Fly High!!との歩み方

秩父市でスマブラSPのオフ大会を、一応主催しているグルコースという者です。

スマブラSPというゲームはとっくの昔にアップデートも終わり、変わらないはずの環境をプレイヤーの努力で捻じ曲げ、未だに環境キャラが入れ代わり立ち代わりしているという狂人の集まりとしか思えないような異常な状態が構築されてしまっている。

この文章を書いているときは篝火#12開催の当日であり、数多の狂人たちが所沢のくすのきホールで一堂に会しているところだと推察する。

今回の篝火は募集人数が2000人を超えていると聞いた。篝火という単語はいかにもかっこいい響きと字面で、大会の名前にこれを採用しようとした運営には一生かけても追いつくことのできないセンスの高さを感じてしまう。これだけ人が集まっている理由の何%かはこの名前の覚えやすさとカッコよさも起因しているのではなかろうか。

しかし学が無い私からすると篝火というのが実在する言葉なのか造語なのかすら曖昧なまま大会の歴史だけ12回も重ねられてしまい、毎度毎度外野からヤムチャ視点で見ていると
「篝火」=「スマブラの熱い魂を表す言葉」
的な繋がりが固定されてしまっているので困ったものである。

この現状を打破する方法は篝火という言葉について調べてみること以外にないので、インターネットで調べてみることにした。

篝火というのは、簡単に言えば夜間の照明として使う火の事らしい。スマブラの大会の方の篝火にどんなコンセプトを込めているかまではキーボードを打つ私の指に調べるほど興味が無かったので不明なままだが、この大会を夜間の照明として活用するとしたらちょっと火力が強すぎる。単語の時代背景に合わせるとしたら、少なくとも城3つと山1つくらいを燃料にして全焼させるくらいの火の強さであると思われる。これでは照明本体のビジュが強すぎて照らす先の方に目が行かないという本末転倒も甚だしい事態を招くことは言うまでもない。

「変だって言うけど、それって俺の火力が弱すぎるってことだよな?」と、使い古され過ぎた異世界転生物の主人公みたいなアンバランスさで君臨している篝火という存在のおかげで、本来下火に向かって行くはずのスマブラSPはオンラインもオフラインも割と最大火力を維持したままここまで突き進んできてしまっている。

現在は各地にスマブラSPのオフライン大会が存在し、埼玉県の北の僻地、熊谷市にも存在している。こちらは「暑いぞ熊谷!」等と銘打ち、地理的な条件である暑いことをトレードマークにして外界の「そこそこ暑い土地」に対してアピールしている場所でやっているにも関わらず、大会としての火力は城の中を飛び回っている鳩を焼き鳥にするのが精一杯な程度であり、その名も「Fly High!!」

こちらの大会が名前に込めているコンセプトはいかにもわかりやすい感じになっている。主催が釜塚ABふらいなので、その「ふらい」を「Fly」と表記し、そこに続く言葉としてHighを選んでいるのだからこれはもう上昇志向の塊である。

直訳して見れば高いところに飛んでいくとなるから、鳩を焼き鳥にしている場合ではなく、自分自身が鳩の様に大空へ羽ばたいていかなくてはならない。「!」を贅沢に二つもあしらっているのだからスネークだって負けを認めてすぐさま大佐に連絡をとる事だろう。ちなみにFly High!!にスネーク使いが多いことは全く関係が無いはずだ。

「だんべe」というふざけた名前のオフ大会もこの日ノ本には存在するらしいが、彼は彼で一生懸命考えたのだから許してあげて欲しいものである。「この大会はカッコいい名前だよね」等と迂闊に口にしようものなら「カッコ悪い名前の大会の人に対して配慮が足りないのではないですか!?」とXでお気持ち表明を行ってしまい、特定の層から支持を受け変なバズり方をしてしまう可能性が無いとは言えない。悪魔を生み出すも生み出さないもあなたたち次第なのである。

とはいえFly High!!である。私が創設したスマガヤを半ば強引に押し付け、私になかった上昇志向と機材を上乗せして現在の有様になっている。ちなみに差し引かれているものは無いように見える。フリーザは最終形態に進化することで力と引き換えに身長を失っているが、Fly High!!は第二形態のままパワーだけ増えていった感じがある。

正直なところFly High!!からはできるだけ早期に手を引きたかったのである。私は一刻も早く門外漢になって「俺がスマガヤを作った時はなぁ」なんて管理職おじさんムーブをかましながら孤独になり、ひっそりとスマブラ界隈から消えていくつもりだった。

しかし回を重ねども重ねども、主催のこどもおじさんが私を離してくれる気配が無い。何かと判断を仰いでくるし、電話をすれば「一緒に頑張ろう」と言ってくるしで、困り果ててしまった。今は困り果てていない。

というのも、自分がFly High!!から離れたかった理由に「ライバルが欲しかった」が根本にあったのだろうと気づいたからだ。

当初、私はオフラインの運営活動をしているとき、一人だった。

同級生の友人に運営の手伝いを頼んだことは何度もあるが、スマ勢ではない。企画から指示出しまで一人で行っていた。私が本腰を入れて運営活動を始めた時、つまりは、他のオフ大会と同じ目線で活動をしたいと思ったとき、既に埼玉にオフ大会はほとんどなかった。

新型コロナウイルスの災害を人間が過去の記憶にしようとし始めたちょうどそれくらいの時、埼玉に残っていたオフ大会は「こしスマ」と「えどスマ」だったと思う。えどスマもほどなくして活動限界を迎えたエヴァンゲリオンのごとく消息を絶ち、私が立とうとしていた土俵に残ったのはこしスマだけになった。

どうせ活動するからにはライバルが欲しかった。敵という訳ではないが、同じ土俵で刺激し合う相手が欲しかった。越谷は秩父からあまりにも離れており、埼玉という括りで同じ土俵に上がるには無理があった。オンラインが当たり前になったこの時代に逆行するようにオフラインに戦場を絞った活動をする上で、物理的な距離は相手に対する体感に影響が大きかったのではないか。

無意識下でそうしたことを考えていたのだろう。熊谷でオフ大会を開く目的について「熊谷は人が集まりそうなのにもったいないから」と当時は話していたが、実のところは「自分が欲しいライバルを自分が育てたい」という孫悟空ですらなかなかやろうとしないであろうあまりにも戦闘狂的な発想だったのだろうと今振り返ってみると思う。

そんな自分の気持ちの根底にある思いを自分で整理しないままFly High!!への関りをなんとなく継続していたから、実際の行動と私の気持ちとがどんどんと乖離していった。

私は仲間が欲しかったのではない。ライバルが欲しかった。

でも作ろうと思っていたライバルは、私を仲間だと言ってきた。

これではなんのために会場を探して人を集めて、その後のフォローをしていたのか分からない。

きっとこのような順序だったのだろう。自分勝手も甚だしい考え方だが、私はそんなに性格の良い人間ではないのでしょうがない。

しかも私がFly High!!から身を引こうと思っていることに対して「運営のモチベが下がっているのは分かる」「何のためにこんな大変なことしてるのか分からなくなるよね」等と声をかけてくる。ここまで読んでくれば分かると思うが、私がFly High!!から身を引こうとしていた状況は、運営モチベが下がるどころかむしろ上がっていた故の状況ではないだろうかと思うのである。こっちはこっちで運営してもらって、私は私でこいつらに負けない様に頑張ろうと思っていたのだと思う。あと運営の業務で私がやりたくない事など無い。大変だと思うことはあっても、そこにマイナスの感情が含まれていたことはほとんどないと思います。だから長髪派手シャツおじさんからの言葉は私にイマイチ刺さらなかった。人間としての性質が根本的に異なりすぎているが故に理解し合えない。ミノタウロスの皿に出てくる異文化理解への難しさと同じような構造だったのではないか。

とはいえ、そこの正体が分かってしまえば対処はなんてことない。だって、今の私は別段ライバルを求めていないから。きっと最初に考えていたことに整理をつけないままずっと動いていたからそれが残り香の様に私の中に残留し続け、行動と思考とのギャップを生んでしまっていたのだろう。Fly High!!から無理やりにでも手を引くのか、協力して盛り上げていくのか、どちらが生産的なのかについては言うまでもない。それだったらより生産的な方に舵を切るのが賢明というものだろう。

なんだか今はFly High!!が下火な感じがしていますね。運営の頑張りと参加者数が見合っていないような感じ。これでは鳩どころかマシュマロも焼けるか怪しい…

トゲトゲしなくなったのは、大人になったってことなんですかね。私も。

でも面白い大人になりたいなと思いながらこれからも運営にあれこれ口出ししていこうと思います。

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