「てならいのうた」19日目

「撃ちてし止まん」

手も足も出ないので
普通なら諦めるところだ
諦めが悪いのは
山間の集落の出だからだ

小猿みたいにキャッキャ
日がな一日遊ぶ毎日
春夏秋冬を一つ超えるたびに
少しずつ街場に引き寄せられた
歩きの通学路から
自転車通学
時々バスに乗り
最後は鉄道に乗って
都市へと運ばれた

つまりぼうっとしてたら
そんな目に遭った
ぼうっとしてたら都市へと運ばれた
いつの間にか
そんな移動の道ができていて
考える暇なく
行けよ来いよのかけ声に
雑踏へと運ばれて行った

ぼくから言わせれば
それはぼくの意志じゃない
留まることも去ることも
まったくぼくの意志じゃない
もともと意志も選択も
ぼくは持っていなかった

なのでぼくの責任は半分だ
後の半分は
ぼくを運んだ外界にある
なのでぼくは諦めが悪い
手も足も出なくなった
責任の半分はぼくにあり
半分の力で自分を打ち据える
残りの半分で
外界めがけて拳を振り上げる
どちらかが息絶えるまでは
「撃ちてし止まん」

田舎者のやることは
論理や科学で割り切れない
時折は予測もつかず
自然気象みたいに荒れ狂う
面白くないよと
何が何でも「撃ちてし止まん」
連呼し続けてきてここまで来た
声もかすれ
目も耳も加齢に衰えたが
「撃ちてし止まん」
時間は残り少ない
いつまでも
ぼうっとしてばかりいられない
ぼくを連れ去った連鎖よ
心しておれ

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