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【壊れたセカイと歌えないミク】 「プロセカ」や初音ミクに詳しくない人は楽しめたのか?
ボカロにはさほど詳しくないが初音ミクなどのいくつかの楽曲は知っている、「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」(プロセカ) というゲームは知らず、新作アニメとして楽しめたのかという視点での感想です。
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●ボカロやそのゲームに詳しくないアニメ好きに楽しめたのか?
結論から言うと、新規に作られた楽曲のクォリティの高さと、その複数あるライブシーンは音楽的にも楽しめ、物語としてのカタルシスも相まって目頭がジーンと来る感じ。キャラや多様なセカイの美しさも魅力的でした。よくあるライブイベントを映画にしたものではなく、ちゃんとした大きな物語です。
一方、世界観と登場キャラの大半はプロセカのゲームがベースですので、何の予備知識もなく観たら、ゲームの登場人物 (高校生男女) とそのバンドや舞台活動するユニットが複数出てきて、そこに初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、MEIKO、KAITO らの VIRTUAL SINGER も複数ずつ出てきてということで、覚えきれない感じはありました。
しかし、登場人物たちの人間ドラマが展開するところは、音楽や舞台の創作活動にまつわる楽しさはあり、それら複数のバンドやユニットに共通して係わる物語を動かす初音ミクと、カタルシスに至る音楽と演出の出来の良さがあり、トータルでの印象として「気持ちの良い映画だったなぁ」という感じです。
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●監督は事前にキャラ情報を確認してから観て欲しいと言っていた
帰宅してパンフのインタビューを読んで知りましたが、「劇場に足を運ばれる皆さんには、ぜひキャラのことをよく知ってから観ていただければと思うのです」「(前略) 100分ちょっとの尺でそこまで盛り込むのは、さすがに厳しかったです。この子はどのユニットに属していて、こういう環境にいるというような紹介的なシーンも省かせてもらいました。その分、他のシーンを作り込んでいます。」とのこと。「早く言ってよー」という感じ。
パンフの前半はそんなキャラ紹介がきちんとグループごとにされているので、前半を読んでから映画を観るか、公式サイトのキャラコーナーだけチェックしてから観ることをお勧めします。
●初音ミクの声と歌の存在感を再認識
バンドやユニットの歌声、他の人気 VIRTUAL SINGER が歌う中、初音ミクの歌は別格の存在感と個性、そして聴いていて気持ち良くなる不思議な魅力があることをあらためて感じました。声だけでなくあの姿や色彩、キャラクター性も含めた存在感もあるのでしょうけれど、声のみでも凄い。
そんな初音ミクと超絶打ち込みを人間が演奏しているライブ音源にハマって、手に入る限りの音源を買いあさった時期もありましたが、最近の曲はご無沙汰してます。しかし、OP、ED などの楽曲を聴くとその進化ぶりには新たな興味をかき立てられたので、また聴く機会が増えそうです。
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●OP・ED・挿入歌の制作陣と作り込みが豪華
ボカロ楽曲は、超人気アーティストが提供しているだけに、楽曲もアレンジもサラウンド音響作りもハイレベルで、特に後半に出てくる多数の楽曲の多様性と凝り具合は半端なく、純粋に音楽としてとても楽しめました。エンドロールに至っては凝り過ぎなくらい気合が入っており、流石という感じ。冒頭からテーマともなる初音ミクの歌も良い出来。
あ、YouTube にて 2ch で聴くと懲り具合の複雑さはかなり軽減してしまうのですね。音響の良い劇場を選んで、ど真ん中の席で聴くと立体感と細かい楽器や音の配置が凄いですよ。私はグランドシネマサンシャインの BESTIA 部屋のほぼ中央で体験しました。
OP主題歌「はじまりの未来」歌唱: 初音ミ、作詞・作曲・編曲: 40mP x sasakure.UK
ED 主題歌「Worlders」歌唱: (出演者大半)、作詞・作曲: じん、編曲: TeddyLoid
ユニット楽曲&バーチャル・シンガー楽曲多数 作詞・作曲: DECO*27、編曲: (多数)
詳しくは以下
●スタッフが好みの路線かも
脚本の米内山陽子は『スキップとローファー』『パリピ孔明』『魔法使いの嫁 SEASON2』『ゆびさきと恋々』『思い、思われ、ふり、ふられ』の方、キャラクターデザイン/総作画監督の秋山有希は『色づく世界の明日から』と『白い砂の赤アトープ』のキャラデザ・総作画監督、『有頂天家族2』の総作画監督、『SHIROBAKO』『Charlotte』『Fairy gone』などの作画監督の方。
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●最後に
複数のバンドやユニットのメンバーたちのドラマがあり、それぞれ異なるスタイルでの音楽や活動、衣装や色彩の傾向も多彩で、それら異なるチームによるドラマが同時進行しつつ、全体として大きなウネリに収斂していく作りと、カタルシスに至る流れは、ちょっとクロード・ルルーシュ監督の名作『愛と哀しみのボレロ』を思わせる流れでもあり、好みのスタイルだなと思いました。この作品も初見の時は掴み切れず、4つの異なる場所と人々のお話が同時進行しつつ世代交代までしてラストのカタルシスを迎えるのでさらに複雑でしたが、何度か観ることで理解が深まりました。もう一度観ると理解が深まりそうですね。
公式サイト
予告篇