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さよなら絵梨 - 感想

「さよなら絵梨」は「チェンソーマン」や「ルックバック」で有名な藤本タツキ先生の読み切り漫画。

あらすじ

「私が死ぬまでを撮ってほしい。」という病気の母の願いから100時間以上もの母との日常を撮影した主人公(伊藤優太)による映画制作の話。母の映画を完成させた後、自殺しようとした優太は謎の少女絵梨と出会い、今度は絵梨を題材とした映画の共同制作を始める。

感想

ヒューマンドラマが熱々でした。感動的なストーリーを軸としながらも、母の裏の顔や絵梨の正体など、読み手の不意をつく情報が唐突に明かされて、自分の想像を超えてくるストーリー展開がたまらなく面白かったです。

個人的に印象深かったのは、お父さんが優太の映画を見た感想を泣きながら語るシーン。

お父さんっ
優太の映画見てびっくりした
映画の中のお母さんは…! 綺麗な部分だけしか見えなくて…
良いお母さんだった…
思い出す時は綺麗に思い出したかったから
優太は人をどんな風に思い出すか自分で決める力があるんだよ

さよなら絵梨 pp.130 - 131

映像や写真ってたしかに、人のいい部分だけを切り取る力があるなと思いました(もちろん汚い姿も切り取れますが)。我々が現実で写真を撮るのは大抵ポジティブな方向に感情が動いた瞬間。人間には、根本的に過去を美化したい、綺麗なことだけ覚えていたい欲求があるのかなと思いました。
人間はよく記憶を改竄していると聞くけれど、前向きに生きていくためには大事なことだなと思います。

自身のドキュメンタリーのために映像を撮らせるお母さん。優太の映画を通じて、妻の汚い部分を忘れ去ろうとするお父さん。来世の自分のために映画を作らせる絵梨。絵梨の映像に執着して結婚後も編集し続ける優太。登場人物が皆人間臭くて、気持ちが交わりそうで交わらない生々しさが面白い一作でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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