書いて手離れる
noteを始めた頃、今から1年ほど前にあたるが、その頃にはまだ、思春期のうちに溜めこんで拗らせていた「恐怖や哀しみ、混乱」が心と身体に染み付いていた。
むしろ、その仄暗い経験と感情があるからこそ、今の自分という個性があるとさえ思っていた。
影があるってやつ?
思春期なんて、もう、とうの昔、幾星霜も前のことなのに、心にも、身体にも当時の状況が貯蔵されていた。
その仄暗い感情をいつでも取り出して、眺めては、時空を超えて追体験するという悪趣味っぷり。そんな1人SMやりたいわけがなく。ひょんな拍子に勝手に出てくる。
本当はnoteも毎日書ければいいなと思っているが、そうもいかない。心が動いた時だけ書くことができる。
この仄暗い、ドス暗い感情も、制作のタネとなる。
ひどいくせ毛が、嘲笑の的となり、罵倒や嫌がらせを受けていたあの頃。
誰かが自分を見て笑っているのではないかと思うと、怖くて顔をあげれない。そうして、下を向いていることが多くなり、身体も小さく折りたたむように猫背に。
そんな姿勢自体に、仄暗い経験が記録されている。そんな感じ。
家庭の中では、母と祖母がよく衝突しており、2人の大人から、それぞれの話を聞いていた。
正直楽しい話ではない。そういうわけで多感な思春期を鬱々とこなし、あっという間に大人になってしまったという。
あの頃に感じた恐怖、哀しみ、混乱については、環境、状況の変化、時間の流れによって、直接対峙することはなくなったが、心と身体にはいつもべっとり纏わりついていた。
生来、自分の感情を口に出して伝えることが難しい性分で、誰かに伝えることもしてこなかった。「言ってどうする」そういう思いもあった。
こうやって文章を書くようになったのも、ここ3年ほどの話で、「子どもの頃から書くのが好きで、作文が得意だった」ということは全くなく、むしろ作文の類は嫌いで苦手だったものだから、こうして文章に書くこともしてこなかった。
自分だけで、ただただしっかり握りしめてきた。大事でもなんでもないのに。
それが、どういう風の吹き回しか、ある日突然に、ウェブ上で文章を公開することを始めた。
本当は楽しいことを日々書いて発信したいのだけれど、仄暗い感情に心は動きやすく、心が動けば、「書こうか」となるわけで。
中年になって初めて、ぎゅっと握りしめて誰にも見せなかった感情を、こうして文章にして世の中にそっと公開した。
するとこれが不思議なもので、書くという作業は、堅く握った指を押し広げて、そこにあった小さな感情を取り出す、自分の身から離す作業だった。
そうやって、引き離した感情をウェブという大海に流し入れ、そっと放していた。
でも、それに気づいたのは、実は最近。書いた当初は、手離れたことに気づいていなかった。
「さあ、今日は何か書けるかな?」
そう日課のように考えている。そして、いつものように仄暗い方にも頭を巡らすが、どうも何も浮かばない。
「ありゃ。いなくなってる」
べっとりまとわりついて、いつも一緒にいたあの感情たちがいない。経験は記憶として、確かにいつもの場所にいるのに、「感情」が発露しない。
先日、音声配信の収録時に、パートナーのシャー子さんから、「よく忙しい中で、書く時間を確保できているね」と言われて、反射的に、「書くこと自体がストレス解消だからね」と答えていた。
咄嗟にそう答えたものの、「どうしてそんな風に言ったんだろ?」とその後も自分で不思議がっていた。
書くことがなんでストレス解消に?自分で言っといて、理解ができていない。
脳は、投げかけた質問について、永遠に答えを探していると聞いたことがある。意識下では、質問したことすら忘れているようでも無意識下では、ずっと探し続けている。
そうして、答えのない質問、例えば「私ってどうして何をしても上手くいかないの!?」とかそういった明確な答えが出ない質問を自分に投げかけると、脳はずっと答えを探し続け、更には新しい質問が日々増産されるという状況になるそうだ。
おかげさんで、ずっと脳は答えを探し続けてくれていて、ある瞬間にぽんっと答えが浮かんだ。
「書いたから、ストレスになっている感情が手離れた。そうしてそのストレスが解消したってわけやね」
なんて、電車に揺られながら、1人納得する。
今はまだ、辛くて書くことすらできない。そんな思いの渦中の方も多いと思う。
その様な方は無理して書く必要はないので、いつか落ち着いた頃に、誰に見せるでもなくても、書き出してもいいかもしれません。
全てを赤裸々に書くことも、書きたくないことまで書く必要はありません。「怖かった」その一言でも感情を自分から引き離しています。
そうして手離れる日がきっと来るはずです。
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