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亜型AKQゲームとBB 3bet pot

本記事の内容

本記事では、ベースゲームとして4種類の亜型AKQゲームを導入する。
そこから得られるヒューリスティックをまとめ、得られたヒューリスティックを実践のスポット(BB 3bet pot, Flop CB)に適用する。

このような流れでゲームの大局的な性質を理解することで、特定のボード群においてハンドの割り振りを安定して行えるようになる。


ベースゲーム①

▶ゲーム設定

  • フロップ・ターン・リバーのマルチストリートのポラーゲームを考える

  • OOPはナッツ級ハンド、ドローハンド、完全なトラッシュの3種類を均等に与えられる

  • IPはキャッチャーを持つ

  • OOPのドローは一部のターン・リバーカードでナッツ級へと昇華する

ソルバーでトイゲームを解いてみよう!

▶ソルバーの設定

▷レンジ設定

◎OOP

OOPのレンジは

  • ナッツ級(KK、QQ)

  • ナッツドロー(A7o、A6o)

  • トラッシュ(87o、76o)

を全て均等に6コンボずつ持っている。

ナッツ級、ドロー、トラッシュの比率は「1:1:1」となっている。

ナッツドローは、完成させたときに全てのキャッチャー群を捲る性質を持っている。

OOPのレンジ

◎IP

IPのレンジは全てマージナルなキャッチャーである。

IPのレンジ

▷その他の設定

  • フロップ時点でのSPRは3.5に設定した

  • ベットサイズはフロップ・ターン・リバー共に、50%のワンサイズとした
    ※ポラーゲームであるためジオメトリックサイズの一つしか用意していない(EQの変動があるゲームであるので、ジオメトリックサイズ以外のベットサイズがOOPのEVを最大化させる可能性はある)

  • フロップは2のトリップスボード、ターンは3、リバーは4に設定する

ボード

▶戦略の概観

◎フロップ

  • ナッツ級ハンドの多くがバリューベットを行う

  • ブラフハンドの比率は、ドロー:トラッシュ ≃ 1:1 となっている

OOPのベット戦略(フロップ)
EQグラフとマンハッタングラフ(フロップ)

◎ターン

  • ナッツ級ハンドの多くがバリューベットを行う

  • ブラフハンドについては、トラッシュハンドが優先的に用いられている

  • フロップと比較して、ターンのほうがブラフレンジ内のトラッシュの割合が増加した

OOPのベット戦略(ターン)
EQグラフとマンハッタングラフ(ターン)

◎リバー

  • ナッツ級ハンドの全てがバリューベットを行う

  • 全てのブラフハンドが無差別にブラフする

OOPのベット戦略(リバー)
EQグラフとマンハッタングラフ(リバー)

▶考察事項

▷ターンではトラッシュハンドが優先的にブラフに用いられる

多くの場合において、まくり目のあるドローハンドを優先的に用いたほうが、レンジ内のナッツ級のEVを上昇させることができる。

これは、にせGOさんのノートからも明らかである。興味がある方は読むと良いだろう。

しかし今回の例では、ターンにおいて、トラッシュハンドが優先的にブラフハンドに用いられている。これはなぜだろうか?

答えを見る前に少し考えてみてほしい…

考える人
砂時計

▷トラッシュを優先的に用いる理由

この理由はリバーの集合分析を見るとわかる。

リバーの集合分析(IP)

リバーカードがAまたは2のとき、OOPは全頻度でALL INしている。

リバーの集合分析(OOP)

そしてIPはALL INに対して、リバーカードがAの場合においても、コールとフォールドのインディファレントとなっている。

つまり、ターンを終えた時点でOOPのレンジは、Aが落ちても全レンジでALL INすればIPをインディファレントにできるよう構成されている
言い換えれば、ターンのベットレンジは、リバーカードがAのときにレンジ全体でALL INすることでIPのキャッチャーが無差別になるようなブラフバリュー比で構築されているということである。

もし、ターンのブラフベットにドローハンドを優先して使用してしまうと、リバーでAが落ちた際、レンジがバリューに大きく偏りIPをインディファレントに追い込むことができなくなってしまう。
それではEVの最大化が実現できない。

したがって、ターンでトラッシュが優先的に用いられる理由を言語化するなれば、「あらゆるリバーカードの場合においても、ナッツ級ハンドのEVの最大化を見越しているため」である。

ベースゲーム① まとめ

  • マルチストリートのAKQゲームにおいて、単一のドローハンドをポラー側に持たせた場合の最適戦略について分析した

  • 特定のリバーカードでブラフハンドが不十分にならないような戦略を組むことで、ナッツ級ハンドのEVを最大化している


ベースゲーム②

ベースゲーム①では、ドローをブラフハンドとして用いることでナッツ級のEVが最大化できるにも関わらず、ブラフハンドに多様性がないことを理由に、ドローを持たないトラッシュハンドが優先的にブラフに使用されていた。

この考察が正しければ、OOPのドローハンドが多様性を持った場合、ドローハンドが優先的にブラフに使用され、トラッシュハンドはギブアップするという綺麗な構図になるはずである。

この仮説を検証するために、以降はブラフハンドに多様性を持たせたゲームを考える。

▶ゲーム設定

  • フロップ・ターン・リバーのマルチストリートのポラーゲームを考える

  • OOPはナッツ級ハンド、ドローハンド、完全なトラッシュの3種類を均等に与えられる

  • IPはキャッチャーを持つ

  • OOPのドローは一部のターン・リバーカードでナッツ級へと昇華する

  • ドローハンドは多様性を持つ

ソルバーでトイゲームを解いてみよう!

▶ソルバーの設定

▷レンジ設定

◎OOP

OOPのレンジは

  • ナッツ級(AA、KK、QQ)

  • ナッツドロー(A7o、A6o、K7o、K6o、Q7o、Q6o)

  • トラッシュ(87o、86o、76o)

ナッツ級、ドロー、トラッシュの比率は ベースゲーム①と同様「1:1:1」とする。

ナッツドローは、完成させたときに全てのキャッチャー群を捲る点においては同様である。

OOPのレンジ

◎IP

IPのレンジはベースゲーム①と同様、全てマージナルなキャッチャーである。

IPのレンジ

▷その他の設定

  • 全てベースゲーム①と同様

▶戦略の概観

◎フロップ

バリューハンドのほとんどがベットを行う
・ブラフハンドにはドローが優先的に用いられる

OOPのCB戦略(フロップ)
EQグラフとマンハッタングラフ(フロップ)

◎ターン

・バリューハンドの多くがベットを行う
・ブラフハンドにはドローハンドのみが用いられる

OOPのCB戦略(ターン)
EQグラフとマンハッタングラフ(ターン)

◎リバー

  • バリューハンドは全てALL INする

  • ブラフハンドは無差別にブラフする

OOPのCB戦略(リバー)
EQグラフとマンハッタングラフ(リバー)

▶考察事項

  • ドローハンドに多様性を持たせることで、フロップターン共に、ドローハンドが優先的にブラフに用いられるようになった

  • フロップにおいては、レンジ内のブラフハンドが不足するためドローハンド以外のハンドも一部ブラフに割り当てられる

ベースゲーム② まとめ

  • ドローハンドに多様性を持たせることによって、最適戦略で使用されるブラフハンドがどのように変化するかについて検証した

  • ブラフハンドの多様化によって、ターンにおいてトラッシュハンドをブラフする必要がなくなった


ベースゲーム③

ベースゲーム②ではブラフハンドに多様性を持たせた場合において、ドローが優先的に用いられることが分かった。
しかし、ベースゲームのフロップ段階ではブラフが不足することが原因でトラッシュハンドをブラフに回す必要があった

ベースゲーム③では、レンジ内のブラフハンドの比率を増加させた際に、フロップでトラッシュハンドがブラフとして使用されるか否かについて検証する。

▶ゲーム設定

  • フロップ・ターン・リバーのマルチストリートのポラーゲームを考える

  • OOPはナッツ級ハンド、ドローハンド、完全なトラッシュの3種類を与えられる

  • IPはキャッチャーを持つ

  • OOPのドローは一部のターン・リバーカードでナッツ級へと昇華する

  • ベースゲーム②と比較してブラフハンドの比率を上げる

ソルバーでトイゲームを解いてみよう!

▶ソルバーの設定

▷レンジ設定

◎OOP

OOPのレンジは

  • ナッツ級(KK、QQ)

  • ナッツドロー(A7o、A6o、K7o、K6o、Q7o、Q6o)

  • トラッシュ(87o、86o、76o)

を持っている。

ナッツ級、ドロー、トラッシュの比率は 「1:1.5:1.5」とする。
(ベースゲーム①②では「1:1:1」

ナッツドローは、完成させたときに全てのキャッチャー群を捲る性質を持っている。

ベースゲーム③ OOPレンジ

◎IP

IPのレンジは全てマージナルなキャッチャーである。

ベースゲーム③ IPレンジ

▷その他の設定

  • ベースゲーム①②と同様

▶戦略の概観

◎フロップ

  • ナッツ級ハンドのほとんどはベット

  • ブラフハンドにはドローハンドのみが用いられる

OOP ベット戦略 (フロップ)
EQグラフとマンハッタングラフ(フロップ)

◎ターン

  • バリューハンド、ブラフハンド共に無差別にベットする

OOP CB戦略(ターン)
EQグラフとマンハッタングラフ(ターン)

◎リバー

  • バリューハンドは全てALL IN

  • ブラフハンドは無差別に選ばれている

OOP CB戦略(リバー)
EQグラフとマンハッタングラフ(リバー)

ベースゲーム③ まとめ

  • ブラフハンドが豊富な場合、まくり目のないトラッシュハンドは諦める

  • 多様なドローハンドはどれも同等程度の頻度でブラフに使用する


ベースゲーム④

ベースゲーム③では、十分量の多様なブラフハンドがある場合の戦略について考察した。
ベースゲーム④では、より実践的なケースに近づくように、異なるアウツ枚数のドローハンドがある場合に、どのようなベット戦略が使用されるようになるのかについて確認する。

▶ゲーム設定

  • フロップ・ターン・リバーのマルチストリートのポラーゲームを考える

  • OOPはナッツ級ハンド、ドローハンド(2種)、完全なトラッシュの3種類を与えられる

  • IPはキャッチャーを持つ

  • OOPのドローは一部のターン・リバーカードでナッツ級へと昇華する

  • ベースゲーム②と比較してブラフハンドの比率を上げる

ソルバーでトイゲームを解いてみよう!

▶ソルバーの設定

▷レンジ設定

◎OOP

OOPのレンジは

  • ナッツ級(KK、QQ)

  • アウツ 6 枚のドロー(AKo、AQo、KQo)

  • アウツ 3 枚のドロー(A7o、A6o、K7o、K6o、Q7o、Q6o)

  • トラッシュ(87o、86o、76o)

を持っている。

ナッツ級、ドロー、トラッシュの比率は 「1:1.5:1.5」とする。
(ベースゲーム①②では「1:1:1」

ナッツドローは、完成させたときに全てのキャッチャー群を捲る性質を持っている。

ベースゲーム④ OOPレンジ

◎IP

IPのレンジは全てマージナルなキャッチャーである。

ベースゲーム④ IPレンジ

▷その他の設定

  • ベースゲーム①②③と同様

▶戦略の概観

◎フロップ

  • ナッツ級ハンドの多くはベット

  • ブラフハンドの優先度は「アウツ6枚>アウツ3枚>アウツ0枚」

OOP ベット戦略 (フロップ)
EQグラフとマンハッタングラフ (フロップ)

◎ターン

  • バリューハンドのほとんどがベットする

  • ブラフハンドの優先度は「アウツ6枚>アウツ0枚>アウツ3枚」

OOP ベット戦略 (ターン)
EQグラフとマンハッタングラフ (ターン)

◎リバー

  • バリューハンドは全てALL IN

  • ブラフハンドは無差別に選ばれている

OOP ベット戦略 (リバー)
EQグラフとマンハッタングラフ (ターン)

ベースゲーム③ まとめ

  • ブラフハンドが豊富な場合、まくり目のないトラッシュハンドは諦める

  • 多様なドローハンドはどれも同等程度の頻度でブラフに使用する

ヒューリスティック まとめ

①ブラフにはドローハンドを優先して使用する

ドローハンドに多様性を持たせることがEVを最大化する上で重要である

③ドローハンドのアウツの数に差がある場合、アウツの多いドローハンドを優先的に使用する

BB 3bet potへの適用

ここからは、トイゲームで得られたヒューリスティックが実践上の戦略でも有効か確認する。

着目するスポット

BTN vs BB 3bet pot
◎Flop T♠5♥2♦(26.5bb)
BB ?????

BBから 3 bet して、フロップでTハイのドライボードが落ちた。
このスポットの BB の戦略について、詳しく分析する。

▶戦略の概観

戦略の全体から読み取れる内容を以下にまとめる。

  • BBは一方的なオーバーペアを活かして、ポラーなベットレンジを構築し、IPのキャッチャー群を苛める

  • 多様なランクのハンドがブラフに割り振られている

OOPのCB戦略
マンハッタングラフ(フロップ)
ハンドランクごとのベット戦略

▷ブラフハンドの割り振り

戦略全体を確認することで、多様なランクのハンドがブラフレンジとして使用されていることが確認できた。
では、各ランクのハンドのうち、どのようなハンド群をベットして、どのようなハンド群をチェックするのだろうか?

ここからは、ブラフハンドの内訳に着目して戦略を観察しよう!

◎A high

これは、OOPのレンジのうちA highのみを抽出した場合のマンハッタングラフである。
この図から、OOPはA highのうちEQの高いハンドを優先的にブラフとして使用していることがわかる。

A highのベット戦略

同様に K high, Q high 以下についても見ていこう。

◎K high

K high も同様に EQ の高い順にブラフハンドとして割り振っていることがわかる。

K highのベット戦略

◎Q high以下

Q high 以下も同様にEQの高い順にブラフハンドとして割り振っていることがわかる。

Q high 以下のベット戦略

BB 3bet potへの適用 まとめ

  • 各ランクのハンドが全て満遍なくブラフに使用される(トイゲーム③)

  • 各ハンドランクからアウツの多いブラフハンドを優先的にブラフに割り振る(トイゲーム④)

本記事の適用範囲

本記事の内容が適用できるボードをまとめておく。
基本的には、ポラーゲームになるようなフロップである。

ペアボード・トリップスボードに関しては多少割り振りが異なっているため除外している。

vs UTG

モノトーン、ペアボード、トリップスボードを除く

  • QJT high、QT9 highを除くQ high ボード

  • J high ~ 6 high ボード

vs HJ

モノトーン、ペアボード、トリップスボードを除く

  • QJ-ミドル high、QT9 highを除くQ high ボード

  • J high ~ 6 high ボード

vs CO

モノトーン、ペアボード、トリップスボードを除く

  • K8 high 以下のK high レインボーボード

  • QT7 high 以下の Q high ボード

  • JT7 high 以下のJT highボード、J96 high 以下の J high ボード

  • Connected ボードを除く T high ~ 7 high ボード

vs BTN

モノトーン、ペアボード、トリップスボードを除く

  • K8 high 以下のK high レインボーボード

  • Q96 high 以下の Q high ボード

  • J96 high 以下の J high ボード

  • Connected ボードを除く T high ~ 8 high ボード

終わりに

最後までお読みくださりありがとうございました。

本記事の内容はいかがだったでしょうか?
今回はトイゲームから得られたヒューリスティックを、実践的なスポットへ落とし込むような形で均衡戦略をまとめてみました。

基礎的なゲームからヒューリスティックを抽出することで、より多くのスポットへ適用できる形で知識をインプットできると考えています。

今回の記事は、有識者含め多くの中上級者の方に読んでいただきたいと思ったため、全編無料での公開としています。
本記事の内容が役に立ったという方は少しでもいいのでお布施などしていただけると励みになります。

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