静かな火事

胃の中の青いガスが粘膜を溶かしている。
スローモーションで怒鳴り散らす。
ニコニコでピキピキ。笑顔なのか殺す顔なのか
自分でも見分けられない。
最初は袖に火の粉が飛んだだけだった。
今では家の中の全てが燃えている。
天井まで背伸びした炎が楽しそうに踊ってる。
ソファが真っ黒い煙を噴き出している。
それ、もっと燃えろ。俺も楽しい。
もう夜なので洗濯物をおろさなきゃ。
慌ててベランダへ出てみたがもう朝だった。
黄色い帽子の小学生が小石を蹴った。
皿を洗おう。
シンクが汚いと同居人がうるさいのだ。
ベランダから飛び降りて玄関の扉を開ける。
オイルでギトギトの床を平泳ぎして電車に乗る。
行き先は知らないがたぶんキッチンだろう。
座って待ってるのも時間の無駄だし、あれ?
誰も座ってない。みんな吊り革で首を吊ってる。
まあいっか。座れるし。



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