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歯車の人類学

働くことの人類学というポッドキャストを聴きながら2時間ほど散歩していた。
狩猟採集民、牧畜民、タンザニア商人、モン人など多様な働き方をしている人々の生活様式を人類学者の方々が解説してくれる。

牧畜民で仕事をするのは青年が殆どで30代後半くらいになると一日中仕事をせずに政治の話をして過ごすようになったり、横のつながりを広く作るようにして困っても何とか生きて行けるようなネットワークを形成していたり。

彼らの生き方は日本人の自分からすると羨ましい部分も多々あるが、苦労も絶えないだろう。
そもそも、それぞれの文化における通念が日本とは全く違うので、それに沿って形成された働き方も日本とは全然違うものになる。

日本の働き方も世界規模でみるとかなり特殊なはずだ。
日本人特有の性質として、他人に同調し、目立つのを避け、ルールやマナーを重んじるというのがよく挙げられる。

海外に出たことのない自分ですらまぁそうだろうなと思っているし、国民の殆ど全てが同様の価値観を抱いているんじゃないだろうか。

この国民性は犯罪率の低さにも繋がっているだろうし、表面的には良い方に機能することが多いんだろう。
ただ、外面を気にしてばかりいると内面がすり減っていく。
他人に同調して当たり障りのない行動ばかりとるというのは全体の利益に繋がるかもしれないが、当人にとってはハッキリと損だ。

この特性を持つ人々が集まって形成された働き方は、当然のこととして、日本人を効率よく扱えるように進化してゆく。
規律を守って会社の風土に同調することが正義とされ、会社が生み出すタスクをひたすら従順にこなす歯車や潤滑油になるよう仕向けられる。
日本人は無機物になるのが上手いから。

そうして個人が抑圧され、意思がもみ消され、流れに身を任せるのを続けた結果、縦社会が蔓延り、ハラスメントが横行し、労働時間が増えていったんだろう。

全て憶測で語っているのでエビデンスは何もないが、そんなに大きく外していない気がする。
最近ようやくこのような風潮も是正されつつあり、自分が働く会社ではあまり「日本らしい」嫌な部分は感じなくなった。

ただやはり、荒波に揉まれてきたおじさん世代の人間は何か異質なように思う。
良くも悪くも仕事が第一で、適当な人間が一人もいない。
与えられた役割をこなせないということを極端に忌避して自己犠牲してまで頑張ろうとする。仕事が終わらなければ残業するし、あまり人を頼ろうとしない。

会社でそんなことは当たり前だと思うかもしれないが、少なくともポッドキャストで語られていたどの人種も、一貫して働くことにそこまで執着していないと感じた。

例えばモン人は「戦うより逃げる」働き方を信条としている。日々の仕事をしながら常に他で働ける場所に目星をつけておく。
一つの居場所にこだわらず、何かが起きて働くことが難しくなったら今までの場所を捨てて親族を頼って移住するらしい。

他の人種も多様な働き方をしているが、主目的はより良い生活を送ることであって、仕事で成功することではない。

仕事なんぞもっと適当でいいじゃないか。
残業してるおじさんの前で働きたくないから帰ると言い、有給を使いきれずに燃やしているおじさんの前で何も予定ないけど休みたいから有給を取らなくてはいけない。

堂々と言おう。
週5で8時間も労働するなんて狂っていると。
全人類が声をあげれば法の方が合わせざるを得ないはずだ。

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