タクシードライバーだった過去 1
僕はタクシーに5年程乗っていました
お世話になったタクシー会社は地方ながら地元では有名で仕事として成り立つか不安な面もあったが必要な二種免許を取得し会社で新人教育を受けた
結構な規模の会社である事は間違いなく僕が所属した営業所だけでも80人以上のドライバーが在籍していました
タクシー業界は言わずもがな平均年齢も高くその会社でも平均55才〜56才、当時の僕は38才で転職して入社した事もありとにかく若くて会社のロールモデル的な側面も感じていました
言わずもがなタクシー業界というのはイメージが悪く"最後の墓場"だの"学がない人間の集まり"だの色々と言われています
しかしながらその会社は若くて未来ある人材を確保すべく賞与もあり売り上げが上がらなくても保証もあり世間の言われようとは少しギャップがありました
僕は最終的に2つの班の班長も任され更には組合の支部長という営業所のドライバーで1人しか担えない役回りにも任命されて毎日悪戦苦闘の日々を過ごしていました
タクシーの仕事はとにかく慣れるまで大変で最初のうちは精神的に追い込まれパニックになったりお客とトラブルになったりクレームが入ったりとただただ失望するのです
何せ昨日今日タクシーに乗り始めた人間が道案内しながら快適に迅速に接客しながら目的地に到着するのは至難の業なのです
僕も最初に乗せたお客の事は鮮明に覚えている
僕「どちらに参りましょうか?」
客「駅まで」
心 ・・・まじかよ、最短ルートがわからんぞ・・・
僕「どの道から参りましょうか?」
心 ・・頼む、道を教えてくれ!
客「あぁ、別に急いでないから運転手さんが好きな道でいいよ」
心 た・・助かったー
僕「では、広い道から行きます!」
と、こんな感じで・・かいた事の無い変な種類の汗をかきながら料金メーターを押しアクセルとブレーキとハンドリングに気を使いながらお客の顔色を伺いゲロを吐きそうなプレッシャーを勝手に感じながらお客を降ろした
最初の頃は自損事故も起こしたりもした
事故はもちろんプロとして駄目な事に間違いないがタクシーは特殊
何せ荷物を乗せて走るだけではない、人を乗せる
所属していた会社でも最初の半年〜一年でほとんどのドライバーが事故をする
ゾッとする話だが事実なのです
感情があり言葉を発する人はタクシーという特別な密室空間の中では新人ドライバーに苦痛も緊張も成長も与えてくれる
僕が最初にパニックに落ち入りかけたのは乗り始めてまだ5日目くらいの昼間、駅の近くで手を挙げたサラリーマン
携帯で話ながら乗り込み、、
客「駅!」
僕「ありがとうございます、どの道から参りましょうか?」
ドン!
心 えっ、、、
シートを蹴り上げられた
客「ええから早く出せや!」
僕「かしこまりました」
と、びっくりして動悸がしそうな感情の中無事にお送りした記憶がある
最初はこうゆう色んなお客を経験してドライバーとして成長していく、お客に合わせて声のトーンも運転もルートも即座に判断しないといけない
もちろん会社のルールやルーティンもあるがお客に押し付けるものでもない
例えばドアサービス、外でドライバーがお客を待ちドアを開けて座って頂いた後に確認して閉めるがこれも時と場合によってはやらない選択肢も持っておかないといけない
先程紹介したお客であれば携帯で話ながら乗ってきたその空気を大事にしなければならない
つまり、ドライバーがいる事でマイナスになる原因を作ってはならない
これはタクシーという仕事の本質を捉えてると考える
出来ればプラスになり降りて頂きたいがマイナスは駄目
洗車した綺麗な車、シートカバーの汚れやシワ、車内の湿度や温度、臭いに至るまでマイナスは許されない
そこに、はじめて接客態度や清潔感、お客の情報(仕草や声、身なりや時間の有無)などを捉え最適なルートや接客を提供しはじめて料金が頂ける
安全・安心・迅速はその手前の当たり前の話になる
そう考えるとネガティブな話はどうなんだ?となる
人生の最後の墓場と先輩ドライバーから聞いたが僕からすれば敷居が高いくらい難しい仕事だ
というか素晴らしい仕事ではないか?
確かに年配のお客に
「あんた、若そうなのにちゃんと就職活動もせず何でタクシーなの?」と言われた事もあった
非常に失礼な話だがその方は自分は年齢的に就職活動に苦労しても一生懸命探しているのに若いあなたが何故タクシーなんかに乗っているんだ?
と、楽をしていると思っているようだった(ちなみにめちゃくちゃ探して覚悟を決めての転職)
先述したように楽でも簡単でもない、確かに慣れれば事故もクレームもトラブルもなくなる
それでも長い拘束時間、理不尽なお客様、クレームやトラブル、更には世間体の低さや不安定な収入など
若い人は入らないし安定した仕事とも言えない、、
僕はといえば2年目以降は班長、支部長へと駆け上がりどん底を味わうことになるのでした
続く
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