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山の手の側。時速5キロメートル。

東京滞在3日目。
10時ごろに目を覚まし身支度をする。
今日も今日とて明確な目的はない。

寝て起きただけで素晴らしいアイデアが浮かぶこともなく、昨日の晩に思い立った、山手線沿いをひたすら歩くというのをそのまま実行することにした。

ゲストハウスのある浅草から一番近い山手線の駅は上野だ。
体力を温存するために、そこまでは電車で行く。3日目ともなると浅草線と銀座線の入り口が違うというトラップにはもうかからない。

駅の改札まで来て、何やら腰回りに違和感を感じた。なんか熱いしゴワゴワすると思ったら、パジャマの上からズボンを履いていたらしい。ドミトリーのベッドは狭く、寝転がりながら着替えていたので気づかなかった。
慌ててトイレで着替える。


上野に着いた。
線路が見える位置まで行き、財布から100円を取り出してコイントスをする。表が出たので右に行くことにした。

少し歩くと上野動物園があった。近くまで行くとクラシックな音色が聞こえてくる。どうやら路上で演奏会をやっているらしい。

折角なので一曲聴いていくことにした。
演目はとなりのトトロメドレー。金管楽器の5重奏らしく、ベースとなる音色は似ているけれど、それぞれの楽器が音域や音色を補完し合っていて聴いてて心地が良い。
締めの曲は「さんぽ」だった。旅の出発にはぴったりだ。

気を取り直してさんぽを再開する前に、Spotifyで聴く音楽もジブリに変える。
昨日はピアノ調だったけど、今はまだ朝なのでジャズ調のアルバムを選んだ。

上野公園の外周を歩いていると、森の中で老人の集団が整列しているのを見かけた。彼らの近くでは比較的若そうな人が段ボール箱を運んでおり、中には大量のバナナが詰め込まれている。

結局なんなのかわからなかったが、配給か何かだろうか。
配給ってバナナなんだ。確かに栄養価高いし、美味しいし、携帯しやすいし最適かもしれない。
でも、なんか、おにぎりと豚汁であって欲しかった。初めて配給をもらう人も、あぁ、バナナなんだ…。って思っているはずだ。

ーーこんな偉すぎる活動に、自分みたいな奴が口を出してはいけない。

バナナを目にしてなんかお腹が減ってきたので、セブンイレブンでカレーパンとツナマヨおにぎりを買った。

セブンのカレーパンは食うたびに美味すぎてびっくりする。150円で幸せは買えます。


鶯谷を過ぎて日暮里まできた。
特に見るものもなく、住宅街に入っている。
山手線のすぐ近くだとしても住宅街は普通にあるというのが、当たり前なんだけど少し意外でもあった。
集合住宅が並び、公園で子供が遊び、いつからあるのか分からない今時流行らなそうな店をたまに見かける。

そう思って歩いていくと、いつの間にかラブホ街に迷い込んでいた。
こういうのは都会でも同じなんだな。

日暮里を過ぎて、西日暮里に来た。
方角など何もわかっていなかったが、手持ちの情報から推理するにどうやら西に進んでいたらしい。
西日暮里にも、神保町で見たものと同じ形式の、箱ごとにオーナーが違う本屋があるという張り紙を見つけたが営業時間外だった。残念。


駒込についた。
ここには六義園という庭園があるらしい。
整えられた自然は大好物なので、寄っていくことにする。

無料のコインロッカーがあったので荷物を入れる。
そういえば、宿にリュックを置いてくれば良かったとここで気づいた。パソコンが入っているのでそこそこ重い。5kg以上はあるだろう。
基本的にリュックに普段よく使うものを全部詰めているので、どんな時も持ち歩くのが癖になっている。ただ財布と携帯さえあればなんとかなるのが現代だ。

庭園はとても良かった。一面の緑を見ることでしか得られない感情がある。
ベンチで足を休めている間に10箇所くらい蚊に刺されたが、いつものことなので気にしない。座りながらnoteで知らない人の日記を読んでいた。
珍しく好きな文章を書く人を見つけたので気分が良い。また後で他の日記も読んでみよう。


六義園では思ったより長居してしまった。
再度背負ったリュックの重みを感じ、一瞬駅のコインロッカーに預けようか迷ったが取りに戻る方が面倒だと判断した。

大塚駅に向かう途中、カピカピに干からびたエロ本のページが道に落ちていた。本当にあるんだ!と思った。
【むかしむかし、エロ本はよく道に捨てられており、子供は宝を探しによく探検に出かけたそうな。】
自分が子供の頃ですら、語り継がれた神話のような話だったのにエロ本がコンビニから消えた現代で立ち合えるなんて、とても貴重な体験な気がする。
記念に写真を撮りたかったが、マダムが近くで井戸端会議をしていたので無理だった。


大塚駅ではどら焼きをその場で焼いているお店があったので、食べながら池袋まで向かった。

池袋はこれまで通ったどの駅よりも栄えている。人がうじゃうじゃいて、よさこい祭りみたいなものをやっていた。
駅周辺までくると、ゲーセンミカドを見つけた。なんか聴いたことある!と思って早速入店する。

レトロゲームがたくさん置いてあり、アングラな雰囲気がしてとても良い空間だった。スト2、ファイナルファイト、怒首領蜂、魔界村などなど、自分より一世代前を風靡した名作が今なお現役で稼働している。
魔界村をプレイしたかったが先客がいたので諦める。

何か他にないかなと探すと隅の方に脱衣麻雀があった。噂には聴いたことがあるものの、こいつは一体なんなのか実態を知らないなと思って100円を入れてみる。
女の子と1体1で麻雀が始まる。システムは現代の雀魂のように優しくなく、リーチもロンも自分で申告しないといけない。
操作がよくわからずミスを連発してしまったが、なんとか1人倒すことができた。するといきなりお色気シーンに移り、女の子はあられも無い姿になって退場する。
この時代は乳首が出てても良いんだなと思った。
次の女の子との対戦に移ったが、すぐに混一色をアガられて負けた。


目白と高田馬場はあまり長く滞在していない。
切手の博物館という物があったので寄ってみたが、かなり小規模で15分くらいで一周できてしまった。

この辺でようやく気づき始めたが、駅周辺はともかくとして線路沿いはあまり栄えていない。理由は単純明快、線路が邪魔だからだ。道が限られているので発展しづらいのは当然のこと。

つまり、線路沿いに歩くのはあまり見る物がなくて面白くない。とはいえ、見たい物があるわけでもなく、わざわざ混雑している場所に行きたくも無いのでまぁいいか。


新大久保に着いた。
この辺はかなり人が多い。そして歩いている人の質が少し変わったようにも思う。

大久保公園ではつけ麺のフェスみたいな物がやっていた。
売春で有名らしいけど、まだ夜も暮れていないしそこまでいかがわしい雰囲気はない。

少し歩いて新宿に着く。こっちの方がよっぽどギラついているように感じる。地雷系ファッションに身を包んだ若者が床に座ってたむろしているのを見て、もしやと思い調べてみるとそこがトー横と呼ばれている場所だとわかっった。だいぶ規制が入ったと見た気がするがまだ居るんだな。

規制されたら彼らはどこにいくんだろうか。実家に入れないからここにいるんじゃないのか。ホームレスに対しても同じことを思ったりするが、深く同情してあげられるほど、自分は規制する側とされる側、両方の状況をわかっていない。


この辺から足がアラートを出し始めた。
歩数は40000歩を越えようとしている。

少し考えて、原宿までは歩くことにした。その次の駅の渋谷は初日に行ったから見なくてもいいかなという判断。

代々木は素通りし、原宿までたどり着く。時間は18時を回っていた。
休憩がてら晩飯にじゃんがらラーメンを啜りに行く。ウメハラが通い詰めていたという話を聞いて自分の中では聖地の1つだ。
しょっぱいスープが疲れた体に染み渡る。空腹もそうだが、疲労も最高の調味料だと思う。


電車に乗ってゲストハウスまで戻り、銭湯に行ってから帰ってきた。
疲れているから日記は軽くまとめて寝るつもりだったのに、1時間以上書き続けているし、3000字を超えている。

明日は帰る日だ。
横浜発のバスにしたので、ついでに観光していこう。
昼行便のバスで帰るから今日ほど散策はできないけど。


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