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医療的ケア児(者)のこれからを考えるAdvance Care Planning(ACP)

皆様、こんにちは。
運営の吉田です。

さて、今回は一度は耳にされたことがある方もいるAdvance Care Planning(ACP)という考え方について、皆様と話題を共有していきたいと思います。

私は、人を対象に作業療法士として支援の携わることが多いため、色々な場面を経験します。
その中には、もちろん嬉しことや悲しいことなど様々な出来事があります。

特に、悲しいことに対しては「あの時あぁすればよかった」と振り返ることも少なくありません。

もっと、対象者の方と対話することができたかもしれない、と思うこともあります。

そもそも、当事者の方々も伝えたい想いがあったのかもしれません、
特に、大人と異なり、自分で話すことや表現することが困難な子どもたちの場合は、その想いを支援者に届けることは、どうすればよいのでしょうか。

今回は、当事者にとってと、支援者にとっても、この対話することの大切さについて、ACPをテーマにお話していきたいと思います。

なお、今回のテーマや冒頭の文章から読みたくないと思われた方はここまでで読むのを止めて頂いて構いません。
よろしくお願い致します。



Advance Care Planning(ACP)とは?

ACPとは、主にがんや心疾患など緩和医療・ケアという分野を中心に用いられている治療や療養などの今後について話し合うプロセスのことです。

将来的に医療やケアが必要となる方が望む、医療や支援、生活についてあらかじめ考え、家族や支援者などの関係者と話し合いながら計画を立てるプロセスのことを指します。
これにより、本人や家族が望む医療やケアを受けられるようにし、意思決定をサポートすることができます。


このACPという考え方は、子どもたちの支援においても重要視されています。
先にも述べたように、ACPは、高齢者や終末期の患者に対する医療の考え方として発展してきましたが、子どもに対するACPも重要であるという認識が広がっています。特に、医療的ケア児者のように生命予後が不確実であり、自分で意思決定をすることが難しいこどもたちにとって、ACPは大きな意味を持ちます。


ACPを子どもと家族のために考える意義

医療的ケア児(者)を支援する際、何か生命を脅かす問題が発生してから対応を考えるのではなく、事前に「どのような医療や支援を希望するのか」「どのような生活を送りたいのか」を整理し、当事者と支援者間で確認おくことが重要です。これは、子ども本人だけでなく、家族も含めた意思決定や医療、ケアなどのサポートになると思われます。

たとえば、以下のようなことをACPの中で検討することができます。

  • 子どもがどのような医療を受けたいか、または受けたくないか

  • どのような支援体制が必要か(学校生活・自宅での介護・福祉サービスなど)

  • 緊急時の対応をどうするか

  • 子ども自身が大切にしたいこと、家族としてどのようにサポートしたいか

…など。

こうしたことを、子ども本人の状況を見ながら、家族を中心に医療・福祉・教育などの関係者と連携しながら考えていくことが大切ではないでしょうか。


ACPは「人生のコンパス」—前向きに考えていくもの

「ACP」と聞くと、将来の医療や万が一の事態に備えるための重たい話と捉えられる方も多いかもしれませんが、決してそうではありません。

むしろ、ACPは子どもが自分らしく生きるための「人生のコンパス」のようなものであり、前向きな事柄だと私は思っています。

子どもや家族にとって、どのような医療やケア、支援が望ましいのかを、ポジティブな視点で話し合い、みんなで考えていくことが大切です。
子どもの成長や状況の変化に応じてACPを見直しながら、より良い未来を描いていけるように本人やその家族、支援者で共に考えてみてはいかがでしょうか。

最後に
今回のテーマは、医療的にケア児(者)のACPについて、お話しましたが、決して最後の時に向かって、ということをお伝えしたいのではなく、子どもたちの意思決定をどのように考えていくのか?について考えるきっかけにしていただければとの思いで書かせて頂きました。

医療的ケア児(者)の支援に関わるすべての人が、このACPの考え方に触れ、子どもやその家族が安心して暮らしていける社会を目指していきたいです。


<吉田尚樹>
医療機関に所属する作業療法士
子どもたちのリハビリテーションに従事しています。


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