「てならいのうた」20日目
「無明の底で」
きみは生涯を
どんなふうに過ごしてきたのかと
雀さんや猫さんに問えば
雀さんはチュンチュン
猫さんはニャーで
嘘はつかない
人間だって本当は答えようがないのに
学問や研究に身を捧げたとか
ほとんどはテレビを見て過ごしたとか
一つことを取り上げて
そんな自分だと嘘をつく
つこうとしての嘘ではないが
単純化して話すのが相場だ
実態は一言では尽くせない
ことばは実態ではない
それをことばにしようとするから
ことばはいつも嘘になる
現実実存の世界では嘘だが
観念の世界では
真はことばに託されている
そこで往ったり来たりして
人は無明の中に底深く墜ちて行き
次第に声を失っていく
言っても言わなくても
聞いても聞かなくても
どっちでもいいやってなって行く
死に行く時に
持って行けるわけでもないし