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【連載小説】サキヨミ #17

午後になると、色んなレポートや書類が回ってきた関係で、僕はPCの前から離れられなくなった。返答したり、アドバイスしたり、決済したり、様々だ。早く全部終わらせなければならない。
またも、僕は気忙しくなった。
何故か、一刻も早く社内の用を済ませてしまわないとならないという圧迫感があり、僕はその緊急性を理解しているかの如くに、次々と対応を済ませていった。
 
何の前触れもなく、ドアが開いた。
遼太郎が入ってきた。
遼太郎は、もう28歳で、立派な青年だ。向こうでは、病院勤務の傍らで身体づくりに余念がないらしく、胸板は厚く、腕も足も服を引きちぎりそうな程パンパンだ。
「お父さん、準備はいい?」と、遼太郎が訊いてきた。
この二、三日、何らかの予感がしていた。何だかは分からんのだが、それなりの空気が僕の周りを漂っているのに気づいていた。
「ああ」と答えた。
「じゃあ行ける?」
「ああ、行こう、ボー」と私が言った。
遼太郎は、私の腕を掴み、分厚い強化ガラスの向こうへと二人でダイブした。


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