【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #1
【あらすじ】
僕(大西達哉)は、都内の芸術系大学を卒業してすぐに一流広告制作会社に入社したグラフィックデザイナーだ。初めは平面専門でクリエイティブをやっていたが、自分の作品が評価され始めると、CM、SNSの動画広告制作、やがてはキャンペーン全般のプランニング、プロデュースと活躍の場を広げていき、多忙を極めた。そして、僕は壊れた。僕は脆かったのだ。心療内科の医者から「適応障害」と診断を受け、僕は仕事を休んだ。そして、心を直すため、車で旅行に出かけた。
【本編】
■
2007年の2月、僕と涼子は、慌てて結婚した。
2月は、彼女の誕生月だからとこじつけて、急遽教会を見つけた。
涼子のお腹の中には、既に息子がいた。
一緒に産科へ行き、定期検診をする時に、エコーを見ながら先生が自分の小指を立てて、「おまたにこんなのがついてるから、男の子かなあ…」と言った。だから、息子だ。間違いない。
涼子は、雑誌社の編集者だった。
僕は広告制作会社のグラフィックデザイナーで、あるタイミングを迎えるまでは全く知りもしない間柄だった。
涼子の担当する雑誌は、日本有数のビジネス誌で、アートにも造詣が深い。
ひょんなきっかけで、僕は彼女と知り合い、僕の作品を見初められて、毎月1ページ、時事ネタを扱ったグラフィックを掲載する事になった。それが涼子とのなれそめだ。