フロップ見たいマンのエクスプロイト戦略!(2bet pot編)
ルースコーラーに対するエクスプロイトについて、「bet頻度をあげれば良い!」というのは本当なのだろうか?本記事は、ボード毎のエクスプロイト戦略についてまとめたものである。
中級者〜中上級者向けの内容になっております。
導入
EPからオープンした際、BTNやCOのプレイヤーにルースにcallされることはよくある。一応、GTO戦略においてもIPでのコールドコールは一部推奨されているが、実践ではそれ以上にルースにcallされている。
そこで本記事では、「プリフロップでIPのルースコーラーにコールされた」状況におけるエクスプロイト戦略について考察を進めていく。
本記事の内容
本記事では、次の4つのStepを通じて、IPのルースコーラーに対する正しいエクスプロイト戦略の構築を目的とする。
Step. 1 均衡戦略を知る
Step. 2 エクスプロイト戦略を知る
Step. 3 均衡戦略とエクスプロイト戦略の差異を知る
Step. 4 差異の原因について考察する
Step.1およびStep.2では、各戦略の特徴をまとめる。
Step.3では、各戦略の差異をまとめる。
Step.4では、均衡戦略とエクスプロイト戦略の違いについて深く考察する。
筆者:りおん(https://twitter.com/rion_poker_sss)
(Twitter(X)アカウント)
校閲 : neru_poker (https://x.com/nerupoker43787?s=21&t=DydYzF28fw_7Fu6Pr_Tc1w)
校正 : RIKUGO
(https://x.com/rikugo_chujo?s=21&t=DydYzF28fw_7Fu6Pr_Tc1w)
検証方法
・GTO wizard の solve AI の機能を使用する。wizard AIで使用するbet sizeはDynamicとする。
(※)本記事では簡易的な戦略の検証のため、bet sizeを2つに集約する。厳密な比較検証を行うためには、General Solutionと同じbet size, raise sizeを用意する必要がある。
・本記事で取り扱うシチュエーションは「UTG(OOP) vs BTN(IP)の2bet pot」とする。
・レーキ設定はNL50(5% 4bb cap)とする。
参考にするUTGのopenレンジは、NL50 General GTO である。
BTNのリークに関する設定
NL50 General GTOを元に以下の通りにノードロックをかける。
・主に投機的ハンドと呼ばれるポケットペア、スーテッドコネクタ、ブロードウェイスーテッドのcall頻度を100%とする。
・ほとんど3betされているであろう、TT+のポケットペアのcall頻度は持たないことにする。
上記ルールにより作成した以下のレンジを、本記事内では「ルースレンジ」と呼ぶ。
上記のレンジを用い、
対 均衡レンジ
対 ルースレンジ
の2つの場合のUTGのエクスプロイト戦略を比較・考察する。
※均衡におけるSBの3ベットレンジ、及びBTNの3ベットコールレンジはGTO Wizard上にて無料で確認できるため、各自確認することを推奨する。プリフロップに自信がない方は以下にURLを載せておくのでご参考までに。
①A♠T♥3♦
Step. 1 均衡解を知る
まずはGTO Wizardの示す、均衡解をご覧いただきたい。
この均衡戦略の特徴を下記にまとめる。
・レンジの約半数(52.2%)がcheckする。
・bet 時に使用するsizeは8割が安いサイズ(33%)である。
続いてこの2点に着目して均衡戦略の考察を行う。
①check頻度の高さについて
UTGのハンドのcheck EVとbet EVを比較する。
UTGのレンジにはcheck EVの方が優勢のハンドが多く存在している。
(下記画像参照)
GTO戦略ではcheck EVの方が優勢なハンドは必ずcheckする。しかし、checkしたいハンドだけをcheckすると、相手から攻撃される隙ができてしまう。したがって、checkレンジ保護のためにAKやTTのようなハンドもcheckする必要がある。以上の理由からレンジの約半数がcheckすると推測できる。
②大きなbet sizeが使用されない点について
UTGはレンジEQの優位性を活かして戦いたいが、BTNにもナッツ級のハンドは一定数存在している。そのため、BTNのナッツ級ハンドにペイオフしてしまう際のリスクを最小限にしつつ、同時にBTNのポケットペアをindifferent(call EVが0)にする戦略を構築したい。
UTGとBTNのEQ buketsを参照すると、BTNにはEQ80%以上のハンドが8.4%も存在している。そのため、大きなbet sizeは使用できないのである。
先述のとおり、この戦略はIPのナッツ級ハンドの保有率の影響が大きいため、ナッツ級ハンドがBTNになくなった際は戦略が大きく変わると考えられる。それについては、Step. 4の「レンジ内のナッツ級の割合とベットサイズの関係に関する検証」で考察する。
Step. 2 エクスプロイト戦略を知る
続いて、GTO Wizardの示すエクスプロイト戦略の結果をご覧いただきたい。
・レンジの8割は26% sizeの安いbet、残る2割は67% sizeの大きなbetが使用される。
・check頻度は、0%になった。
①bet頻度の高さ
②レンジEQの高さ
この2点に着目して、エクスプロイト戦略の考察を行う。
①bet頻度の高さ
UTGのレンジが優位であるため、どのハンドを持っていてもbet EVの方が優勢である。そのため、レンジ内でcheckするハンドは存在しない。
②レンジEQの高さ
UTGのレンジがBTNのレンジと比較して圧倒的に優勢である。
これは下記のEQchartからも視覚的に確認できる。
両者のレンジの中身を具体的に考察する。
Tのワンペア以上が、UTGのレンジの大半を占めている。
一方で、BTNのレンジは大半がポケットペア(ワンペア)である。
それゆえ、UTGのTのワンペア以上のハンドが、BTNのレンジに対して高いEQを有することがわかる。
Step. 3 均衡戦略とエクスプロイト戦略の差異を知る
レンジEV、UTGのレンジEVの割合、レンジEQ、Bet頻度の差を下記にまとめた。
Step. 4 差異の原因について考察する
Step. 4では2つの戦略間で差が生まれた原因について考察する。
①bet頻度が大幅に上がった理由
これはレンジの優位性が大きな要因である。
このボードでは、UTGのレンジがBTNのレンジと比較して圧倒的に優勢となった。
BTNの均衡戦略とルースレンジで、Tのワンペア以上の比率を比較する。
均衡戦略では45.4%であり、ルースレンジでは27%である。
この比較からUTGが圧倒的優勢になったとわかるだろう。
UTGはこのレンジの優位性を活かし、広く安いベットを使用する。これによりBTNのポケットペアをindifferentにする戦略が可能である。
②大きなベットサイズが使用されるようになった理由
均衡戦略とルースレンジでのナッツ級ハンドの割合を比較する。
均衡戦略では8.4%に対して、ルースレンジでは4.2%と半減している。
このことから、
・UTGのトップペアの価値の上昇
・BTNのナッツ級ハンドにペイオフするリスクの減少
といった2点の変化が生まれる。
これにより、UTGは大きなベットサイズを使用できるようになる。
③レンジ内のナッツ級の割合とベットサイズの関係に関する検証
ベットサイズは相手のナッツ級ハンドの割合に依存するのか検証する。
検証のため、BTNの均衡戦略のレンジから2p+のハンドをすべて消去した。
このときのUTGの戦略を以下に示す。
BTNのレンジからナッツ級のハンドが消失したことによって、UTG側は250%のOver betを頻繁に用いるようになり、IPのキャップされたレンジをいじめている。
この検証から、均衡戦略においてUTG側が大きなサイズを用いない理由に、「BTN側のナッツ級ハンドの存在」が絡んでいるとわかる。
まとめ
均衡戦略においては、BTNにも比較的強いEQを持ったハンドが多く存在していたため安直にベットできない。しかし、ルースコーラーに対しては、広く安いbetをすることが最適である。
②K♠9♥8♥
Step. 1 均衡解を知る
まずはGTO Wizardの示す、均衡解での結果をご覧いただきたい。
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