音楽家の年収について、安定はあるのか、いくらを目指すのか、思うことを書くだけ。【生活と環境編】
長いタイトルの通り、ただ思うままに音楽家と年収について考えるだけの記事です。
記事を書いたきっかけ
20代後半で、音楽家として複業の結果、年収500-600万(月収40-50万)になり、音楽プロデューサーとして(クリエイターとして)、制作業務も請け負うようになった時、自分はこの先どうしていきたいのか、とふと考える時がありました。
あれだけ好きだった音楽や音楽制作ですが、なんとなく自己実現ができた気がした時、何かの糸が切れた、というような感覚になりました。
というよりも、好奇心が満たされてしまった、という感覚に近いかもしれません。もちろん楽曲制作自体は新しいことの連続ですが、それでもマンネリ化はしていきます。
僕は、もしかすると、音楽を通して、好奇心をみたしていたかっただけだったのかもしれないと思ったのが、今回の記事を書くきっかけです。
(このまま仕事として作曲を続けていって、実績を積んでいく人生になる、と思った時に、これからの大部分が同じようなことの繰り返しになると感じてしまったからか、原因はよくわかっていません)
性格や考え方、目標は本当に人によりけりで、十人十色だと思うなかで、
僕は有名になりたいという気持ちは1ミリもなく、クリエイティブを追求して、また新しいことに挑戦したい、そして毎年安定してしっかりとした金額を稼ぎたい、そして日本が好き、という人間なのだと気づきました。
安定してお金を稼ぐという問題
一方で現実問題として、音楽で稼ぐ人のネックにはやはり、どのようにして、安定してお金を稼ぐか、という問題があると思います。ライフステージが進めば進むほど顕著だと思います。
まず、安定する、ということは、①会社員として働く、あるいは、個人事業主や経営者の場合は、②ほぼ約束された固定客や依頼人がいる、③または需要が絶えない仕事である、のうちのどれかには当てはまる、ということになります。(もちろん、自分が求められるように自らを磨く努力は必要です)
会社員ケース
会社員で音楽的な業務をする、となると、
①ゲーム会社の社員となって、サウンドクリエイターとなる
②大手オーケストラ、劇団、レーベルなどの所属お抱え演奏家となって、演奏をする。
③音楽大学や専門学校などで教師となって、教鞭をとる
④プロダクションやメディア系社員として、A&R、音楽ディレクター、プロデューサーの仕事をする
⑤レコーディングや制作スタジオの社員として、エンジニアの仕事をする
の5パターンが考えられますでしょうか??(3と4に関しては音楽的な知見などがないとできない、という意味では音楽的な業務に当てはまるかなと思います。)
(僕もまだまだ知識不足で、上記以外にもいろいろとあるかもしれません。)
年収はというと、基本的にはおよそ200-1500万円です。
こうしてみると、どのような職種で行きたいのかによって、ほぼやるべきことが確定してきますね。
実演で安定した収入を得たいのなら、オーケストラ、劇団、音楽プロダクションの選考に通るしかありませんし、
制作で行きたいのであれば、ゲーム会社やスタジオ、
教育で行きたいのであれば、学校、
経営(マネジメント系)で行きたいのであれば、プロダクションやメディア系会社、の就職を成功させるしかありません。
逆に、通りさえすれば、ある程度は安泰といえますし、さらに逆にいえば、年収は1000万円あたりが限度になる、ということでもあります。(これをどう捉えるかは人によるところだと思います)
これに加えて、複業(副業)がOKのところであれば、さらに自分でいろいろと挑戦してみることができます。ただし、利益相反になる可能性のものはほぼ不可能ですので気をつけなくてはいけません。
音楽での稼ぎ方自体は色々とありますが、安定した収入という意味では、大きな会社組織の一員となって、仕事ができるかは一つの指標になりますね。そして、そのハードルはとてつもなく高いというのもネックです。重複しますがスキルや経験を磨くことは必須です。
個人事業主的、経営者的ケース
個人事業主、あるいは経営者的に、安定した収入を得ようとした時のことを考えてみます。
多くの実演家、作曲家、講師などは、委託契約を結ぶことが多いですよね。特筆すべきところは、やはり受注量、単価、などが低いと、安定しないということであり、逆に出来る人なら、より効率の良い収入形態を目指せる、ということではないでしょうか。その上で、安定について考察してみます。
②ほぼ約束された固定客や依頼人がいる/③需要が絶えない仕事である
音楽においては、2も3も表裏一体だと思いますので、一緒に考えます。
実演家でも、制作者でも、講師でも、または何かしらのコミュニティ経営者でも、固定客がいればある程度は安定しますね。もちろん単価によって顧客の絶対数は変わります。自分がどの分野でならよりよく働けるかを考えないといけないかもしれません。
また、個人単位の事業規模の場合、人付き合い力は要りますし、それによって売り上げも変動します。時間と単価で計算すれば自ずと年収も見えてくるのではないでしょうか。
はじめは企業の一員として働いたのち、フリーランスとして仕事を引き続き任せてもらうというケースもあります。
その中で、会社員のケースと比較して、1000万を越えるケースを考察してみたいと思います。実際には日頃から必要な様々な経費がありますが、それらを一旦省いて単純化しています。また、あくまでも一例であり、さまざまな方法が考えられます。
①実演のみ
4000円のチケットが、2500枚売れて、売り上げが1000万です。必要経費として、会場にかかる経費はエリアやジャンルによって本当にまばらですので難しいですが、例えばクラシックで500席のホールを借りるのに6万円、練習と謝礼、広告宣伝などに20万円使ったとすると、(2500+260000÷4000×5)で、およそ2800枚程度を売る必要があるとわかります。
流石に机上の空論で、年間2800人の集客は、1人ではもちろん難しいでしょうから、よりシビアになってきます。(2800人は500席ホールでは賄えませんが一旦無視します)
ですが情報社会からAI時代に突入しようしている今、オンラインで演奏を投稿することで、それ自体に広告が月収益になったり、集客もできたりする可能性もありますね。
②制作(作編曲、作詞)のみ
制作は主に依頼料と、使用料(印税)に分かれるのではないでしょうか。
依頼料は数万〜数百万、使用料は様々な場所での使用と取り決めによって、金額は決まっていきます。
依頼料だけで行こうと思うと、100万単位の依頼を年間10本携わる、ということになりますが、100万単位はテレビドラマなど大きな作品の単位になってきますので、なかなか現実的ではない気がします。よって、制作のみで越えようと思う場合は、必然的にある程度は印税に頼るしかありません。
ネットで調べてみると、エヴァンゲリオンの作品の作詞者及川眠子さんが、四半世紀毎年3000万を稼いだ、などの情報があります。
ヒット作品に携わることができる、あるいは、何かしらで使用されやすい曲を作ることで、1000万円を上回ることはできるようですね。パチンコ、テレビ、CM(サウンドロゴ)、ドラマ、カラオケ、サブスク(SNSでのバズ)などでしょうか。
❶取引先が気に入ってくれて定期的な仕事ができる、あるいは❷ヒット作品(またはそれに準ずる作品)の印税で潤う、のどちらかが、安定する方法となりそうですね。ただし❶に関しては本当の意味での安定とはなかなか言えないかもしれません。
ここまでくると、安定するためには、ヒット作品に携わるということは直向きに狙いつつも、やはりより人に役立つ仕事をしなくてはいけないとなります。
脱線しますが、ある程度なんらかの実績を積んだ後に、大学などで教えるという道(人の役に立つ仕事)にいくというのも、もちろんハードルは高いですが、ライフステージ的には、合理的で一般的なのかもしれません。
③講師のみ
大体1時間あたりのレッスン相場は5000円から2万程度ですね。とんでもなく実績があれば10万などのケースもあるようです。
生徒数を増やす、あるいは1時間あたりの単価を上げる(先生としてのレベルを上げる)のどちらかが必要です。
1時間で5000円の場合、1000万行こうと思うと2000時間の稼働時間が必要になります。月平均170時間程度、1日5-6時間です。
毎日5〜6人(月150-180人)、通年で教えるとこのくらいになるということですね。単価を上げればその分下がり、2万円の場合で1日1〜2時間(月40-50人)です。
個人的には、意外と現実的だなと思いましたが、これもまた理想論ではあります。
④経営のみ
最後に音楽的な組織経営についてです。といっても、音楽的な業務自体ををする場合は、①-③をコミュニティ化する以外はないのではないでしょうか。仲間を見つけて組織化する、ということになります。何かしらのコミュニティで、1万を80人が毎月、あるいは新規に買ってくれたら、それでやく1000万になりますね。
それ以外では、音楽教室や練習スタジオの店舗型経営、アーティストのコンサルタント、メンタルケア、イベント企画マーケティング支援、プロダクションの運営、などがあるでしょうか。
①-④を大雑把にまとめると、実演家はどのようにして集客を行うか、制作者はどのようにしてヒット作品に携わるか、講師はどのようにして単価を上げるか(また集客するか)、経営者はどのようにして組織化するか、がネックになってきそうです。
資本主義的な強さが、安定のためには必要だというジレンマがありますね。
しかしこうして考えてみると、会社員、事業主、それぞれの色々な要素を足し合わせることで、安定した収入を得ることはできそうです。
音楽で年収3000万稼ぐには
音楽家としての生涯、といかなくても半世紀ほどの安定を考えると、まずは会社員的な仕事と、他にも事業主的な仕事を掛け持っていくことが必要になると考えています。または、体力と精神力にものを言わせながら、委託でやれることをとことんやっていくかになります。
実際は、実演と制作、講師など掛け合わせる場合がほとんどだと思いますので、会社員のみ、会社員をしながら副業、複数の委託業務(または事業)をこなす、あるいは起こす、の3−4パターンで、それなりの年収を安定させることはできるかもしれません。
となると、欲を出して、安定して毎年3000万を稼ぐにはどんな方法があるかと気になってきます。(実際かなり難しい)
・年収1000万円のオーケストラ団員バイオリニストが、1時間2万円のレッスンを40時間/月(960万)、年に一回のソロリサイタル売り上げ5000円×500人(250万)、SNSでのTips動画(150万)、バイオリニスト交流会企画(100万)、音楽家のためのリノベーション物件運営(500万)
オーケストラ団員が実際のところどこまでリサイタルなど許されているのか、実情は知りません。可能だとしても、かなりな激務になりそうです。この金額で相場なのかも実際よくわかっていません。
また、このケースに限りませんが、売上を上げるには、かなりな営業力も必要になってきそうです。安定は難しいのは変わりありません。
・年収800万円の私立音楽大学教授が、演奏会を定期的に企画(200万)、劇伴作曲の委託料と印税(500万)、オンラインサロンの運営(300万)、コンクール審査や国内外機関への協力など(500万)、本の出版(200万)、音楽コンサルタント事業の企業(500万)
かなり色々な角度で考えてみましたが、書いて思うのは、時間的に全く現実的ではないということです。オーケストラ団員、私立音楽大学教授、などの部分はほかの項目に置き換えて考えることもできます。あるいは、社員の部分はなしで、それぞれ楽曲の委託と印税、オンラインサロンや物件の運営、本の出版、イベントの企画、オンラインでの動画投稿、などをそれぞれ全力で行うという可能性も理論上はゼロではないでしょう。
金額にもよりますが、最終的には、どこまで"音楽だけで"、稼ぐことにこだわるのか、という問題になってきそうです。