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「奇跡の社会科学」(中野剛志著、PHP新書)E・H・カー①

相変わらず、食欲旺盛なぽんニャンです🐱

さて、今回は国際政治学の創始者、E・H・カーです😃
戦争はなぜ始まるのか?
それではどーじょー😃

2022年2月24日、ロシアはウクライナに侵攻した。

人類の歴史を紐解けば、戦争の歴史と言っても過言ではない。
まさに、田中芳樹氏が銀河英雄伝説でヤン・ウェンリーに語らせているように「人間の歴史ってやつは、開けるページ開けるページこればかり。ドンパチだらけだ」というわけである。

では、戦争とはなぜ起きるのだろうか。それを考えるために、イギリスの外交官・歴史家のE・H・カーが1937年に著した『危機の20年』がヒントを与えてくれる。
20年というのは、第一次世界大戦終結翌年(1919年)から、第二次世界大戦勃発時の20年の「戦間期」のこと。
第一次世界大戦終結後、国際連盟設立などで、平和な国際秩序を作ったが、第二次世界大戦が起きた。それは何故かというのが、『危機の20年』のテーマ。

カーが確立したと言われる国際政治学の背景にある思想には「ユートピアニズム」と「リアリズム」という二つの対立する潮流があり、それらは「リベラリズム」と「リアリズム」と呼ばれて現代に至る。

「ユートピアニズム」
事実よりも、目的あるいは願望が先行する思考様式。
国際政治学では、人間の理性の力を信じる合理主義を基盤とする。
19世紀のヨーロッパでは、合理主義に基づき、自由民主主義が有力な思想となった。

【自由民主主義】
人々は平等に理性を持つ。世論は必ず道徳的な社会を望むので、政治は世論の決定に委ねれば良いという考え。

国際連盟の創始者達は、自由民主主義を信じ、国際的なルールや原則を定めれば、各国は理性に従うために平和的秩序が保たれると考えていた。

19世紀の合理主義は、政治では自由民主主義に。経済では自由放任主義となって現れた。

【自由放任主義】
各人が自己利益を追求して競争すれば、市場原理が働いて、経済厚生は最大化する。自己利益の追求が、社会全体の利益と調和する。だから、自由な経済活動は正当化されるという考え。

ユートピアニズムは、こうした自由民主主義と自由放任主義という理念に基づき、国際政治を変革しようという思想。
しかし、ユートピアニズムは、理想と現実とのギャップにぶつかった。

「リアリズム」
ユートピアニズムに対する反動として生まれる。
最初のリアリストと言われるのは、ニコロ・マキアヴェッリ(マキャベリズムで有名)
彼の理論は以下の三つからなる。
①歴史とは、原因と結果の連鎖であり、その歴史の成り行きは、因果関係を分析することで理解できる。
②理論が現実をつくるのではなく、現実が理論をつくる。
③権力は道徳規範に従うのではなく、権力から道徳規範が生まれてくる。
さらに現代のリアリズムは、理論や道徳規範というのは、時代、環境、状況あるいは利害関係によって形成されたものに過ぎないとなっている。

第一次世界大戦後、各国の力関係や利害対立を無視したユートピアニズムによる国際秩序の構想がうまくいくはずもなく、第二次世界大戦が引き起こされた。
リアリズムは、各国の力関係や利害対立という現実を直視し、ユートピアニズムの偽善を暴露することという点で、非常に強力な思想であり、カーは『危機の20年』によって、リアリズムの理論家の1人に数えられることもある。

しかし、カーはリアリズムの限界も見極めている。
人は、力関係や利害対立だけで行動するわけではないからだ。
結局、政治とは、理想と現実の相互作用の過程だということである。

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