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【連載小説|長編】黒崎透 「真実って…」①


朝飯を食いに遠出してしまった関係で、店に戻るのがとても遅くなってしまった。
私が毎日起きるのが、夜9時で、起きて一回目の食事を食べようと思う時、中々典型的な朝飯を食う事が出来ない。
今日は、どうしてもクロックムッシュを食べたかった。それと半熟の茹で卵を付け合わせて食べるのだ。
それを食べるために、私はわざわざタクシーに乗って、代官山のカフェまで行ってきたのだ。

そして今、新宿に戻って来た。
時刻はもう12時半を回っており、店のドアを開けると、いつものように飲んだくれ達が、カウンターを占めていた。
カウンターの中の英郎君が、わざわざ出てきて、私に近づいてきた。
 
「オフィスに、お客さんが来てますよ」
「ええ、誰?」
「分かんないですけど、「高校の同級生だ」って言ってました」
「高校の?そんな古い友達はもう付き合いないけどなあ…」
「招かれざる客かもしれませんねえ」
「何で、そう思うんだい?」
「いや、とにかく怪しいんっすよ。キャップを目深に被って、伊達メガネかけて、マスクして…顔を見られたくない感じ丸出しで…」
「そうか…まあ、会ってみるよ」
「いいですけど、黒さん、新年早々、厄介事に巻き込まれないで下さいよ。今年は僕、本業でも忙しくなりそうなんだから」
「ああ、君がプロデュースしたバンドの再生回数が伸びてるって話だろう。島野から聞いたよ。まあ頑張ってくれよ。オフィスの客には会ってみて、本当に高校時代の友達なら、昔話でもして、帰ってもらうようにするから、心配しないでくれ」
「分かりました」

そう言って、英郎はカウンターの中に戻った。

私は、事務所のドアを開けた。

確かに依頼人の席に黒いキャップを被った、ラッパーのような若干若めの格好をした男が座っていた。

彼と目が合った。
 
うわ…


「中野か?」
「おう、黒崎、久し振りだな」
「久しぶりって、お前、大丈夫なのか?」
「いや、ちっとも大丈夫じゃねえな。だから、ここへ来たんだ」

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