラスアンサンブルの劇伴コンサートが成立する作品は殆どない中、先駆的なイベント形式で第8回まで実現してきた人気の高さも凄いですが、なるほど、単なるコンサートではなかったのですね。その秘密は、感動するほどの演出の巧さにあることを思い知らされました。

想像してたのは、単なるブラスコンサートに声優の方が来て司会とちょっとトークくらいのイメージでしたが違いました。声優が司会進行するというより、ラジオドラマ的な感じで曲の使われた場面の独自エピソードが演じられ、そこだけでもお得なのに、キレの良いブラス演奏が大編成、時にはトランペットとユーフォニアムのデュエットなど、飽きさせない構成で「プログレッシブ!ウインド・オーケストラ」が演奏。さらに!

◆中盤のトークショーの内容が貴重

キービジュアル (公式サイトより)

中盤ではトークショーコーナーとして声優4人、黒沢ともよ(黄前久美子 役)安済知佳(高坂麗奈 役)朝井彩加(加藤葉月 役)豊田萌絵(川島緑輝 役)と、指揮者の大和田雅洋、これまで音源を仕切られてきた音楽ディレクターの鳥越濯が登場し当時の裏話がたっぷり。

指揮者の方は第1期で初めて劇伴指揮を依頼される際、学校側に10名規模の錚々たるメインスタッフが来訪されたそうで、自分なんかでいいのですかといったやりとりから、初のテレビ放映でその結果が流れ、エンドクレジットで名前を見て感激した話や、1期から3期になるほど、元々ブラス曲としては高難度の松田彬人による楽曲がどんどん進化して、3期のは変拍子を変拍子と聞こえないように演奏する高度な楽曲に苦労した、など作り手側のお話が聞けて、改めて1期からの楽曲をきちんと時系列で聴いてみないと、と決意しました。

音楽ディレクターの方は、おそらくは楽曲を誰に依頼するかの検討から、作曲・編曲者としてこの作品を支えた松田彬人と相談しつつ、どのような場面にどんな感じの曲をといった楽曲の方向性を依頼したり上がりの調整をされたのだと思いますが、収録時の演奏者への場面に合わせたニュアンスの指示を出して仕上げていく役割も。そしてなんと、生の演奏をしてきたメンバーを呼んでそれを実演するという豪華なコーナーが。

◆とても上手い演奏とそこそこ上手い演奏の実演

トランペット女性奏者の方が、「夕暮れの3年生直前の2月の演奏で先輩を安心させる場面」と、「一年生で入学して来て経験者ですという子にちょっとこの譜面吹いてみてという初見の演奏」をお題として出し、それぞれを弾き分けるという演出。見事にお題通りの演奏をして拍手喝采でした。昼の部はユーフォニアムでやったそうですが、夜は玲奈のあの美しい音色でした。声優陣からも、楽器なのに演技してる!という声が上がってましたが、眼福ならぬ耳福でした。

アンサンブルやソロでも顕著でしたが、オーボエ、フルート、クラリネット、トランペット、ユーフォニアムなどのソリストは本当にめちゃ上手でした。

◆一番感動したコンクール場面

ゴールド金賞受賞記念グッズ付きチケットでもらった
劇中使用楽譜<久美子Ver.>&全国大会金賞受賞写真&A4ダブルポケットクリアファイル

そんな演奏の終盤、一番感動したのは北宇治高校吹奏楽部の全国大会での場面。出演前の音声ドラマが始まり、部長の演説と気合い入れに舞台の団員も参加。鳥肌ものでした。

影アナによる学校紹介から指揮者が入り、という流れで、まるで我々がコンクールの会場にいるかの錯覚に襲われる中、緊張に満ちた演奏が始まり、課題曲と自由曲の演奏。物語で何度も練習してきたあのソリや、各パートの演奏が物語を思い出させ、追体験させてくれました。

あの譜面立てのシートもつけて、メンバー構成もアニメ本編と同じ楽器ごとの人数に合わせての演奏だった、とその後のトークで解説。

ここで驚くべきなのは、コンサートのジャンルによる作法の違いと、この場面固有の例外対応クラシック系は第一楽章などの曲間では拍手せず、ポップス、ロック系は曲間で拍手が基本。ジャズ、フュージョン系は曲間は同様ですが、曲の最中でも良いソロやソリがあると拍手という作法があり、どうやらブラス系はジャズ系と同じ文化のようでした。

ところが、このコンクール場面に限り、自由曲と課題曲はしっかり切れてるのに誰も拍手しません。ファンたるもの、コンクールの場面ではこういう拍手は入らないのが正しいということを暗黙のうちにシンクロしているのが凄いですね。これぞアニメ文化

◆TRUE による主題歌と裏話

冒頭とラストには主題歌を担当した TRUE による歌唱がブラスアンサンブルの生演奏でフルコーラス。トークでも明かされてましたが、彼女は歌詞の作成のため、声優メンバーにも知らされてない結末までのストーリーをすべて知っていたと。その楽曲は最終回のエピローグのあの場面に向けた心情とシンクロしているそうで、歌詞をきちんと確認してみないといけませんね。

◆ゲスト声優4人と黄前久美子の魅力

声優は一年生からの仲良し4人組。いわゆる北宇治カルテット。4人の会話の丁々発止や、進行役の豊田萌絵へのツッコミとフォローネタ支援など、トークアンサンブル状態で裏話を適度に盛り込みながらのテンポ良いトークショーの楽しさ。ウェブラジオをやってる場数もあるのでしょうが、今時の人気声優は演技のみならず芸人ぶりの高さも改めて凄いなと。

この作品の魅力の1つが、3年時に部長となったユーフォニアムの黄前久美子役の黒沢ともよの演技。主人公ですが、ちょっとしっかりしてなくて、流されやすく、めんどくさ〜いオーラを出しながら、やることはちゃんとやり熱い思いを持っていて、時々驚くべき行動力を示して体当たりで突っ込んで行きます。

そんな演技をしてくれた黒沢のあの声こそがユーフォニアムという作品の個人的なイメージなのですが、トークショーでの彼女の声は結構違っていて、別人のようなあの演技がいかに凄いかを改めて感じました。音声ドラマをやるとそこに久美子がいます。声優凄い!という経験がまた一つ増えました。

そんな久美子は年度ごとにどんどん成長し、プロを目指す要求水準のバカ高い相棒の玲奈に引きづられるように依存してきたのを乗り越え、いつも刺激を受けて来た玲奈をむしろ上手く乗せる技にまで長け指導者としての資質を開花させるに至る、という変化が魅力です。他に誰もいないくらいユニークなあのまったりとしつつも凛とした黒沢ともよの演じ分けの凄さを思い知らされた一夜でもありました。改めて第1期から見直したいですね。

◆京都公演の配信と来年10周年

今回のステージは収録してますとのアナウンスがありましたが、10周年の特典ディスクになるようですね。11/30 の京都公演の夜の部はネット配信もあるそうです。詳しくはこちら。

2025年は本シリーズも10周年で、3/15、16 にパシフィコ横浜で大規模なイベントが行われるそうですが、豪華な内容ですね。行きたいな。

最後の挨拶で、今回のような定期演奏会を続けて欲しいとのエールを声優陣からも送っていて、ほんとに続くと良いですね。旧作品も大事にする京都アニメーションですから、この先もいろいろファンサービスがあるのを楽しみにしてます。

◆本イベントに関する公式情報


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