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【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #10 最終章

また三年が過ぎた。僕にユニオンから電話がかかってきた。出ると仕事のオファーだった。
 
来年は、あの震災から五年になる。それを現地で取材して、本にまとめるプロジェクトがあり、進行しているのだが、一人のライターに病気が見つかり、治療に専念しなければならなくなったため、代わりに行けないか?という内容だった。
 
取材期間は、一か月で長期出張になる。
 
僕は悩んだ。いつもなら、そんなに長くは家を空けられないと、即決で断るところだ。
 
しかし…
 
僕は、あの女子中学生の事が心に刺さったままだった。
 
もう一度、彼女に会いたい気持ちが、どこかにあった。
 
その日はよく晴れた秋の日曜日で、昼前に車で家を出て、舜と西武の試合を見に行く事にしていた。
舜はもう9歳で、母親譲りの熱狂的なライオンズファンになっていた。
舜はレプリカユニフォームに着替えて、応援用のフラッグを振っている。
「とうちゃん、出掛けないの?」
「よし、出掛けよう。」
 
運転しながらも、頭の中は、取材の事でいっぱいだった。
あの時、色んな場所で聞いた話が次々とフラッシュバックしてきた。
そして、あの少女の涙…
 
涼子、どうすればいい?
 
「とうちゃん…」
「何だ?どうした?」
「行ってもいいよ…」
「行ってもいいって、どこへ?」
「地震のあったところ。」
 
僕は、リビングで電話を取った。
その時舜は、TVゲームに夢中だと思っていた。だが、舜は聞いていた。
 
「行ってもいいのかい?一か月もだぞ。」
「川越のバアに来てもらったらいいよ。」
「まあなあ…」
 
「とうちゃんなら、大丈夫だよ。」
「えっ⁈」
「きっと、何とかなるって!」
「そうか、何とかなるか!」
 
僕は、新しい相棒が出来た事を知った。
 
 

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