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あつすぎるぜ。運動会。

本日ハ晴天ナリ。気温27度。

27度?嘘だ。体感はもっと暑かった。40度くらいあった。

運動場を這うようにしていた、たぬきちは天からは炙られ、地表からも照り返されていた。

日陰のない運動場で、稼動し続けたスマホは運動会中盤で悲鳴をあげた。

「⚠️高温注意 iPhoneの本体温度が下がるまでお待ちください」

熱中症により倒れた保護者が救急車で搬送される一幕も。

暑すぎる。

唯一、テントの下で椅子に座って競技を観覧する来賓達からは、「2-0ですか」「ダルビッシュ打たれましたか」なんて聞こえて来るもんだから、苦虫を噛み潰すしかない。

PTA新聞委員のたぬきちは、委員の腕章をつけ、立ち入り禁止の運動場のトラックそばから撮影していた。

いくら許された立場とはいえ、トラック周りをうろうろするのは、子どもの演技の邪魔になるし、突っ立ったままだと、「邪魔だ!」と保護者席からも怒られるしで、高温に熱せられた運動場を這うようにじっとしていた。

目を凝らすと、同じように地表で隠密活動中の同志達が見える。

幸運にも、面倒なことも率先して引き受けるような人ばかりで、不満なくPTA活動できている。

途中でスマホが使えなくなったため、慌てて夫のスマホを借りて撮影して気づいた。

どうやら、自分のスマホの性能が低い。

3年前に機種変更をしたきり、普段の使用に不便はない(充電消費は早いが)、3年もたてば、スペックは随分上がってるのだろう。

新聞委員になって、せっかく誰よりも子ども達の近くで撮影できる機会を得ているのに、撮れた写真の画質が悪いとは。

そんな後悔と心配を抱えながら、なんとか自分の役割を務める。

プログラムの最後は、小学校最後の運動会になる6年生。「ワンチーム」をテーマに、ダンスと組体操を合わせた演技。

例年なら、2学期序盤から運動会の練習に入るのが、暑さのせいで運動場が使用できない日が続き、練習期間が短かったそうだ。

どの学年も、短い期間での訓練、準備で子どもらにとっても、先生方にとっても、大変だったことと思う。

その中でも、6年生の取組は、ダンスを覚える難しさとは違う、困難があっただろう。

ブリッジ、倒立などの体の使い方の難しい動きや、組体操のように力や協力が必要な演技は、個人の能力差が顕著で、苦しんだ子も多かったに違いない。

温厚だと評判の6年担任陣も練習期間はよく怒っていたという話も聞いていた。

10月とは思えない夏のような陽射しの下で、もう子どもではないけれど、まだ大人でもない、しなやかに成長を続ける彼らが作り上げたそれは、太陽以上に熱かった。

「凄いね」メジャーリーグに気を取られていた来賓さまさまも、6年生の演技に感嘆していた。

小学校に集まった皆がワンチームになった時間だった。

集合場所を決めていたわけではないのに、運動場の各所に散っていた委員同志がトボトボと本部テント裏に帰って来た。

皆、汗だくで化粧ははげ落ち、真っ赤な顔をしていた。互いに顔を見合わせ、それぞれの奮闘ぶりを理解し合う。

「途中、スマホが熱でダメになって、我が子の写真撮れなかった」階段に座り込んで、1年生の保護者委員が言う。

初めての運動会で残念すぎると、皆弱々しく笑った。

帰宅後、スマホの写真フォルダを確認する。ほとんどが使いものにならない写真ばかり。

その中でも、なんとか使えそうな写真をよりすぐって共有フォルダに投稿する。

しばらくして、同志たちからも、「なんとか撮れてたものです」と遠慮がちなコメント共に珠玉の数枚が投稿される。

1人では、どうしようもない写真ばかりだったが、委員みんなの隠密活動の成果が集結し、素人ながらとても素敵な写真が集まった。

撮影するのに必死だった運動会の1シーン1シーンをもう一度振り返り、とても胸が熱くなった。

まったく。
熱すぎるぜ。運動会。


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