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【連載小説】サキヨミ #20

僕とボーは、翌日からはボットを外に出し、丸二日に渡って入念に訓練をした。お陰で手動の操縦はすっかり体得出来た。訓練はかなりハードだった。僕らの動かすボットは、それぞれ9体ずつスペアがあるのだが、この訓練で既に6体が使い物にならなくなった。僕ら自身は、体力もさることながら、細やかな神経を使う強い精神力を30分以上という長い時間保ち続けない事がキツイ課題だった。
 
私とボーは訓練中、工場から収蔵庫までの道のりを何度も往復した。
収蔵庫の二人の冷凍保存ケースの前までボットを動かし、そこでの作業手順をシミュレーションし、ケースを工場まで運ぶのを繰り返し行ったのだ。
この訓練で、リアル地球の地表面にある様々な過酷な自然現象を実感する事となった。
まず、風だ。地表面は高温状態を保っているため、時折、山肌を突風が吹き下ろしてくる。この風速は、場合によって秒速30mに達する事があり、それをもろに食らうと、我々のボットは吹き飛ばされてしまう。
次に、高温だ。現在収蔵庫のある辺りは乾期で、朝太陽が地表を照らし始めた時点で既に35℃を超えている。そして日中は45℃以上になる。
ボットは基本的に気温50℃までは耐えられる仕様になっているのだが、ここで二つ問題が出てくる。一つ目は、直射日光だ。太陽が真南近くにある時に、直射日光を浴びると瞬間的に50℃以上になる事がある。二つ目は地表面近くの温度だ。ボットは二輪駆動で、保存ケース運搬用のキャリーカーは、キャタピラによる駆動である。この車輪、およびキャタピラの設置する時の地表面の温度も50℃を超える場合があるのだ。
これらの悪条件は、既に分かっていた事らしいのだが、それに対応できるボットは、すぐに開発できる訳ではないようだ。
しかし、我々は実際に一日中ボットを操縦して、その脅威を理解した。
一番大きな脅威は、やはり突風だ。このせいで、僕らは4ユニットを失った。ボット8体と、キャリーカー8台だ。
直射日光の直撃は、30秒を超えると影響が出る事が分かった。そして、その性で2ユニットを失った。地表面の高温では1ユニットが使えなくなった。途中でキャリーカーの駆動システムに不具合が出てしまったのだ。
 
それらの課題解決を現在のリアル地球の気象情報と照らして、具体的にシミュレートすると、二日後の8月4日に作戦開始するという結果が出た。
そこで僕らは最終的に使用するそれぞれのボットのイシキ化を始めた。
その前に、今ボーが動かしている時間速度を定常に戻してもらった。
そうでないと、一日24時間が確保できないからだ。
後二日、間に合うのだろうか?


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