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友よ。母よ。どうかあなたを飯炊き女にしないで。

相手の頭の中を想像して、こう思うだろうなんて推測することは、バカげている

友人がパートナーに対して、自分への配慮を求めた際にこう言われたそうだ。

友人の夫婦間のやり取りを聞きながら、冒頭の主張に驚きつつ、夫側の言い分にも理解はできると思った。

思いやり

他人の気持ちを理解し、その人の立場や状況に配慮する心の持ち方を指す言葉である。他人の感情や状況を尊重し、その人が困難や苦痛を感じているときに援助や励ましを提供する行動も含まれる。

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日本人、とりわけ日本人の女性はこの、他の人の気持ちを理解し、配慮することが得意だと言われている。

だが、しかし、それだって危険な思い込みである可能性は否定できない。特別な能力者でもない限り、都合のいい解釈だけを繰り返すことは確かに馬鹿げているとも言える。

日々、家族や親族のために衣食住を整え、1年365日、三食の食事に全責任を課せられ、それに追われる自分の人生は、まさに「飯炊き女」だと友は絶望しているのだ。

飯炊き女

1 飯炊きとして雇われている女。 2 江戸時代、大坂の曽根崎新地などの泊まり茶屋で、酒食の給仕をするとともに遊女を兼ねた女。

コトバンク

本来の「飯炊き女」なら雇われているんだからまだいい。お給金がある。現代の飯炊き女である主婦たちは、どんなに飯を炊いても給料はない。

人様に出す「飯を炊く」という立派な技術者の総称として使われているわけもなく、ただ無給で食事の支度(計画、買い物、調理、片付けも含む一連の労働)を強いられる女性を指し、自分を卑下してこう呼ぶ。

存在を軽視され、周囲からの配慮を感じられない絶望の中にあるとき、女は自分を「飯炊き女」だと感じる。

前にも自分を「飯炊き女」だと言った人をたぬきちは知っている。

母だ

当時は、母にとって、本当に辛い時期であったと思う。在宅で祖母(母の実母)の介護をし、父は体調を崩し無職に。それでも娘らの学費を工面せねばならず、長時間パートタイムワークに出ていた。

あの頃の母は、一旦夕食を作りに帰宅し、自分は食事をせず夜間のパートに行き、帰宅後食事をしていたと思う。

時が経ち、色々な問題が解決した頃、母がふとたぬきちにこう漏らした。

「娘が複数いながら、誰一人として代わりにご飯を作りましょうと言い出す者もおらず、私は飯炊き女じゃないと苦しみ、孤独だった」と。

それを聞いたたぬきちは本当に驚いた。母がそんな風に考え、苦しんでいるとは全く気づいていなかったから。

幼少期から、家の手伝いをし、食事の用意以外の家事は一通りできた。洗濯掃除エトセトラ、、、しかし補助では無い、主体的に食事を準備、調理したことはその当時なかった。

母から、「食事を用意して」と言われたことがなく、それどころか当時の私は、「食事は娘の不可侵領域」だとさえ思っていた。

母の顔色を伺い、できるだけ配慮して行動しているつもりであった、たぬきちでさえ、母の脳内を正確に推測することはできなかった。

ところで、たぬきちさん、これまでまるで部外者のような語り口で話してますけど、あなたは「飯炊き女」ではないと?

そう。幸いにも(!)たぬきちは飯炊き女ではない。なぜなら、たぬきちは「飯炊き女」になれる程の能力がない。

「飯炊き」に対する情熱と技術力。

たぬきちは、家事の中でも食事作りが好きな方ではなく、美味しく作ることもできない。子どもらも「お父さんが作った食事の方が美味しい」と公言する。

中食(惣菜や弁当)を頻繁に利用するし、外食も多い。作る場合も簡易なもので、考える余地のないほど献立のレパートリーも少ない。

私だって、本当は中食、外食を多用したいけれど、そういった環境にない

友人はそう言う。確かにそうだ。なりたくて飯炊き女になっている人は少数派だと思う。

「この状況は、友人自身にも責任がある」などとは1分足りともも思わないが、「飯炊き女」になれる技術力が災いしていることは付け加えたい。

また、たぬきちの母の場合、「私への関心、配慮があるならば、この苦しみに気づかない訳がない。気づいていないということは、夫は愚か、娘たちでさえも私には関心がないからだ」そう結論づけて諦めていたように思う。

母も、私たち娘の頭の中を正しく推測できていなかった悲劇だ。

一言、キレずに、絶望せずに、ただ他の用事を伝える時と同様に「毎食、食事の用意をすることは難しい。せめて○曜日の晚ご飯はあなたた達で用意して欲しい」

そう言ってくれていれば、「飯炊き女」ほどの絶望を感じずにいたのではないか。

それでも、適切に助けを求め、明確な協力を求めても、家族から手助けを得られない人もいると思う。

主婦や女性に限らず、そういう立場を強いられる男性や児童もいると聞く。

誰かが負わねばならぬとは言え、家庭内で搾取され、虐待と言える状況なら、一刻も早く逃げて欲しいし、支援団体に相談する必要もあるかもしれない。

どうか、この世界のどこかで自分を「飯炊き」だと卑下し、絶望している方に、今すぐ協力があることを切に願う。

友人とありしひの母に捧ぎます。


そこんとこヨロシク


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はたらくたぬきち
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