「キャビン」気軽に楽しい軽食感覚ホラー【映画感想】

前置き


映画館が苦手だ。
まず家から出て電車乗って劇場まで行くのがめんどくさいし、知らない人がいっぱいいるし。
それだけでもハードル高なのに、観客ガチャもある。近くの席にマナー違反者がいれば映画どころじゃない。1,800円も払ってるのに!
しかも私は頭痛持ちで酔いやすく、映画を見てるとずっと見上げる姿勢がよくないのか体調が悪くなりがち。そんな諸々で映画館からは縁遠く生きてきた。

ところがですよ。時の流れは素晴らしき発明を生み出した。動画サブスクの登場よ。これなら月額1,000円で家で映画が見放題、途中でトイレ行ってもいいし具合が悪くなれば中断もできる。上映中にスマホを光らす不逞の輩はいない。
というわけで、Netflixに加入したわたくしはこのところ以前に比べてよく映画を鑑賞するようになりまして。中からいくつかの作品についてサクッと感想を呟いておきたいなと思いましたので書きました。前置きおわり。

本題

キャビン(The Cabin in the woods)
2012年 アメリカ

ジャンルとしてはホラー。でもたぶん創ってる人はコメディとして、ホラー映画を愛を込めて笑い飛ばすつもりで創ったと想像いたします。アンチホラーと言えばいいのか。でもすごく楽しい映画だよ。

真面目な女性主人公、その友達の陽キャ女子、その陽キャ彼氏、彼氏の友達の真面目秀才くん、憎めないヤク中。メインキャラはこの五名。
見事にホラー映画のテンプレキャラなんですが、それもそのはず、彼女らはそれゆえ「ホラー映画の登場キャラクター」として「選ばれた」のです。
選んだのは、怪しくも陽気な研究機関。彼らは「古きもの」と呼ばれる太古の神々の眠りを守るため、その生け贄としてこうして選んだ若者達を死に追いやっているのでした。

古きもの、というのはクトゥルフ神話の神々のこと。神々が目覚めると人類が終わっちゃうが、時々こうやって生け贄を捧げることで眠ってもらっている。この機関は世界各地に支部があり、それぞれの地域でこの儀式を行っている。中には日本支部もあり今まで失敗なしの無敵チームなんだとか。
生け贄たちを襲うのはほんまもんの化け物で、それらは神々から貸してもらっているらしい。
神々はただ生け贄が死ぬだけじゃなく、エンタメも求めていらっしゃるようで。生け贄たちが苦しみ、あがき、もがく様を楽しまれているご様子。性格悪いわねえ、と思うけど、実はそれはこの映画を楽しんでいる我々の姿そのものなのだった。

あんまり映画の展開について色々語っちゃうとそれはただのネタバレになっちゃうので割愛するけど、なんやかんやあって最後に生き残った主人公が機関の施設まで辿り着く。そこで見たのは化け物たちを収容した倉庫。
タイトル「キャビン」というのは原題では「The Cabin in the woods」となっているので、森の奥にある別荘というこの惨劇の舞台を指しているんだけど、一方で「客室」という意味もある。化け物たちはみんな狭いエレベーター内に収容されているので、「キャビン」には「化け物たちを詰め込んだ客室」の意味もあるのかもしれない。

そしてここがこの映画最大のテンションぶち上げポイントなんだけど、機関の武装部隊に追い詰められた主人公はとっさに大事そうな赤いボタンを押す。押すなよ押すなよって感じの主張の強いボタン。それは押すよね。
そうしたら……ウフフ……チーンというエレベーター到着音とともに、廊下の両側に並んだキャビンから……ドバッと化け物たちが吐き出されてきて部隊は為す術もなく襲われ血みどろの阿鼻叫喚となるのだった! もうここ最高。
そのボタンなんのためにあんの?! めっちゃ面白い。「危険な化け物たちを一斉にこちらの領域に解き放つボタン」、用途が「追い詰められた主人公がイチかバチかで押す」以外に見当たらなくて、このシーン見た瞬間これが好きな映画リストに入った。
施設を設計した人はもしかしてこの儀式に疑問を持っていて、こんなこともあろうかと設置しておいたのかもなあ……。いつかこのボタンが押される日が来たら、生け贄が死ぬか、我々が死ぬか、人類が滅ぶか、それは運命が決めることだって思って……。
そんなことないか。

最後に


というわけでサクッと楽しめるちょうどいいホラーでした。何か観たいけど重いものはちょっとなあ、というときにおすすめ。気軽につまめるよ。


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