【連載小説】サキヨミ #25
慎重に登れば登る程、進みは遅くなった。
今では、予定時間を3分以上もオーバーしている。
キャリーカーのアラート音が響いた。
冷凍保存ケースの温度上昇を示すアラートだ。
僕とボーは、キャリーカーに覆いかぶさって、腕と足を変形した。
伸ばして、キャリーカーを包むようにした。
次に背中のシールドを全体まで広げた。
このシールドは、表面が厚さ5㎝のチタン合金、次の層は厚さ3㎝のFRPと言いう二重構造でできており、これで日光を遮断し、保冷していく事を期待している。
僕らが変形して30秒後にアラート音は消えた。
キャリーカーは前進を再開するが、自重が増えたためにさらに遅くなる。
予定を4分30秒以上もオーバーして、僕らは坂のてっぺんまで辿り着いた。
日光の影響は少なくなったものの、この間も電気の切れた保冷ケース内の温度は上昇を続けており、またアラート音が響いていた。
この暑い中で4分30秒のオーバーは致命的だ。
もう二人は救えないのではないか?
僕もボーも諦めに近い感情を持ち始めていた。
でも、任務は全うしなければならない。
僕らは今度は急な下り坂に挑む事にした。
ボーが先陣を切ろうと、坂を下るタイミングを見ていた時、突風が吹いた。
ボーのキャリーカーは16輪あるタイヤのうち、前の4輪が坂へ出るべく、地面をグリッドしていなかった。
ボーのキャリーカーが飛ばされそうになった。
咄嗟に僕は、アームの伸ばし、ボーの右足を掴んだ。
風が止んだ。
何とか、ボーのキャリーカーは飛ばされずに済んだ。
しかし、ボーの背中の装甲は完全にめくれあがってしまった。
アラートは鳴り続ける。
万事休すだ。
もう打つ手はない…
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