【連載小説】ただ恋をしただけ ⑪
〇〇〇
「残念‼レグ!18ゲーム、レギュラーでスタートです。でもでもでも、やっと始まりました!」
「そうそう、やっとですね、ナナさん。こっから大連チャンしてマクリましょう!」
「頑張ります!」
「さあ、次です。ここは花が光る筈です。天国に上がってる筈だから」
「そう、絶対に連チャンする筈です」
25ゲーム。レギュラー
「またレグ…」
「まあまあまあ、続く事が大事ですから」
「そうですよね。まだまだです」
続いて
4ゲーム。またもレギュラー
「おかしいなあ…何ででしょう?レギュラーだと、全然出玉が増えないんですけど…」
「逆に良いモードに飛んだんじゃないですか?」
「そうですかねえ…それならいいんだけど、不安です…」
「きっと大丈夫だから、気持ちを強く持って!」
「はい…」
18ゲーム。待望のビッグ!
「やりました!やっとビッグが引けました!」
「やりましたねえ、ナナさん。ここからですよ、連チャン街道は!」
「そうですね、頑張ります!」
次は32ゲームを過ぎても花は光らなかった。
レギュラー、3回。
ビッグ、1回。都合4連チャンで終了。
「ああ、早い~…何で?何で私だけ?他の人はジャンジャン連チャンさせてるのに…」
「まあ、仕方ないじゃないですか。よく頑張りましたよ。そろそろエンディングにしないと…もうすぐ16時ですから」
「飛行機は?」
「それはやっぱ無理みたいです。でも、新幹線はまだいけそうだし、バスは動くみたいです」
「じゃあ、残業でもいいですか?ギリギリまで…そう、18時まで」
「18時?ここは郡山ですから、新幹線で東京に帰って、バスで福岡を目指すと?」
「そう…ペイさんはいいですか?」
「僕は終わったら東京へ帰るだけだからいいですけど…ナナさんが良いのであれば…」
「良いも何も、このままじゃ終われません。これじゃ引き弱のメシウマ動画になっちゃう。」
「こんなスケジュールだし、台風だから仕方ないんじゃないですか?」
「イヤ!だから、お願いですから18時まで延長させて下さい」
「分かりました」
彼女は再度台を探した。
そして、当てて上位のAT(アシストタイム)が取れれば、一撃3,000枚は固い激荒台を取った。
最後の勝負だ!
今のところの彼女の収支は、投資額は9万円だが、出玉が500枚以上あるので、彼女の負けは8万円程度だ。という事は現状のままであれば4,000枚を獲得すれば彼女の勝ちだ。
出玉はこれから新しく打ち始めるので当然減っていくから、1万円以内=500枚以内に当てられれば、出玉が4,500枚もあれば十分にマクれる。
つまり、3,000枚を取ってからまだATを伸ばし、1,500枚を取ればいいという事だ。
ハードルは高いが、これしかマクれる可能性はない。
賭けだ…
〇〇〇
彼女はうまくいかなかった。
持ちコインの500枚は使い切り、再度現金投資が始まった。
総投資額が10万を超えた。
庶民である僕は正直ビビった。でも、彼女の必死な背中を見てると、とてもじゃないがそんな弱気なコメントはできなかった。
打ち出してから600ゲームを超えたことろでやっと当たったが、ATには入れられず単発に終わった。
「ああ…ホント、どうして…?」
「まあ諦めよう…今日は引き弱の日だったんだよ。それにもうそろそろギリの時間だよ」
「でも…このままじゃ、ホントに今回の実戦は何の見せ場のない動画になって…芝エモンさんの代打なのに、誰だ、新倉ナナなんて使ったやつは?とか言われて…そんで、私の出番がどんどんなくなって…」
「で何?パチスロ演者でいられなくなる?」
「そう…」
「そんな事はないんじゃない?」
「でも再生回数が伸びないと、マジでヤバい」
「ああ、それは僕にも責任があるなあ…通常時に面白くできなかったもんなあ。でも、そんなんで辞めなきゃいけないんなら、辞めちゃえば?そんなさあ、生活切り詰めて、ギリギリでパチスロなんて打たなくてもいいんじゃない?」
「それはダメ!絶対にダメ!」
「何で?」
「だって、人生賭けてるんだもん」
「人生?大袈裟な…」
「大袈裟じゃないよ。ホントだもん!」
「分かった。じゃあ、俺も腹括るわ」
「どういう事?」
「このまま、ナナさんは閉店まで打ってもいいよ」
「閉店まで?福岡に行けなくなるじゃない?」
「それは俺が連れて行くから、ウチのロケバスで」
「ええ?ここ、郡山だよ。福岡、遠くない?」
「遠いさあ。でも、一晩中走れば着くんじゃね?」
「まあそうかもしれないけど…じゃあ、大連チャンを取るまでは打つわ。」
「よしそうしよう。そうと決まったら…腹減らね?さっき食い逃した醤油ラーメン食べに行こう。あの店閉店が19時だろう?」
「いいね」
僕らは醤油ラーメンを食べた。
彼女が言う通り、美味いラーメンだった。